月別アーカイブ: 2021年2月

何がなんでも変化を見つけるまでは

●まだまだ楽観はできませんが、春はもうそこまで来ているようです。スイセンが2日ほど前に花を開き、今日はもうこんな具合に。キングイエローもどんどん咲いていますし、ブリリアンルージュも追いかけています。クリスマスローズは花びらが下を向いており、その姿を拝むのはなかなか大変です。チューリップの茎・葉も日ごと力強い姿に。
●な〜んてもっともらしく書いてはみたものの、昨年まで草花にはほとんど無関心だった私ですから、これくらいにしておきましょう。水をやることくらいはできても、肥料や栄養となると、すべてカミさんまかせ。でも、時が来れば花は咲くものと楽観しているので、気楽なものです。
●とにかく、時間だけは毎日ふんだんにあります。昨年2月ごろまでは1日3イベントというのが平均だったのが、いまではせいぜい1イベント、まったく何もない日のほうが多いのですから。変化をつけるには、ごく身近なところで何かしら探し出すか、あるいはみずから作るかしかありません。「3密回避」という枷(かせ)もクリアせねばならず、けっこうエネルギーが要ります。
●銀座にあるかかりつけのクリニックに行くときも、何か新発見はないかと、それこそ鵜の目鷹の目。電車に乗っても、町を歩いても、昔とは視線の向きが違ってきます。今日も、地下道で「北前船観光マルシェ」なるものに出くわしました。いま現在の取材対象であるだけに興味津々。ただただ流れにまかせているだけでは、そのうち頭が空っぽになってしまうのは必至。それを防ぐためにも、とにもかくにも注意力全開の毎日です。

Facebook Post: 2021-02-25T22:11:59

2日続けての外食━━お寺ご飯とロシア料理

●昼どきに用事が重なり、2日続けて外食。1日目は「赤門テラスなゆた」という名のカフェで。寺院の境内の一角にあるため、”お寺カフェ”と自称しているようです。外観・内装ともオシャレで境内の枝垂れ梅も満開。昼間の客はほぼ全員が女性でした。この日のメインは車麩のフライで、有機栽培の野菜を使った副菜が4品。玄米ご飯にしたせいかお腹いっぱいに。
●2日目は国立駅前のロシア料理店「スメターナ(ссметана)」。あれっ、スメターナって、チェコの作曲家(「モルダウ」が有名)では? と店主夫人にお聞きすると、сметанаとは、ロシア料理に欠かせない乳製品(サワークリーム)のことだそうです。前菜がボルシチ、メインはキノコの壺焼きという定番の組み合わせでしたが、なんとも上品な味わいで、感動しました。
●初めてロシア料理を食べたのは中学生の頃。食いしん坊の父親に連れられて行った名古屋の「ロゴスキー」という店(4、5年前にクローズしたようです)です。以後、なんだかんだ言いながらも、年に1、2回は食べているでしょうか。派手さはないものの、文化の面ではつねにフランスを追いかけていた国だけに、全体的にレベルは高いと思います。
●それにしてもスメターナのコロナ対策はほぼ完璧。入店時のアルコール消毒はもちろん、隣のテーブルとはアクリル板で仕切られ、同じテーブルの前後も同様。客も皆ひそひそ声で話しています。もちろん、平日のお昼どきとあって、店自体それほど混んではいませんが。どこかの国の大統領のたわごとのように、「コロナはウオッカで防げる」などということはないにしても、こんな時期ですから、せめてジョージアワインでも傾けながらトライしてみてもいいのでは。

