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滋賀大学経済学部同窓会で講演しました

 昨日、名古屋で講演をしました。滋賀大学経済学部同窓会(名前を「陵水会」といいます)の名古屋支部が年に一度開催する総会のゲストとしてお招きいただいたのです。

 もともと、高校3年生のとき同じクラスだったWくんから頼まれ引き受けたのですが、「同窓」という言葉の持つ意味を、改めて考えさせられました。

 感動的だったのは、参加者全員で校歌を斉唱する場面。滋賀大学経済学部は戦前の彦根高商が前身なのですが、高商時代の卒業生まで含め、百数十名が一瞬にして「学生」に戻ってしまうのですから、不思議といえば不思議です。と同時に、この学校の強烈なアイデンティティーの強さを感じました。それくらい、声に力がこもっていたのです。それらの学校とはまったく関係のない私ですら、目頭が熱くなってしまったほどです。

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 いま思うと、『不思議の国の信州人』(KKベストセラーズ刊)という本を書くきっかけになったのも、こうした大合唱でした。長野県出身者は、集まるとかならず全員で「県歌」を歌うという話を聞き、「それはおかしい、おもしろい」と思いました。当の長野県人にたずねると、「なんで? 県歌を歌うなんて、当たり前のことじゃないの」と不思議そうな顔で問い返してきます。

 「いやー。いまどき、校歌だってまともに歌わないのに、県歌ですよ。だいたい、県歌なんてシロモノがあること自体、レア過ぎでしょう」といっても、納得した様子がありません。そこで、信州には他の県にない、おかしなこと、不思議なことがほかにもまだいっぱいあるのではないかということで、取材を始めると、あるわ、あるわ。ということで、それを材料にして、本を書き上げた次第です。もう10年以上前の話です。

 大きな声で歌を歌うだけで、人間そのものが変わる──。この原理は古今東西変わらないようです。先月観たアメリカ映画の中でも、プリンストン大学の同窓生が校歌だか寮歌だかを大合唱するシーンがあったのですが、そこでも、ふだんはきちんとしたビジネスマンや公務員、学者が、酒の勢いもあるにせよ、まるで別人のような顔を見せながら、大声を出していました。

 そういえば、4月末に名古屋であった「ラグビー部創部60周年を祝う会」に集まった面々も、年齢・立場に関係なく、校歌を歌っていたっけ。その輪の中にいる自分は、もちろん高校生でした。

ご飯は半分にして肉でやせる 肉食健康ダイエット

著者:荒木 裕(崇高クリニック院長)
価格:1365円
[草思社・2009/07]

肥満・糖尿病専門医である荒木先生の待望の新刊。従来のカロリーダイエットではリバウンドするだけ。ご飯やパンなどの炭水化物は×。肉・魚のたんぱく質をお腹いっぱい食べ、痩せて、健康になれる超シンプルなダイエット方を紹介。「肉食健康ダイエット」こそがメタボ撃退の近道。

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「鉄子さん」に「歴女」……。でも、「地理」だけは永遠に男のもの!?

 最近、「鉄子さん」とか「歴女」といった言葉をよく見聞きします。従来は男性しか興味・関心を示さなかった鉄道や歴史といった分野に、女性がどんどん入り込んできているようなのです。

 私自身も、鉄道や歴史にはそこそこの関心はあります。しかし、「地理」ほどではありません。そして、気がついたのですが、この「地理」の世界にだけはいまのところ女性の浸食は見られないように感じます。

 女性というのは概して旅行が好きです。私は男性ですが、旅行は3度のメシと同じくらい好きです。テレビで少しでも興味を惹かれる映像を目にすると、すぐ、どこの話なのかということが気になり、わかると、すぐにメモします。いずれそのうち、自分の目で見てみたいと思うからです。手近に置いてある地図をめくり、その場所も確認しておきます。

 小説を読んでも同じことをします。とくに、海外の翻訳ミステリーなどを読むと、もう大変です。読むときは付箋がマストアイテムですし、メモ帳やボールペンも欠かせません。許されるのなら、分厚い地図帳も用意しておきます。

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 どんな作品もそうなのですが、かならずどこかの都市やリゾート地が舞台に設定されています。だれも知らないような小さな村や町で物語が終わっているときもあれば、複数の都市、いくつかの国々にわたっている場合もあります。

 すでによく知っている都市や国でも、作品によって、登場してくる場所は異なります。レストラン、バー、ホテル、商店、警察署、道路、細い路地、公園、川、橋、湖沼、港、空港、スタジアム、倉庫街、高層ビル、浄水場、森林、……。それをいちいち確かめながら読んでいくのです。

 小説ですから、何が出てくるかわかりません。でも、海外の小説の多くは、現実の場所を舞台に設定しています。そこに出てくる店なら店、道路の名前なら道路の名前など、すべてメモっていきます。これがまた楽しくてしかたありません。

 ロンドンにサビルロー(Savile Row)というところがあります。スーツやジャケット、ワイシャツなど紳士服関係の店が軒を連ねている、ごく狭いエリアです。明治の初め、日本人が初めてスーツを目にしたとき、そういう服をお国ではなんと呼ぶのかとたずねた日本人がいたのでしょう。質問を受けたイギリス人が、「このスーツはサビルローの店であつらえたんだ」という話をしたのではないでしょうか。

 それを耳にした日本人が、スーツのことを英語では「サビルロー」というのだと早とちりしたにちがいありません。たしかに、ネイティブの人が「サビルロー」と発音するのを聞けば「セビロー」と聞こえるでしょう。以来、日本語では「背広」という言葉がスーツの名称として定着します。

 そのサビルローの一角に「ターンブル&アッサー」という老舗のワイシャツ専門店があります。ワイシャツでは世界的に有名なブランドらしいのですが、そんなことは知る由もありません。私がこの店の存在を知ったのは、1冊のミステリー小説にそこが登場していたからです。

 もう20年ほど前になりますか、初めてロンドンに行ったとき、さっそく、サビルローに行ってみました。すると、本当に「ターンブル&アッサー」という店があったのです。このときの感動といったら……。店の前に立った私は思わず店の中に入り、ワイシャツを1枚買ってしまったくらいです(もちろん、オーダーではなくレディーメイド)。

 店の人にも、なぜこの店に来たのかを、拙い英語で話しました。それを聞いて、その店員が拍手喝采してくれたのはいうまでもないでしょう(といって、特別のサービスがあったわけではありませんが)。

 こんな発見が、世界中どこに行っても味わえるのは地理好きの特権ではないかと思います。そのこと自体、経済的な価値はまったくありません。ミステリー小説に登場してくる場所がすべて、観光ガイドに出てくるところばかりではないのですから。むしろ、自力で探し当てることに楽しみと喜びがあるのです。

 女性の場合、旅行というと、買い物が楽しみなようです。それと、おいしいものを食べることでしょう。もちろん、それが嫌いなわけではありません。でも、それにこうした発見がプラスされることで喜んだりするのは、男性だけではないかと、ひそかに思っています。

 そんなことを思っている私なのですが、今日から、「鉄男」くんならぬ「地理男(ちりお)くん」を名乗ることにしよう。「地理」など、役に立つかどうかということからすれば、それこそ「塵(ちり)」ほどの価値もないでしょうが、少なくとも好奇心を満足させてくれる材料には事欠きません。

