広島に足りないのはサービス精神?

 昨日、イチロー選手が3068安打という、日本人として最高記録タイを達成しました。そして、今日はそれをあっさり更新、これからは記録を伸ばすだけです。日米通算がウンヌンという論議はこの際脇に置いて、まずは「おめでとう!」です。

 しかし、それより私が感心したのは、タイ記録を達成したそのとき、シアトル・マリナーズのホームスタジアムがおこなった、粋な演出です。それまでの記録保持者・張本勲氏を称える映像とアナウンスを流したというのです。もちろん、張本氏が球場に来ていたことを知っていたからです。4万人近い観衆のほとんどは張本氏のことなど知る由もないでしょう。しかし、張本氏たった一人のために、球団はそうしたことをしました。張本氏は思わず目頭を熱くしたそうですが、それはよくわかります。さすが、野球発祥の地だなと思いました。

 この記事を新聞で読んだとき思ったのは、今月10日、新装成った広島市民球場(マツダ・ズームズーム・スヤジアム)で開催された初めての試合(広島対中日)のことです。この日私は、広島ファンでも中日ファンでもないのに、広島まで行き、試合を観戦しました。理由は、新しく完成した球場の第1戦、どんな楽しいセレモニーがおこなわれるのかをこの目で、リアルタイムで見たかったからです。

 ところが、わざわざ書くようなことは何もありませんでした。試合前は両軍の全選手、監督・コーチがグランド上に並んで国旗掲揚・国歌斉唱があっただけ。それらしいイベントといったら、3回裏の攻撃が終わったあと、50数年前、旧広島市民球場が完成し第1戦がおこなわれたときベンチ入りしていた選手が5人、その当時のユニホーム姿でホームベ-ス前に並び、紹介されただけです。スコアボード横の素晴らしいスクリーンに映像が出るわけでもなければありません。

 当然のこと、だれも、トイレに行く足を止めたり、食べ物を買いに行くのをやめようともしません。なかには、そのとき何がおこなわれているのか気づかずにいた観衆もいたことでしょう。

 いくら広島が貧乏なチームだといっても、またスポンサーのマツダが業績不振にあえいでいるといっても、あまりに知恵がないというか、わざわざ足を運んでくれたファンに対して失礼なのではないでしょうか。正直、ガックリしてしまいました。 広島カープにかぎらず日本のプロ野球チームはどこも皆、ファンに対して感謝の念がないというか、楽しませようという工夫がほとんどありません。これでは、プロ野球の観客の数が年々減っているのも当然ではないかという気がします。

 もう20年以上前、アメリカ西海岸を家族で旅したとき、カリフォルニア州アナハイムでエンゼルス対オリオールズの試合を観に行ったことがあります。内野でも安い席でしたが、それでも球場にやってきた全員に入口でノベルティーグッズを配っていました。そのときもらったケネディコイン(1ドル)はいまでも、私の大切な宝物として取ってあります。

 広島カープも、マツダも、何か物を配りなさいといいたいのではありません。でも、何かしら、第1戦の記念になるような「こと」をおこなうくらいのことはしてもいいのではないでしょうか。さほどお金をかけなくても、ちょっと工夫すればいろいろアイデアは生まれたはずです。プロ野球というかスポーツビジネスに対する、日米間の取り組みの大きなへだたり、差をいまさらながら感じさせられました。正直、日本のスポーツビジネスはまだまだ20年近く遅れているなと思ったしだいです。