Facebook Post: 2021-02-24T13:41:16

大学のある町に流れる空気──私の「マイクロツーリズム」⑱

●10日ほど前、隣駅の江古田(北口)にある大学=日芸(日大芸術学部)とムサオン(武蔵野音楽大学)周辺までウォーキング。そろって鉄筋コンクリートの立派な建物に建て替わっており、1970年代の牧歌的な面影はありません。ただ、どちらも芸術系とあって、周りにはそれっぽい空気が流れています。ムサオンの校舎横には「ショパンプロムナード」なるものも。近くを歩いていたとき、どこからともなく聞こえてくるピアノの音に癒されました。
●江古田駅には南口に武蔵大学もありますが、「らしさ」という点ではこちらのほうが上を行っているかもしれません。練馬区の文化財にもなっている大講堂(1928年築)は、早稲田大学大隈講堂や日比谷公会堂と同じ建築家の設計。小さなキャンパスでも、”フンイキ”なのです。
●ただ、日本の大学はいまどこも皆、ピカピカの校舎にゴミひとつ落ちていないキャンパスのところばかり。それはそれでいいのかもしれませんが、ヨーロッパの”大学都市”のように、学生と住民の接触によって醸(かも)される混沌、またそれから発する自由の空気、匂いとなると日本は?
●家に戻ろうと江古田駅近くを歩く私に、何かが「おいでおいで」をしてきます。パンの匂いです。といっても、近ごろブームの高級食パンではなく、いわゆる惣菜パン。いずれ折を見て詳しく書こうと思っていますが、有名チェーンではないおいしい惣菜パンの店がある町は魅力的というのが私の持論。今回もいくつか買ってしまいました。ウォーキングの成果は台無しになるかも。

Facebook Post: 2021-02-20T08:46:31

音楽・スポーツが商業主義に毒されると……

●1990年、イタリアで開催されたサッカーW杯の決勝戦前夜、古代ローマの遺跡カラカラ浴場に、ルチアーノ・パヴァロッティ(故人)、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスの三大テノールが初めて勢ぞろいしたコンサートは、全世界で7億人が観たといいます。W杯では94(アメリカ)、98(フランス)、02(日本・韓国)の3大会、それ以外にも03年まで各国でコンサートを開催し大きなブームに。その一部始終を追ったドキュメンタリー映画「甦る三大テノール 永遠の歌声」を観てきました。
●初回こそ3人の心が通い合うイベントだったものの、ブームになってからはお金儲けに大きく傾いていったなどという裏話も。いまその開催で揺れている東京オリンピックも、中止の決断が下せないのは、一にも二にも商業主義の論理が強力に支配しているからでしょう。
●三大テノールの共演は、パヴァロッティの死去でピリオドを打ちました。一方オリンピックは、誰も想像していなかったパンデミックと重なり、しかもいまだ終息の見通しが立たない状況。無観客でテレビ中継だけ流すという手もあるのでしょうが、長い目で見ると、これは自分で自分の首を絞める恐れがあります。
●たとえば、ドイツのブンデスリーガは「無観客+テレビ中継のみ」のスタイルを続けた結果、これまで地元のスタジアムに通い続けてきたサポーターがどんどん減っているとのこと。選手もプレーにいまひとつ魂が入らないようです。放映権収入が入場料収入を大きく上回っているため、経営判断なのだとか。でも、これでは本末転倒という気がします。
●帰りに立ち寄ったデパートで、たまたま出店していた太宰府名物「梅ヶ枝餅」をGET。左遷された菅原道真が、食事もままならずにいるところへ、老婆が梅の枝の先に刺して餅を差し入れたことに由来する焼き菓子です。見て楽しむ花の梅も可憐ですが、“食べる梅”はさらによし。でも、これって本末転倒かな?

Facebook Post: 2021-02-18T11:04:14

青春を刻んだ店が次々と消えていく中で

●東京・神田神保町ではここ2、3年、「キッチン南海(洋食)」、「いも屋(天ぷら)」、「スヰートポーヅ(餃子)」など、昭和から続いていた店が次々クローズしています。喫茶店も「白十字」「エリカ」が閉店。学生時代ひんぱんに出入りしていたところなので、残念至極、残っているのは「神田伯剌西爾[ブラジル]」くらいでしょうか。
●そうした中、池袋東口のジュンク堂書店にほど近い洋食屋「キッチンABC」に先日お邪魔しました。創業は50年以上前なのですが、なぜか、これまで一度も訪れたことがありません。ホームページを見ると、店の売りは「味・量・値段」+「個性」。となると、メインのターゲットは学生や若いサラリーマンなのでしょう。
●店構えも昭和そのもので、いま風のおしゃれな雰囲気とはほぼ無縁。この日はたまたま、あちこち探しまわる時間がなく、いわばしょうことなしに入ったのですが、これがどうしてどうして、とんでもないヒットでした。「味」は少し濃いめ。ただ、これはこうしたタイプの店に共通するもので、問題ありません。「量」はガッツリで、いまの私には少々ヘビーでしたが、残すほどでもないという感じ。「値段」もリーズナブルでした。
●ならば、「個性」とは何かと思ったのですが、どうやら店主のさわやかなキャラクターにあったようです。「寒い中お待たせして申し訳ありません」「すぐにご案内できますよ」「またのご来店をお待ちしております」など、特段変わったフレーズではありませんが、古希を過ぎた海千山千の私でも、おやっと思うほど心がこもっているのです。私が中にいたのは30分余りですが、その間、客の出入りが止まることはなし。繁盛店のなんたるかを改めて知らされました。