40年以上(!)ぶりの山登りに感動

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 一昨日は、「街魅シュラン」の取材で小田原市に行きました。久しぶりに乗った小田急ロマンスカーは、箱根方面に行くグループでけっこう込み合っていました。近ごろどこの観光地に行っても感じることですが、リタイアした団塊カップル、それと熟年世代の女性グループばかりが目立ちます。皆、元気いっぱいです。

 お昼前に小田原駅に到着。ホームの上は総ガラス張りで、規模は及びませんが、ヨーロッパのターミナル駅を彷彿させます。日本とヨーロッパの鉄道、とくにターミナル駅の設計はヨーロッパのほうが断然優れているように思っているのですが、それに負けるとも劣りません。JRの小田原駅と一体ですから、コンコースも広くて明るく、着いただけで、日常から解放された気分を味わえます。
 小田原はもともと城下町。それもハンパな規模ではありません。一時期は関八州全域を治めていた北条氏の本拠地ですから、それも当然でしょう。その小田原城を1年がかりで、さまざまな策略を用いながら落としたのですから、やはり豊臣秀吉の強さはたいしたものです。
 お堀はきれいに整備され、満々と水をたたえています。復興してまだ間もない銅門(あかがねもん)をくぐると、天守閣はもう目の前。その登り口の前にある公園には、なんと象がいました。名前はウメ子といい、推定年齢はなんと62歳。国内では東京武蔵野市の井の頭自然文化園にいる象(こちらは「はな子」)と並んで、最高齢だそうです。象というのはなんとも罪のない顔をしているというか、可愛いこと、この上ありません。思わず、写真など、撮ってしまいました。

 翌日は、高校時代の仲間4人と箱根の山登りに挑戦しました。めざすは標高1213メートルの金時山。およそ2時間かけて登ったのですが、山頂に立つとなんともいえない爽快感を味わえます(天気さえよければ、富士山が、ホント目の前に見えるとか)。山登りなど、高校2年のとき会津の磐梯山以来。そのとき一緒だった仲間も1人いましたが、登りっぷりは当時と雲泥の差でした。

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 とはいえ、こういう自然満喫のレクリエーションもたまにはいいものです。あろうことか、「秋の紅葉の季節にまた来たいね」などという話までまとまってしまったほどですから、それぞれ心地よさを感じたにちがいありません。その夜は温泉につかり、ワインをしこたま飲み、おいしい食事を楽しみました。
 取材は取材で楽しいのですが、こうした、プライベートなイベントと合体させるのもテだなぁなどとひとり合点した次第。でも、明日、明後日あたり、足腰の筋肉に痛みを感じるのでしょうね。

悲しい悲しい所沢……悪いのは西武鉄道か?

 朝日新聞「街魅シュラン」の取材で、所沢市に行ってきました。西武ライオンズ球場がこの地につくられて以来、何かと注目を集めているから、存在感はたしかにあります。
 

しかし、実際に足を運んでみるとガックリ度が大きく、驚いてしまいました。最大の理由は、所沢駅前の商店街の個性のなさにあります。商店街の名前は「プロペ通り」といいます。プロペというのは、プロペラに由来しており、所沢が日本で初めて飛行機が飛んだことにちなんだものだそうです。

 プロペ通りの左右にはびっしり店が並んでいますが、その9割以上が、全国チェーンの店。入口にあるマクドナルドから始まり、カラオケ、居酒屋、焼肉、ファストフード、レストラン、靴、コンタクトレンズ、コンビニなど、ほとんど知らない店は一つもないといった感じです。逆に、所沢の地元の店はほとんど皆無で、わずかにお茶屋さんと和菓子屋さんが一つずつある程度。

 だれがどのようにこの商店街をつくったのかわかりませんが、昔からあったとしたら、こうした店の並び方はしていなかったでしょう。駅の真ん前に立つのは西武デパートですが、西武線なのですからそれはいたしかたありません。でも、商店街にはもっと所沢らしさがほしいなと思いました。

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 近ごろは、全国どこの駅前に降り立っても感じることですが、ホント似通っているのには驚いてしまいます。文字を見なければ、そこがどこの駅前なのか、判断できないのではないかという気さえします。

 地場の小さなお店がこうまでみごとに姿を消してしまうと、街の個性が感じられません。こういう「一律化」の街づくりの根本にあるのは、地元に人たちの気質や意識、あるいはその地の風土をきちんと考えていないということです。とりあえず、姿かたちがそこそこならそれでOKという、安直な姿勢が目に浮かんできます。

 これなら、同じ商業ベースにもとづいていても、東急線の沿線のほうがまだましかもしれません。

広島に足りないのはサービス精神?

 昨日、イチロー選手が3068安打という、日本人として最高記録タイを達成しました。そして、今日はそれをあっさり更新、これからは記録を伸ばすだけです。日米通算がウンヌンという論議はこの際脇に置いて、まずは「おめでとう!」です。

 しかし、それより私が感心したのは、タイ記録を達成したそのとき、シアトル・マリナーズのホームスタジアムがおこなった、粋な演出です。それまでの記録保持者・張本勲氏を称える映像とアナウンスを流したというのです。もちろん、張本氏が球場に来ていたことを知っていたからです。4万人近い観衆のほとんどは張本氏のことなど知る由もないでしょう。しかし、張本氏たった一人のために、球団はそうしたことをしました。張本氏は思わず目頭を熱くしたそうですが、それはよくわかります。さすが、野球発祥の地だなと思いました。

 この記事を新聞で読んだとき思ったのは、今月10日、新装成った広島市民球場(マツダ・ズームズーム・スヤジアム)で開催された初めての試合(広島対中日)のことです。この日私は、広島ファンでも中日ファンでもないのに、広島まで行き、試合を観戦しました。理由は、新しく完成した球場の第1戦、どんな楽しいセレモニーがおこなわれるのかをこの目で、リアルタイムで見たかったからです。

 ところが、わざわざ書くようなことは何もありませんでした。試合前は両軍の全選手、監督・コーチがグランド上に並んで国旗掲揚・国歌斉唱があっただけ。それらしいイベントといったら、3回裏の攻撃が終わったあと、50数年前、旧広島市民球場が完成し第1戦がおこなわれたときベンチ入りしていた選手が5人、その当時のユニホーム姿でホームベ-ス前に並び、紹介されただけです。スコアボード横の素晴らしいスクリーンに映像が出るわけでもなければありません。

 当然のこと、だれも、トイレに行く足を止めたり、食べ物を買いに行くのをやめようともしません。なかには、そのとき何がおこなわれているのか気づかずにいた観衆もいたことでしょう。

 いくら広島が貧乏なチームだといっても、またスポンサーのマツダが業績不振にあえいでいるといっても、あまりに知恵がないというか、わざわざ足を運んでくれたファンに対して失礼なのではないでしょうか。正直、ガックリしてしまいました。 広島カープにかぎらず日本のプロ野球チームはどこも皆、ファンに対して感謝の念がないというか、楽しませようという工夫がほとんどありません。これでは、プロ野球の観客の数が年々減っているのも当然ではないかという気がします。

