音楽・スポーツが商業主義に毒されると……

●1990年、イタリアで開催されたサッカーW杯の決勝戦前夜、古代ローマの遺跡カラカラ浴場に、ルチアーノ・パヴァロッティ(故人)、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスの三大テノールが初めて勢ぞろいしたコンサートは、全世界で7億人が観たといいます。W杯では94(アメリカ)、98(フランス)、02(日本・韓国)の3大会、それ以外にも03年まで各国でコンサートを開催し大きなブームに。その一部始終を追ったドキュメンタリー映画「甦る三大テノール 永遠の歌声」を観てきました。
●初回こそ3人の心が通い合うイベントだったものの、ブームになってからはお金儲けに大きく傾いていったなどという裏話も。いまその開催で揺れている東京オリンピックも、中止の決断が下せないのは、一にも二にも商業主義の論理が強力に支配しているからでしょう。
●三大テノールの共演は、パヴァロッティの死去でピリオドを打ちました。一方オリンピックは、誰も想像していなかったパンデミックと重なり、しかもいまだ終息の見通しが立たない状況。無観客でテレビ中継だけ流すという手もあるのでしょうが、長い目で見ると、これは自分で自分の首を絞める恐れがあります。
●たとえば、ドイツのブンデスリーガは「無観客+テレビ中継のみ」のスタイルを続けた結果、これまで地元のスタジアムに通い続けてきたサポーターがどんどん減っているとのこと。選手もプレーにいまひとつ魂が入らないようです。放映権収入が入場料収入を大きく上回っているため、経営判断なのだとか。でも、これでは本末転倒という気がします。
●帰りに立ち寄ったデパートで、たまたま出店していた太宰府名物「梅ヶ枝餅」をGET。左遷された菅原道真が、食事もままならずにいるところへ、老婆が梅の枝の先に刺して餅を差し入れたことに由来する焼き菓子です。見て楽しむ花の梅も可憐ですが、“食べる梅”はさらによし。でも、これって本末転倒かな?

Facebook Post: 2021-02-18T11:04:14