Facebook Post: 2021-02-15T12:28:41

余談・独断・油断には要注意──私の「マイクロツーリズム」⑰

●昨年11月から始まった「石岡瑛子回顧展」@東京都現代美術館。新聞の案内などには最初のうち「予約制」と出ていましたが、しばらく経つとその文字が消滅。きっと空いているのだろうと思い込み、9日に行ってみたら、なんとチケット売り場は長蛇の列、建物の外にまで続いているではありませんか。「70〜80分はかかります」と言われ、あっさりあきらめました。12月下旬から感染者数が急増したことで、しばらく客の入りも減っていたのでしょうが、最終日まであと数日と迫り、多くの人が一気に詰めかけたようです。
●意外に思ったのは若い人が多かったこと。石岡瑛子が国内で活躍していたのは1980年代初め頃まで。フェイ・ダナウェイの写真と「モデルだって顔だけじゃダメなんだ。」というコピーから成るPARCOのポスターは強烈なインパクトがありました。その後ニューヨークに活動の場を移しアカデミー賞やグラミー賞を受賞するなどしていますが、50代以下の人たちにとってはどうなのかなと。これも私の勝手な思い込みでしょうか。
●それにしても、木場にこんな立派な施設があったとは知りませんでした。都内で初めて行った施設はこの1年間だけでも、練馬区立美術館、東京都庭園美術館、府中市郷土の森博物館……とかなりの数。ほかにも、国立公文書館、NHK放送博物館、切手の博物館、大倉集古館、根津美術館、松岡美術館、三鷹の森ジブリ美術館、日本近代文学館、世田谷文学館、国営昭和記念公園、GAS MUSEUM、江戸東京たてもの園、羽村市動物公園など、行ってみたいと思っている場所は十指に余ります。それが実現するのが先か、コロナ禍の収束が先か。行手はまだ見えません。
●ただ、そんなことを思いながら過ごすようにしないと脳が老化してしまいそうなのも事実。いつ、どこに行くか。何を見るべきか。行ったついでに、どこの店で何を食べるか。安全面は大丈夫かなどと、あれこれ思いをめぐらせていると、気持ちが浮き浮きしてきます。この高揚感に脳が刺激されるのは間違いなさそうですが、今回のように不発に終わってしまうことも。予断・独断・油断にはくれぐれも要注意です。

Facebook Post: 2021-02-14T17:35:08

渋沢栄一に敬意を表しつつ、甘いものをほおばる

●聖バレンタインデーの明日からスタートする大河ドラマ「青天を衝け」。その主人公・渋沢栄一の誕生日が今日。そして昨日は、偶然にもその銅像に出くわしました。場所は日本銀行本店近くの常盤橋公園。公園といっても、首都高速の地下化や周辺一帯の再開発工事のため現在は閉鎖されており、銅像だけが残された形になっています。オリジナルは1933年に作られましたが、太平洋戦争中の金属類回収令で撤去されてしまい、戦後の1955年に再建したものなのだとか。
● はからずもタイミングよく渋沢の銅像を見られたわけですが、実を言うと、これは日本橋三越で開催中の「あんこ博覧会」のおかげ。14日が最終日だというので、混雑を避けるにはこの日しかないということで行くことにしました。会場に着いたのは午前11時だったのに、浅草・亀十のどら焼きはすでに売り切れ(浅草まで行けばあっさり手に入るのですがね)。
●それを横目に、まずは札幌名物「月寒(つきさむ)あんぱん」に大きな栗がそっくり包まれた「まるごと栗あんぱん」をゲット。続いて、福井の冬の定番スイーツ「水ようかん」。福井の水ようかんは黒糖がベースになっているため糖度が低く、保存が効きません。そこで、気温の低い冬に廊下や縁側に置いて天然保存し、それをコタツに入りながら家族で食べる習慣があるのだとか。たしかに、さっぱりした風味で、おいしくいただきました。
●もう一つ、長野県飯島町(飯田市の北)から出品されていたモンブランも購入。いちどきには食べられないので、それぞれ賞味期限のチェックは必須。渋沢栄一も甘いものが好きだったそうですが、ここまで執着はなかったかも。いちばんの好物は煮ぼうとう(生地の埼玉県深谷市で穫れる野菜をふんだんに使い、幅広[約2.5cm]で厚め[約1.5mm]の麺を生の状態から煮込んだもの)だったと言いますから、質素な食生活を送っていたのでしょう。そうでないと、あれほどの偉業は成し遂げられないような気がします。