 もう20年以上前、アメリカ西海岸を家族で旅したとき、カリフォルニア州アナハイムでエンゼルス対オリオールズの試合を観に行ったことがあります。内野でも安い席でしたが、それでも球場にやってきた全員に入口でノベルティーグッズを配っていました。そのときもらったケネディコイン(1ドル)はいまでも、私の大切な宝物として取ってあります。

 広島カープも、マツダも、何か物を配りなさいといいたいのではありません。でも、何かしら、第1戦の記念になるような「こと」をおこなうくらいのことはしてもいいのではないでしょうか。さほどお金をかけなくても、ちょっと工夫すればいろいろアイデアは生まれたはずです。プロ野球というかスポーツビジネスに対する、日米間の取り組みの大きなへだたり、差をいまさらながら感じさせられました。正直、日本のスポーツビジネスはまだまだ20年近く遅れているなと思ったしだいです。

朝日新聞で連載コラムがスタート

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 新しい年度がスタートしました。世の中なんとなく、リセット気分も感じられますが、それは学生さんとか新入社員とか、ごく一部の人たちのことでしょう。今週月曜日(3月30日)からはテレビやラジオの番組も様変わりしているようですが、テレビなどそうそう観ることもない私にとってはほとんど無関係といえます。

 今週の金曜日(3日)から朝日新聞で「週刊首都圏」というページが始まります。東京版とか横浜版とかいうのはこれまでもありましたが、そうした枠を取っ払った「首都圏」という大きな切り口で、毎回さまざまなテーマを取り上げるのだそうです。その一角に連載のコラムを受け持つことになりました。タイトルは「街魅(まちみ)シュラン」といいます。毎回、首都圏の都市(東京なら区)を一つずつ取り上げ、“都市生態学”の見地から鑑定するというもので、第1回は「相模原市」です。

 一昨年、その全国版といってもいい『都市の通信簿』という本を上梓した(草思社)のですが、反響はいまイチでした、著者としては、熱心に取材もしたし、切り口もユニークだから、けっこういい線行くのではないかと秘かに期待していただけに、残念でなりません。でも、それを読んでくださった朝日の記者さんが、「では、首都圏で」というお話をもってきてくださったものですから、私としては二つ返事でお引き受けしました。
 その取材で、あちこちの街を訪れることになります。一昨日も、千葉県のある市まで行ってきたのですが、私が事前に頭の中で思い描いていたのとはまったく異なる「千葉」を感じました、詳しくは近々、朝日の紙面に書きますが、実際現地に足を運ばないと見えてこないもの、感じられないものがいくつもあります。

 この「現地主義」、私としては何を書く場合も戒めとしているのですが、「県」を扱っているうちは許されていたことが、市とか区になると、そういうわけにも行きません。今回の企画にたずさわることで、そうした部分が改めて実感でき、本当によかったと思っています。読者の皆さんにも、そんな部分を感じ取っていただきながら、ご愛読くだされば幸いです。よろしくお願いします。

札幌学

著者:岩中祥史
価格:540円
[新潮文庫・2009/03]

著者の十八番=“都市学”シリーズの第3弾は、美しい自然とグルメの街・札幌。歴史、地理、行事、独特の風俗習慣など、観光ガイドには書かれていない情報がビッシリ! 読み終えたとたん、誰もが旅行会社のホームページにアクセスしたくなるはず。

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念願の「志の輔落語」@パルコ

 今日は、落語を堪能しに行きました。志の輔の独演会が渋谷パルコであり、それを聴きに行ったのです。志の輔落語は、チケットがなかなか手に入りません。これまで何度かチャレンジしてきたのですが、ずっとアウトが続いていました。こんどこそと、ようやく金的を射止めたしだい。

 でも、実際なぜ、そうまで人気なのか、よくわかりました。普通は、独演会といっても、前座や中継ぎ役の落語家がかならず入るものです。しかし、今夜は、そうした助けを借りず、最初から最後まで文字どおりの独演。たった1人で3時間近く、こちらをクギ付けにするのですから、やはり並大抵の噺家ではありません。

 枕にタイムリーなネタを配す臨機応変さも一流なら、落語家の命といってもいい「間」の取り方も抜群、これまでテレビやDVDでは何度も見聞きしているのですが、やはり生の志の輔をリアルタイム、リアルプレースで観る・聴くのにはかないません。3時間近い独演会を終えた後、体が妙に軽くなっているのを感じ、これだからファンが増えるんだと合点しました。

58歳は「アラ還」というらしい

 秋元順子という歌手がいます。「愛のままで…」という歌がブレークし、去年はNHKの紅白歌合戦にまで出場してしまいました。年齢が62歳だというので「アラ還の星」などというニックネームまで頂戴しているようです。

 そういえば、私自身もいつの間にやら、その「アラ還」の一員になってしまいました。学生時代、私より2歳年上で、ともどもに遊んだりした先輩がこのほど、誕生日を迎え、「アラ」ではなく「ジャスト」還暦を迎えるというので、それを祝う会が今日の昼間、新宿のレストランでおこなわれました。日本を離れて20年以上になるHさんですが、会場には50人近くが集まる盛況ぶりです。

 私と妻もその会に参加したのですが、集まってきた人もほとんどが「アラ還」の人たち。改めて「還暦」などという言葉を聞くと、自分もとうとうそんな年になったかと、一瞬落ち込んでしまいそうですが、気持ちだけはまだ一様に若いのが救いです。

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 もちろん、話題はもっぱら40年ほど前のことばかりで、そこからなかなか脱しないのですが、だれしも、20歳前後に経験したことは忘れ難いものなのでしょう。これから先、こうした催しが増えそうな予感がするのですが、それにしても、当時の記憶のなんとも鮮明なことには驚きます。

大相撲初場所後、尾車部屋でチャンコ鍋

 昨年、ある方の紹介がきっかけで、尾車親方(元関脇・琴風)と親しくなりました。去年も、初場所期間中に部屋を訪れ、新年会のような場に参加させていただいたのですが、今年は私と家人、末っ子の3人だけで部屋を訪問することになりました。

 豪風(たけかぜ)、嘉風(よしかぜ)、若麒麟という3人の関取を擁している尾車部屋ですから、勢いがあります。この中から一人でも大関や横綱が生まれれば大変なことになるでしょうが、親方の当面の夢は、幕内優勝の賜杯を手に、国技館からオープンカーで凱旋することだとか。私も新聞やテレビの画面を通じてしか観たことはありませんが、たしかにあの喜びは何ものにも替え難そうです。

 それにしても、尾車部屋のチャンコ鍋はとても美味でした。巷のチャンコ鍋屋と違うのは、ダシの取り方ではないかという気がします。部屋それぞれ、それこそ秘伝の味付けがあるのでしょうが、尾車部屋のチャンコは角界でも指折りの味と聞きました。それを、部屋の中で、若手力士に給仕をしてもらいながら食するのですから、おいしさもひとしおです。

なんば花月で笑いころげる

 沖縄から、所用で関西にやってきました。メインの用事は京都なのですが、せっかくだからと、1日余分にスケジュールを取り、笑いの本場・大阪の花月に行くことにしました。
 お正月とあって、チケットを取るのは大変です。ネットでなんとかゲットし、4日の昼過ぎから3時間弱、たっぷり笑わせてもらいました。

