頭をガーンと殴られた本2冊

●この1年、本に触れる機会がめっきり増えました。東京に雪が降った日、近所のスーパーで買った北海道・厚岸(あっけし)のカキめしを温めながら読み始め、2日、恵方巻きを頬張りながら読み終えたのが「地下鉄道」(文庫版)。泣きました。200年ほど前、アメリカで黒人奴隷がどんな扱いを受けていたのかを描いた小説。昨年広く知られるようになった社会運動BLM(Black Lives Matter)の底にある人種差別の、想像を絶する根深さを改めて知り、ハンマーで頭をかち殴られたようでした。小説なので読み通せましたが、ノンフィクションだったら耐えられなかったかも。
●もう1冊は、33歳の経済&社会思想学者・斎藤幸平の力作「人新世(ひとしんせい)の資本論」。「いまさらマルクスかよ?」などと思う人も多そうですが、著者はそれに真っ向から対峙します。気候変動と環境破壊により存続の危機に瀕している人類を救うには、人々が”脱成長”という考え方に立つしかないと。
●経済的に恵まれた暮らしをしたいと思うのは人間の本能ではない、ましてそれと幸福とはイコールでもなんでもないことがよくわかります。問題は、そうした考え方を私たちが日常の中でどのように取り入れていくか。とりあえず、ガツガツしない・背伸びしない・遊びすぎないといったことくらいしか思いつきません。
●ただ、自分も含め、頭のてっぺんからつま先までドップリ資本主義につかってしまっている人がほとんどというのが現代社会。その中で、これまで当たり前と思っていたライフスタイルを変えるにはどうすればいい? まあ、70歳も過ぎたことだし、「心の欲する所に従って矩(のり)を踰(こ)えず」と言えなくもないでしょうが、「やっぱウナギはうまいなぁ。半年ぶりだし」なんて無邪気に喜んでいられなくなるかもしれません。

Facebook Post: 2021-02-04T14:56:46