Facebook Post: 2021-02-13T17:20:49

府中まで探梅[たんばい]ドライブ──私の「マイクロツーリズム」⑯

●とても暖か・おだやかだった先週末の2日間。家の中にいたのではもったいないと、ちょっとばかり遠出することに。思い立った瞬間コロナウィルスのことなどすっかり忘れてしまっているのが怖くはあるのですが、気がついたときはイグニッションのボタンを押していました。
●日曜日(7日)の目的地は、自宅から30分ほどの「府中の森博物館」。博物館といっても”フィールドミュージアム”で、広い敷地に江戸・明治期の建物や田んぼ、雑木林、小川、水車小屋などを配してあるユニークな施設です。もちろん、いわゆる博物館(プラネタリウムも付設)もあります。
●でも、いちばん有名なのは梅林のようで、私たちのお目当ても蝋梅(ろうばい)と早咲きの梅。どちらも可憐な花を咲かせていました。梅はまだまだこれからですが、満開になればたくさんの人が押しかけてきそうなので、ちょうどよいタイミングだったのかも。思いもかけず、福寿草にも出会えましたよ。
●府中というと、競馬場と3億円強奪事件くらいしか思い浮かばない私ですが、こんなスポットがあることを知ったのはテレビのおかげ。コロナ禍が始まってほぼ1年、家の外に出る機会が減ったぶん、テレビを見る時間がめっきり増えました。といっても、ドラマとバラエティーには興味がないので、見るのはほとんどが情報系、それも旅を扱ったものがほとんど。いつか機会があればとメモを取りながら見ているのですが、遠い場所となると、まだまだ先になりそうです。

Facebook Post: 2021-02-11T07:56:35

頭をガーンと殴られた本2冊

●この1年、本に触れる機会がめっきり増えました。東京に雪が降った日、近所のスーパーで買った北海道・厚岸(あっけし)のカキめしを温めながら読み始め、2日、恵方巻きを頬張りながら読み終えたのが「地下鉄道」(文庫版)。泣きました。200年ほど前、アメリカで黒人奴隷がどんな扱いを受けていたのかを描いた小説。昨年広く知られるようになった社会運動BLM(Black Lives Matter)の底にある人種差別の、想像を絶する根深さを改めて知り、ハンマーで頭をかち殴られたようでした。小説なので読み通せましたが、ノンフィクションだったら耐えられなかったかも。
●もう1冊は、33歳の経済&社会思想学者・斎藤幸平の力作「人新世(ひとしんせい)の資本論」。「いまさらマルクスかよ?」などと思う人も多そうですが、著者はそれに真っ向から対峙します。気候変動と環境破壊により存続の危機に瀕している人類を救うには、人々が”脱成長”という考え方に立つしかないと。
●経済的に恵まれた暮らしをしたいと思うのは人間の本能ではない、ましてそれと幸福とはイコールでもなんでもないことがよくわかります。問題は、そうした考え方を私たちが日常の中でどのように取り入れていくか。とりあえず、ガツガツしない・背伸びしない・遊びすぎないといったことくらいしか思いつきません。
●ただ、自分も含め、頭のてっぺんからつま先までドップリ資本主義につかってしまっている人がほとんどというのが現代社会。その中で、これまで当たり前と思っていたライフスタイルを変えるにはどうすればいい? まあ、70歳も過ぎたことだし、「心の欲する所に従って矩(のり)を踰(こ)えず」と言えなくもないでしょうが、「やっぱウナギはうまいなぁ。半年ぶりだし」なんて無邪気に喜んでいられなくなるかもしれません。

Facebook Post: 2021-02-04T14:56:46