 吉本新喜劇は大阪でしか観られません。テレビではほとんど顔を見ることのない、でも関西では知らない人がいないという役者さんが出演する新喜劇、いつ観ても、大盛り上がりです。ストーリーはどれも単純明快なのですが、役者さんの演技力もあるのでしょう、とにかく笑い転げることができます。

 漫才、それもデビューした手の若手から芸歴ウン十年というベテランまで、落語、マジックなど、飽きさせない構成で、その点も感心させられます。

 浅草にも、新宿ルミネにも吉本が進出してきて入るものの、やはり本場で観るのが一番ではないかという気がします。それは、浅草でも感じたように、笑いに対する人々の感覚の違いによるのかもしれません。笑いが非日常の東京、逆に完全な日常に入り込んでいる関西、それも大阪なんばでは、劇場内の雰囲気からして違います。

 ひょっとすると、隣の座席に坐っているお客さんの言葉や行動が笑いを誘うこともあります。笑いの遺伝子が劇場内を四六時中飛び交っているのかもしれません。そんな中にいるだけで、こちらもおかしくなってきます。

その昔、仁侠映画が全盛を誇ったころ、見終わって映画館から出てくる男性のほとんどが、ヤーさん歩きをしているということが話題になりました。背中がそっくり返り、足もややガニ股、両手をジャケットのポケットに突っ込んだまま外に出てくるというのです。もちろん、しばらくすると平常に戻るわけですが、吉本も、そうした効果があるのかもしれません。

 誰もが、老若男女を問わず、笑いを取れるような言葉を口にします。こうした日常の中で暮らしているからこそ、大阪の人は皆、お笑い芸人の素養がつちかわれるのかもしれません。

広島のイルミネーションもいいぞ!

 何年くらい前からでしょうか、この時期は全国どこでもイルミネーションばやりです。商店街のそれは昔からよく知られていますが、近ごろは住宅街でもエスカレート、なかにはそれを近くの人たちに見てもらうのを楽しみにしているなどという住民もいるようです。

 もう一つ注目を集めているのが、都市そのものが光の装飾を大々的におこなうものです。本格的なものは札幌から始まったようですが、広島のそれも捨てたものではありません。札幌も広島も、街の真ん中を、とてつもなく幅の広い通りが走っているのが共通しています。空間の十分な広さを生かして繰り広げるイルミネーションを見ていると、同じ街でもいっそう魅力的に感じられるのが不思議です。

 広島では「ドリミネーション」というネーミングでおこなわれ、平和大通りのあちこちに光のオブジェが並びます。札幌は、大通公園に植えられている木々に多くのライトをつけるのが主ですが、ここ広島では、地上に直接、動物やら建物やらを光で作り出すスタイルが基本。それはそれで違った楽しみ方ができます。

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 仙台の定禅寺通りの並木を彩るイルミネーションも美しいですが、それぞれ趣が異なっていて、都市の個性の違いを知ることもできます。いずれにせよ、イルミネーションは冬の街歩きのスタイルを大きく変えたのではないでしょうか。

 この種のものを初めて目にしたのはニューヨークのロックフェラーセンターでした。こちらははるか見上げるほどの高さとはいえ、ごく狭いエリアを利用してのものなので、規模という点では日本の都市のほうが上でしょう。
 ただ、ロックフェラーセンターの光に覆われたクリスマスツリーはやはり、私たちの目を奪います。パリのシャンゼリゼ通りのクリスマスイルミネーションも大変な迫力ですし、クリスマスツリーはやはり、欧米のほうが一枚上をいっているのかもしれません。

またまた浅草、またまた全国座長公演

 先週に続いて、またまた浅草です。今回は浅草公会堂での「全国座長公演」。以前もこのブログでご紹介したかと思いますが、地方の大衆演劇で活躍している役者さんが勢ぞろいし、自由闊達に演技を、歌を、殺陣を披露するというイベントです。

 主催しているのは沢龍二さん。今年もまた、ニューヨークで公演したそうで、元気一杯です。その昔、梅沢富美男さんが東京の篠原演芸場から全国区に大ブレークしたのが、大衆演劇に注目が集まり始めたきっかけといっていいでしょう。実際、地方にもそれに続く逸材がけっこうおり、最近では早乙女太一にスポットが当たっているようです。

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 この日も次から次へ登場するローカルの花形に、場内は興奮のるつぼ状態。演技中、舞台の上を移動し自分の近くにやってくると、ファンがご祝儀をどんどん渡していきます。渡すといっても、帯にさしはさんだり、袂に突っ込んだりなど、露骨そのものですから、金額はもろ見え。渡すほうも、1万円札を1枚ずつ、それとわかるように渡していきますし、役者さんもそれを誇らしげに見せびらかします。こうした、ホンネ丸出しの面白さが大衆演劇の魅力でしょう。

 毎年だと辟易するかもしれませんが、たまにこうした舞台を観るのも一興です。一度、足を運んでみることをおすすめします。

浅草花月で吉本を楽しむ

 知らぬ間に、浅草のちょっとはずれたところに「花月」ができていました。5656(ゴロゴロ)会館といって、西浅草=浅草寺の真裏あたりに建つ建物の中にあるこじんまりした劇場なのですが、大阪の花月とまったく違う雰囲気がします。

 ガンを発生させる大きな引き金の一つはストレスだそうですが、それを少しでも減らすには笑うにかぎるということで、家人も最近、この種の公演があると、すぐ誘いをかけてきます。私自身も、ストレスの怖さにはうすうす気づいているので、大きな支障がないかぎり、ほとんど二つ返事でOKし、どんどん行こうと思っているのです。

 ただ、吉本の本場・大阪と東京とでは、客のかもし出す雰囲気もかなり違うような気がします。なかには、最初から最後まで調子を出せずにいる芸人もいました。

 この日登場してきた若手の中でいちばん面白かったのはNON STYLEの2人。まだ十分若いし、キャリアもそれほど長くないのでしょう、ハナに出てきたのですが、呼吸はピタリ、テンポもよくて、ネタもユニークでした。去年だったか、NHKの「爆笑オンエアバトル」のチャンピオンになっていますが、そのうち、この2人、大きな賞を取るのではないかと思います。

 トリを取ったのは桂三枝でしたが、このあたりはもう大ベテラン。安心してすわっていられます。それにしても、なんだかんだいわれながらも、吉本はいい芸人を数多くそろえているものです。また大阪に行くのが楽しみになりました。

札幌で味わえるドイツ風のクリスマス

 『札幌学』も脱稿し、初校ゲラが出るまで、しばしひと息ついています。そんな中、取材を済ませていないイベントがあることに気づきました。本来、取材には1年通しての期間が必要なわけですから、11月から12月にかけてのイベントは、実地では体験していません。でも、この間に現地取材を済ませておけば、初校ゲラにそれを反映させることもできます。そこで、今回またまた札幌にやってきたしだい。

 最大の目標は「ミュンヘン・クリスマス市」です。今年は11月28日から12月24日まで、大通り公園にドイツのクリスマスを前面に出した店が10数店出てきて、関連の品々を販売、もちろん、ドイツならではの食べ物もあれこれ食べられるという内容です(www.city.sapporo.jp/christmas-market/vender.htmlを参照)。

