青春を刻んだ店が次々と消えていく中で

●東京・神田神保町ではここ2、3年、「キッチン南海(洋食)」、「いも屋(天ぷら)」、「スヰートポーヅ(餃子)」など、昭和から続いていた店が次々クローズしています。喫茶店も「白十字」「エリカ」が閉店。学生時代ひんぱんに出入りしていたところなので、残念至極、残っているのは「神田伯剌西爾[ブラジル]」くらいでしょうか。
●そうした中、池袋東口のジュンク堂書店にほど近い洋食屋「キッチンABC」に先日お邪魔しました。創業は50年以上前なのですが、なぜか、これまで一度も訪れたことがありません。ホームページを見ると、店の売りは「味・量・値段」+「個性」。となると、メインのターゲットは学生や若いサラリーマンなのでしょう。
●店構えも昭和そのもので、いま風のおしゃれな雰囲気とはほぼ無縁。この日はたまたま、あちこち探しまわる時間がなく、いわばしょうことなしに入ったのですが、これがどうしてどうして、とんでもないヒットでした。「味」は少し濃いめ。ただ、これはこうしたタイプの店に共通するもので、問題ありません。「量」はガッツリで、いまの私には少々ヘビーでしたが、残すほどでもないという感じ。「値段」もリーズナブルでした。
●ならば、「個性」とは何かと思ったのですが、どうやら店主のさわやかなキャラクターにあったようです。「寒い中お待たせして申し訳ありません」「すぐにご案内できますよ」「またのご来店をお待ちしております」など、特段変わったフレーズではありませんが、古希を過ぎた海千山千の私でも、おやっと思うほど心がこもっているのです。私が中にいたのは30分余りですが、その間、客の出入りが止まることはなし。繁盛店のなんたるかを改めて知らされました。

Facebook Post: 2021-02-15T12:28:41