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 ミュンヘンは札幌と姉妹都市提携をしており、「夏まつり」のときも、秋の「オクトーバー・フェスト」のときもさまざまな形で関わっています。しかし、このクリスマス市はほとんど独壇場といった感じになるので、ぜひ来てみたいと思っていたイベントでした。
 どの店も、クリスマスにつきもののリースやキャンドル、人形、ガラスの工芸品などを所狭しと並べています。私が行った日の夜は雪まで降り、雰囲気は最高でした。手がかじかんでしまうほど冷え込んだ屋外で、ドイツ名物のホットワイン(グリューワイン)を片手に、ときにはソーセージをほおばりながらあちこちの店を見てまわるうち、ドイツに行ってみたいなという気分がわき上がってきます。来年の夏、ベルリンで開かれる世界陸上選手権、かならず行こうと決めました。

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 イベントというのは、一見一過性のもののように思えますが、かならず、私のような思いを抱く人が出てきます。その意味ではまちがいなく情報発信の場であって、企業や自治体など、さまざまなところでさまざまなイベントが企画・実行されるのは理にかなったことなのです。
 ちなみに、ローストアーモンド(殻を取り除いた皮付きのホール状アーモンドを煎ったもの。香ばしい風味とカリッとした食感が特徴)というお菓子を初めて食べたのですが、とてつもなく美味でした。ぜひ一度お試しあれ。

北海道から沖縄まで 日本全国「ヨイショ」のツボ

著者:岩中祥史
価格:861円
[祥伝社・2008/12]

なにげなく口にしたひと言が相手を傷つけたり喜ばせたり……。そんな部分にも「県民性」が影を落としているとは! ビジネスマンにとっては想定外の角度から、上司・部下・同僚など社内、取引先・営業先との平和な人間関係を築くためのお値打ち情報を満載。月刊「しんきん経営情報」(全国信用金庫協会発行)に4年間連載した「おもしろ県民性」がベース。

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標高2000メートルで雪体験

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 家族全員で、万座高原というところに行きました。うれしいことに、私の誕生日(11月26日)、私たち夫婦と長女の結婚記念日(どちらも11月23日)をまとめて祝おうというファミリーイベントです。

 8月の手術後、初めてのゴルフも体験できました。スコアはまるで関係なし、とにかく元気でグリーンを歩けたのが何よりの喜びでした。
 それにしても、ここの温泉は最高です。長野県でも、浅間山周辺の温泉はどこも皆、いかにも「おんせ~ん!」といった感じのお湯が出るところが多いのですが、万座はまた格別。湯の色はほとんど真っ白、ギンギンの硫黄臭も加わり、近づいただけでその気になってきます。

 標高2000メートルを楽に越えていますから、朝夕の冷え込みも格別。私たちが行った前日あたりから雪が降ったようで、道路にはかなりの積雪も見られました。
クルマも当然のことチェーンなしでは走れません。東京からたかだか200キロほどしか離れていないのにこうまで違うとは。そんなあたりにも、新鮮さを感じることができたのかもしれません。仕事も何もすべて忘れ、楽しい3日間を過ごすことができました。

WAHAHA本舗はハコが小さいから盛り上がる

 夕方、突然妻が「今晩、何かなかったっけ?」と口にしました。そう言われた私は、記憶の糸を懸命にたどります。そして、思い出したのがWAHAHA本舗の公演。新宿御苑の近くにあるシアターサンモールという小さな芝居小屋で、柴田理恵主演の舞台があった! というわけで、あわててタクシーに乗って劇場まで行きました。

 原作・演出は喰始、柴田理恵のほか梅垣義男と山本リンダ、白川和子が共演するという『ずっこけ一座の花道 女探偵・伴内多羅子シリーズ第4章』という出し物で、これがまた笑える笑える。そして、また泣ける。

 ストーリーは割愛しますが、小さな劇場で観たほうがいい舞台というのはやはりあるもので、これなどその典型でしょうか。

 私はここ15年ほど劇団ふるさときゃらばんの応援団員をしていますが、こちらもやはり同様で、小ぶりな劇場──といっても「ふるきゃら」の場合は700~800人くらいのキャパがいいのですが──だと、出演者と観客とで舞台というのができ上がる様子がホント、よくわかるんですね。

 新橋演舞場とかの大きくて本格的な劇場で観る舞台も、それはそれでいいのですが、こういう300人くらいの小さな劇場で観るのもまた、面白い感じがします。まあ、いずれにせよ、笑うというのは体にもいいわけで、その後で食べた焼肉のおいしかったこと! 結局、なんだかんだ言っても、私にとっての楽しみは「食べる」ことにしかないようで……。

生まれて2回目のヘリコプター体験

 『札幌学』の取材もいよいよ最後にさしかってきました。9月29日から10月12日までの2週間で、すべて終わらせなくてはなりません。すでに原稿のほとんどは書き終えていますが、それでも、いざ書き出すと、「あそこはどうだったっけ?」とか「こっち側は取材できたけど、天気が悪くなって逆サイドはあきらめた」などというところが出てくるものです。そこで、今回はそれを一気に挽回しようという取材です。

 宿泊先はいつものようにホテルオークラ札幌。ここはこじんまりした、手ごろなサイズのホテルで、しかも地の利が抜群ときているので、今年の3月からスタートした「札幌学」の取材では、ホント重宝しました。

 『札幌学』の取材先の多くをアレンジしてくださったNさんのはからいで、今回はなんと、空から札幌の街を見下ろすというチャンスにも恵まれました。なんと、ヘリコプターが私たちを乗せて市の上空を遊覧するのです。

L1020585 公園の中に都市=札幌が実感できる

 出発地の丘珠(おかだま)空港は、市内東区にある、「かわいい」という言葉がピッタリの空港。札幌から、函館、釧路など道内各地へのローカル便が飛んでいます。

 ヘリコプターに乗るのは、今回が生まれて2回目。最初に乗ったのは、大阪の伊丹空港から和歌山県の田辺まででした。このときは30~40分ほどだったでしょうか。最初から最後まで興奮しっぱなしで、じっくり観察する余裕などありませんでした。しかし、今回はその点が違います。これまで何度となく取材したあちこちのスポットを空から見るとどうなるか──。そんな楽しみすらありました。

L1020592_2モエレ沼公園も空から見るとその魅力がよくわかる!

 この日は、これぞまさしくヘリコプター飛行日和といってもいいくらいの、雲ひとつない快晴。隅から隅まで、札幌の街を見渡し、見下ろすことができました。それだけでも心が洗われるのに、空を自由自在に飛ぶ快感。人類が長い間夢見ていたのが、改めて実感できたように思いました。

「これで見納め」広島市民球場

広島カープは私にとってひじょうに思い出深い球団です。というのも、小学校3年生のとき、母親に連れられて行った当時の中日球場で、生まれて初めて観戦したプロ野球の試合が中日対広島だったからです。いまでも、3塁側内野スタンドから目にした、カクテル光線に映える鮮やかな芝生の色は頭の片隅に強く焼きついています。

 その広島(いまは東洋がつきます)カープが、今シーズンでその役目を終える広島市民球場で戦う“正真正銘のラストゲーム”を観にいきました。

 まずは、晴れたことに最大の感謝です。というのも、予定では、この日の東京ヤクルトスワローズ戦が「ラストゲーム」なのですが、万一、雨でも降ると、試合は中止です。また、それより1、2日前に予定されているゲームが雨天中止になると、全体としてスケジュールが繰り下がり、ヤクルト戦が「ラストゲーム」でなくなってしまう恐れがあります。
 もちろん、万一を想定し、“ラスト候補”2試合のチケットもいちおう購入してはいたのですが、日にちがズレると、広島に来れなくなる恐れもあります。今週は、週の初めから、天気予報をこまめにチェック、なんとか大丈夫そうだということで、今日の朝早く、羽田を出発、空路広島入りしました。

 試合は午後2時からでしたが、昼過ぎには球場へ。周辺一帯はもう興奮のルツボでした。当然、広島名物のダフ屋もいっぱい出ています。でも、来年、新しい球場がオープンしたら、彼らの姿も消えてしまうでしょう。
 ダフ屋が似合うというのも変ないい方ですが、とにかく広島市民球場というところは、いかにも古めかしいのです。外観はともかく、球場内は通路も狭いし、座席も前後のスペースが小さいため、移動するのもひと苦労。それでも、このラストゲームを見ようというファンでスタンドはいっぱいでした。

 老若男女という言葉がありますが、観客もまさしくそうした塩梅で、カープこそこの街のシンボルといったことがありありと感じられます。いや、シンボルというより、もはや生活の一部ではないでしょうか。地元にプロのチームがいることは、これほどうれしいことなのだと改めて実感しました。
 この球場の名物は「うどん」らしく、その出店には長蛇の列。私も、炭水化物ストップのドクター指令がなければ、まちがいなく列に並んだでしょう。

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 いかにも最後の試合らしく、試合開始前にさまざまなセレモニーがおこなわれましたが、残念なことに、こちらはそれほど感銘を与える内容ではありませんでした。1970年代半ばから80年代末までの赤ヘル黄金時代を築いた山本浩二や衣笠祥雄、水谷実郎、高橋慶彦、大下剛史、達川光男、長嶋清幸、野村謙二郎、水沼四郎、三村敏之、ホプキンス、シェーン、ライトル、ギャレット、小早川毅彦、正田耕三、江藤智、緒方孝市、木下富雄、北別府学、佐々岡真司、外木場義郎、大野豊、江夏豊、川口和久……。古くは白石勝巳、古葉竹識、安仁屋宗八、横溝桂、大和田明、藤井弘、森永勝也、山本一義、大石清、長谷川良平、備前喜夫、阿南準郎……など、主役、脇役を問わず、歴代の名選手に列席してもらうとかすればと、一段と盛り上がったにちがいありません。帽子をはじめカープのシンボルカラーをいまの「赤」に変え、それまでテールエンドだった広島カープのチームカラーをがらり一変させたジョー・ルーツ監督などにも声をかけてあげればよかったのにと思ったのは私だけではないでしょう。

 アメリカ大リーグのヤンキースタジアム、シェイスタジアム(どちらもニューヨーク)も今年限りだそうですが、かの地でこうしたイベントがおこなわれるとしたら、どのように盛り上げるのか、ふと思いました。

 たしかに、広島カープは、どこかの球団と違って、お金持ちではありません。でも、かりにその、どこかの球団がこの種のイベントをおこなうと仮定しても、今回のカープと大差ないのではないかという気がするのです。
 お金持ちであるとかないとかいうことではなく、野球、プロスポーツに対する考え方そのものが、日本の場合、まだまだ遅れているのではないかと思うのです。

最初のリハビリは、赤坂で歌舞伎見物

 高校時代の友人Yくんがここ2年ほどかけて取り組んでいた「中村勘三郎 赤坂大歌舞伎」がとうとう実現しました。TBSの敷地内につくられた赤坂ACTシアターに、昨夜それを観にいくことができたのです。退院してまだ1週間しか経っていませんいが、自分としては“リハビリ”第1弾といった思いです。

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 勘三郎はいま最高に乗っている歌舞伎役者だと思いますが、それより何より、病院というなんとも味気ない空間とはうって変わり、華のある空間に身を置くことができた喜びのなんと大きなことか! そのうれしさを味わえたのが最高の収穫でした。

 演目は「狐狸狐狸(こりこり)ばなし」といい、歌舞伎が初めてという人でも十分に楽しめるストーリーです。しかも、オチが二重三重になっていて、しっかり楽しむことができました。劇場自体は「常打ち」というにはいささか物足らない感じもしましたが、舞台そのものの面白さがそれも帳消しにしてくれます。

タバコをやめられないまま、明日退院

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 さすが、退院してから1週間ほどは、自宅で、ほとんど何もせずに過ごしました。スタッフの書いた原稿のチェック以外、プリントアウトを手にすることもありませんし、メールの返事を出す以外パソコンに向かうこともありませんでした。生涯初めての経験といっていいかもしれません。

 退院にあたり、担当の医師からは、術後の過ごし方に関しさまざまのアドバイスを頂戴しました。食事、酒、運動などの生活習慣、仕事に対する取り組み、リラックスのしかたなど、それは多岐にわたっています。タバコは「百害あって一利なし」で、手術を受けたのを機にやめるよういわれました。でも、それで「はい、わかりました」といってやめられるシロモノではありません。タバコにはやはり中毒性があるのです。
 といって、それ以上にひどい中毒性を持っているのが砂糖というか、糖質であることは意外と知られていないようです。実際、「糖質に中毒性がある」ということはだれも教えてくれません。一部、そうしたことを説く医師や栄養学者はいるのですが、そうした主張はなかなか浮上してこないようです。

 私が以前から信頼している医師は、そのことを主張してやまぬ数少ない一人です。だからというわけではないのですが、私も、タバコより糖質を断つことにエネルギーを向けています。もちろん、それはそれでむずかしいのですが、ここ1年ほど、米やパンに対する執着はほとんどなくなりました。

 たまに、仕事の付き合いで、やむを得ず米をほんのひと口、ふた口食べただけでも、その影響は顕著にあらわれてきます。まぶたが腫れぼったくなる、体が重い、眠たくなる……というのが主だった現象ですが、そんなとき「あっ、ヤバい」と感じます。糖質の中毒症状はタバコ以上であることを実感します。

術後2日目に歩き、3日目には原稿書き

 生まれて初めての入院、生まれて初めての手術を経験した2日後。体のあちこちにチューブをつけられ、それらを取りまとめるのに欠かせない車輪付きの器具をひきずりながら、院内を歩きました。なんでも、「安静にしている必要はありません。むしろ、無理してでも体を動かすようにしたほうが回復も早いですし、退院してからも楽になります」ということのようです。

 本当にこれが自分の体なのだろうかと感じつつ、ゆっくりゆっくり歩を進めます。5分も経つとあちこと痛みが出てきます。とくにメスで掻っ切った腹部の傷跡周辺のいたみといったら、もうたまりません。それでもあと少しあと少しと、自分を叱咤しながら10分間歩き続けました。健康であることのすごさを改めて感じずにはおれません。

 ベッドに戻ると、会社から「原稿の最終チェックを」ということで、スタッフがプリントアウトを持ってきました。読めばかならず、直したい箇所が出てきます。400字7~8枚の原稿に、大小取り混ぜ訂正指示が20箇所近く。頭だけはきっちり働いています。でも、逆に、そのことに感謝し、心はもう次の仕事に向かっていました。

 9月に上梓する『名古屋の品格』の「まえがき」を書きました。私が入院している病院の敷地はなんとも不思議なことに、江戸時代、尾張藩の下屋敷があった場所なのです。よりにもよって、これほど縁の深い場所で……ということに感慨を覚えつつ、あっという間に書き終えてしまいました。

 たしかに、私の仕事は因果な仕事で、体さえ動けば、どんな場所でもできてしまいます。手が動かなければ、口述筆記などという方法まであります(私には経験がないが)。病室に持ち込んだパソコンでワープロソフトを立ち上げれば、あとは頭に浮かんだことを次々打ち込んでいけばそれでいい。プリントし推敲を加え、それを入力し再度プリントしてチェック。それで問題なければ入稿です。

 入稿といっても、かつてのように原稿を直接編集者に渡すこともなければ、プリントアウトしたものをファックスする必要もありません。入力したデータをメールに添付して送ればそれで完了です。おかげで、いいことか悪いことかわかりませんが、私が編集者をしていたころに比べ、著者と顔を合わせる機会はめっきり減りました。

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世界遺産を観に、羽田からソウルへ

 7月13日から16日まで、韓国に行きました。目的は世界遺産のひとつである水原(スウォン)の城跡を観ることです。前々回行ったときも観たいと思ったのですが、ソウル市内から行くのがけっこう面倒くさそうだったので、そのときはあきらめました。そこで今回は、ホント久しぶりに「ツアー」に申し込んだのです。羽田から行けるというのも魅力でした。

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 たしかに、自宅から成田まで2時間もかけて移動し、そこからまた2時間以上飛行機に乗って、着いた先はソウルではなくインチョン(仁川)。インチョンからソウルまでさらに1時間。これはなんともバカバカしい感じがします。
羽田なら自宅から1時間ほど。そこから2時間弱でもうソウルの金浦空港なのですから。近ごろは上海にも羽田から行けるのでかなり楽です。つい何年か前までは、台北へは羽田から行けたのです。それが、チャイナエアラインの便が成田発着に変わってしまったため、それもできなくなってしまいました。

でも、台北や香港、マカオ、北京や杭州など、東アジア各国・各地のような近場には羽田から行けるようにしたほうがはるかに効率的です。欧米はこれまでどおり成田からでいいでしょう。どうせその後10時間以上も飛ぶわけですから、成田までの2時間も、たいして負担には感じません。むしろ、「さあ、外国に行くぞ!」という高揚感をさらに高めてくれ、「非日常」への移動を演出するにはもってこいかもしれません。

 台北や香港、マカオなど4時間もかからないのですから、成田まで行くのは消耗感が先に立つばかりで、疲れが先に来てしまいます。それが今回はないわけですから、出発前から気持ちも軽く、これはいいなと思いました。胃にガンを抱えていてもそうでしたから、100%健康なら、もっとよかったでしょう。

 でも、飛行機に乗れば、ガンのことなどすっかり忘れてしまいました。まして、外国に出向いているわけですから、「日常」とは大きなへだたりがあり、ますますそうした意識は薄まります。これほど「非日常」を強く感じさせられた経験はなく、ガン発見よりも前に決めていた韓国ツアーですが、いつも以上に新鮮味を感じたしだい。

病気は、ひとり治そうと思わないほうがいい

 先月末から沖縄に来ています。長男一家が早めの夏休みを取って遊びにやってきました。西海岸に点在する数多くのリゾート地のうち、ブセナテラスというところを選んで長男一家とともに2泊しました。

 胃ガンの宣告を受けてからまだ半月もたっていません。気持ちは相変わらず、不思議なくらいフラットのままです。医師の話では、「死」というものを意識させられるほど差し迫ったステージにまで達していないようなので、それが幸いしているのかもしれません。でも、時間をともに過ごす家族がいるだけでも自分は恵まれているのだということを痛感しました。

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 東シナ海に沈む夕日をバックに、私たち夫婦と長男一家とで交互に写真を撮り合ったりしたのですが、なんだか胸が熱くなってきました。病気と闘うのは自分ひとりだけじゃない、妻もいれば、同じ屋根の下に住んでいるわけではないけれども、長男の一家もいる。娘夫婦もいる、次男もいる……。そう思うと、胸の中につかえていたものがすーっと消えていきます。生まれて初めての経験です。

生まれて初めての胃カメラでガンが見つかる

 一昨日から昨日にかけ、1泊2日で人間ドックに行ってきました。生まれて初めて胃カメラなるものを飲みました。それで、なんと「胃ガン」が見つかったのです。大きさは4センチ弱で、かなりのものです。

 それにしても胃カメラに写った自分の胃の中を自分の目で見るというのは、なんとも奇妙な経験です。もう10年以上前のこと、大腸の内視鏡検査を受けたときと同じくらいの衝撃を受けました。ましてや、それでシロウト目にもわかるくらいのガンが見つかり、しかもそれを自分の目で見られるというのは、なんというか……。

 まさか、この自分がガンになるなんて、驚きです。ほかの人はなっても、この自分だけは絶対に、そうした病に冒されることはあるまいと思っていましたから(もちろん、なんの根拠もないなのですが)。

 でも、医師からその旨を告げられたとき、「よし、自分の運命として受け容れよう」と、不思議に覚悟が決まり、ほとんど動揺しませんでした。ガンの怖さは、知識として、あるいは情報としてはイヤというほど知っているつもりでした。でも、いざそれが自分自身の体に発症しているとなると、そうした知識や情報は、まったく意味を持たないことにも気づかされました。

 自分の体は、自分がいちばんよく知っているようでいて、実際にはまったくわかっていないものなのです。幸か不幸か、いまはインターネットという道具があります。さっそくガンについて調べようとすると、あまりに膨大な量の情報に圧倒されました。それだけで、もうメゲそうになります。それでも……と思い、片っ端からクリックして目を通すのですが、同じことについて人ぞれぞれ、それは医師であろうが患者であろうが、ことごとく異なる内容のことを伝えています。

 そのうち、こんなことをいくら続けても意味がないと思いはじめました。医師を信じ、家族を信じ、友人を信じるしかないのではないか。そして、何より、自分自身を信じようと最後、決めました。そのとたん、急に気持ちが楽になりました。

ゴミの集積場がユニークな公園に変身

 5日から始まった札幌取材を終え、東京に戻りました。この1カ月で、5月21日、28日、6月11日と3回もゴルフをしました。6月6日もプレーする予定でいたのですが、あいにくの豪雨でキャンセルせざるを得なくなってしまい、本当なら4回、平均すると週1ペースでプレーするはずでした。自分でも驚くほどの熱中ぶりです。でも、それくらい、沖縄でのプレーが私を変えてしまったのです。

 沖縄から大阪に立ち寄り、打ち合わせをした後帰京したのが5月17日。その翌々日には、東京でプレーするとき用にと、新宿の中古ゴルフ用品店に行き、沖縄でのできごとを話しながら、またまた安く道具を買いそろえました。その2日後、埼玉県の石坂カントリーというゴルフ場でプレーしたところ、18ホール中15ホールでスコアがつけられるという私にとっては生まれて初めての快挙を達成できたのです。赤飯でも配って差し上げあげたいような気分でした。

 5月28日は札幌の羊ヶ丘カントリーというゴルフ場。北海道のゴルフ場がすばらしいのは、とにかくフェアウエイが広いことです。あちこちのゴルフ場に行くほどのキャリアは持ち合わせていない私ですが、そんな私から見ても、北海道のゴルフ場は雄大な大人の遊び場といった感じです。どのティーグラウンドからも、ほとんどグリーンのフラッグが見えます(左右に曲がっているコースなど、まずありません!)。それゆえOBもほとんどないわけで、これは初心者にとってはありがたい限りです。この日も気分よく打ち終えホールアウトできました。

 それにしても、宿泊していたホテルから地下鉄とタクシーを乗り継ぎわずか30分ほど(!)で行けるのですから、それだけで感動ものです。埼玉の石坂カントリーも自宅からクルマに乗ってドアトゥードアで1時間。これでも近いほうだといわれますが、その比ではありません。
ただ、北海道のゴルフ場は一般に、11月から4月半ばごろまでは積雪のため営業休止となります。そのことを別にすれば、スコアに関係なく爽快な気分でプレーできるという点では全国でも屈指なのではないでしょうか。

 サラリーマンが転勤したい都市のランキングで、札幌は福岡と並びかならず1位か2位になります。その理由がよくわかるような気がしました。おそらくは単身赴任でほとんであろうサラリーマン諸氏にとって、首都圏などの自宅に戻らないときの週末、ゴルフは最大の楽しみでしょうから。

 そんな札幌をいま、私は取材しています。今回の取材で行った「モエレ沼公園」というところは、なんとも素晴らしい魅力に満ちた場所でした。もともとは川っぷちにあるゴミの集積場だったところを公園に作り替えてしまったのです。それもハンパな公園ではありません。イサム・ノグチという日系アメリカ人の彫刻家が全体をプロデュースしたのですが、何度行っても飽きが来ないようになっているのです。

L1020254_2  小高い山に広々とした広場、野外コンサート場があり、野球場に陸上競技用のグラウンド、ガラスづくりの資料館・レストラン+管理棟、水遊び用プール、噴水、春になると桜の生い茂る森など、そんじょそこらにはないような公園です。イサム・ノグチが生前、実現できなかった夢のすべてをモエレ沼公園で形にしたといってもいいでしょう。

 私が行ったのは、いまでは札幌のイベントの双璧を成す「YOSAKOIソーラン」の最終日の昼間でしたが、それでも大変なにぎわいでした。そうしたたぐいのイベントがない日曜日など、駐車場は早い時間から満杯とのこと。札幌に行かれる方はぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょう。

オペラを観にくる客層

 前日、札幌から帰京。今日は上野の東京文化会館にオペラを観に行きました。あいにく、前の日から降り続いていた雨で、着ていく服にそれほど配慮することができませんでした。でも、オペラというのは、好むと好まざるとにかかわらず、そういうことを考えなくてはならない代物なのです。歌舞伎とオペラに共通しているのは、その点にあるといっても過言ではなさそうです。違うのは、オペラのほうがチケット代がべらぼうに高いことでしょうか。歌舞伎のような「ちょい立ち見で」といった席も、オペラにはありません。

 そんなオペラに、大枚はたいて行ったのですから、肩が凝るのはしかたないかも……というのが正直な思いでした。でも、実際に観てみると、これがけっこう楽しめるのですよ。歌舞伎も、日本語なのに現代人には理解できない台詞が多いので、ときにイヤホンガイドのお世話になることがありますが、そういう意味ではオペラも同類かもしれません。
出演者は皆外国人で、台詞はイタリア語だったりドイツ語だったり。舞台の両サイドにプロンプターというのでしょうか、台詞を日本語に訳した文字が流れ出てくる電光掲示板のようなものが用意されているので、ストーリーもほぼ理解できるわけです。まあ、演し物によっては、内容がほぼ想像できる場合もあるようですが。

 いまさらながら驚いたのは、観客の素性がふだん私のような者が接している人たちとかなり隔たりがあるということです。自分で楽器をひいたり歌を歌っているとおぼしき、いかにもといった感じの人も多いのですが、「趣味 オペラ鑑賞」これはもう“別人種”といったほうがよいかもしれません。

ゴルフにハマりつつある今日このごろ

 11日から沖縄に滞在しているのですが、昨日はゴルフをしました。ゴルフなるものを、自分でもやってみようかと思ったのは55歳を過ぎてから。それでも、さしたる意欲はなく、自分で道具を買い揃えてみようと思ったこともなければ、ましてや自分からゴルフ場に行きたいと思ったこともありません。だいたい、ゴルフなんぞにうつつを抜かす人の気が知れなかったのです。それと、なぜか小さなころから、ピンポンとか小さな球は苦手で……。

それが、なぜに、突然?

 4月30日に、ほぼ半年ぶりくらいでクラブ(これももらいもの)を手にしたのですが、スコアカードをつけるまでもないような、全ホール“アンカウンタブル”の結果。ただ、その日の夜、せっかくお金を出し、貴重な時間を費やして遊ぶ以上は、何か楽しみを得られないと……と、ふと思ったのです。「モト」は取りたいなというという、名古屋的な発想といってもいいでしょう。

 そして沖縄に入ると、すばらしくさわやかな天気。こういうときにゴルフなんかすると、きっと楽しめるんだろうなと思ったものの、グリーン上での悪戦苦闘ぶりを思うとためらってしまいます。でも、もちろん、道具など持ってきていません。そこで、とりあえず中古品でいいから揃えてみようかと思い立ちました。インターネットで検索すると、沖縄にも中古のゴルフ用品店がいくつかあります。その中で、分室のあるところから近い店を選び足を運んでみました。

そこで出会ったスタッフが、実にすばらしい人だったのです。これまでの実情を正直に話すと、「たしかに、初心者のうちは道具に支配される部分が多いですね。自分の力、体格に合わない道具を使うと、おかしなクセができちゃって、その後進歩しなくなりますから」とのこと。なるほどと思いました。

とりあえず「いまの自分に合ったものをそろえたい」とお願いしました。中古のゴルフ用品店には珍しく、試打ができるコーナーまであります。そこで、スイングらしいことをしてみせると、そのスタッフは何本か、私に合っていそうなクラブを持ってきてくれました。そして、次々と試し打ちをし、ドライバー、ユーティリティー、アイアン6本、サンドウエッジ、パターと全部で10本のクラブを選んでくれました。靴やら手袋など、プレーに必要なものをそろえ、なんとなく高揚した気分で店を後にしました。

それからゴルフ場を自分で予約し、15日にグリーンに出たのです。サザンリンクスという、どのホールのティーグラウンドからも海が見えるような、いかにも沖縄らしさに満ちたコースでしたが、自分でも信じられないくらいのプレーができました。まあ、楽しかったこと楽しかったこと。第一打がまっすぐ、そしてある程度遠くまで飛んでいくことがこれほど気持ちのいいことだとは! 後で聞くと、けっこうレベルの高いゴルフ場だったようですが、そんなことは関係ありません。プレーする人が楽しめれば、それでいいのです。

この経験を機に、しばらくゴルフに真剣に取り組んでみようという気持ちになったのはいうまでもありません。「弘法は筆を選ばず」という言葉がありますが、ゴルフ初心者にとっては、「道具がプレーヤーを選ぶ」のだと思ったしだい。