月別アーカイブ: 2017年10月

予想以上に広く感じるクルーズ船のキャビン

2017年10月31日
2泊したドナウ河畔のホテルをチェックアウト。今日はまず、川向こうエリア=ブダ側の観光です。ブダペストに泊まっているのに、市内観光は後回しというのが面白いですね。コースは「くさり橋」を渡って「王宮」へ。ブダペストには「王宮」が三つもあるそうですが、その代表のような存在です。
IMG_2282バスを降りて「王宮」に向かう道で、あっと驚く看板に出会いました。‟「岩中の病院」博物館”という文字が大きく書かれているのです。上のほうに「HOSPITAL IN THE ROCK」とあるので、たぶん、岩の中にある病院か何かなのでしょう。とりあえず気にはなったのですが、団体行動中なので、同行している皆さんを追いかけます。聞きしに勝る素晴らしい「王宮」でした。

 

 

 

DSC03526  DSC03505

あとで、船に戻って調べてみたのですが、「岩中の病院」とは、第二次世界大戦中から使われていた軍事病院だったようです。その当時の様子(診察室、病室、レントゲン撮影室、分娩室、薬品や器具の入った棚など)をロウ人形も使いながら再現した博物館であることがわかりました。ソ連の時代には核シェルターもあったらしく、その遺産として残しておこうと言うことになったのでしょう。内部はガイドツアーを申し込んで回るようなのですが、コースの最後には広島の原爆についての展示もあるとのこと。今度ブダペストを訪れたら、ぜひ行ってみようと思いました。

 

DSC03573「王宮」の観光を終えると、ペスト側に戻り「中央市場」へ。1890年の創業といいますから、年季が違います。ハンガリーの名物はいろいろあるようですが、私たちが買ったのは、ガイドさんが教えてくれたサラミソーセージ。市場の1階はほとんど食品を扱う店で、その大半が肉屋さん。どの店先にも山と積まれ、また上から吊るしてあるのが燻製した肉とサラミ。どれを買ったらいいのか見当がつかないので、「What do you recommend?」と尋ね、「これだよ!」と店主が勧めてくれたものを買ってみました。「What’s the difference?」とたずねると、「うちの店のオリジナルなんだ」と、鼻をひくつかせながら答えてくれました。量のわりに値段が断然安かったのでダメ元という思いもありますが、たぶんおいしいでしょう。

DSC03567  DSC03569

DSC03594「中央市場」のあとは、元修道院だったという建物にある、ブダペストでも指折りの老舗レストラン「KARPATIA」でランチ。を済ませ、そのあとは再びブダ側にある「ゲッレールトの丘」へ。「王宮」からの眺めも素晴らしかったのですが、この丘の上から観るドナウ川、そこに架かるいくつもの橋、また国会議事堂や大学など、ブダペストの眺めも感動的。夕方早々にはこの日の観光を終え、「アマデウス・エレガント号」に乗り込みます。いよいよ「ドナウ川クルーズ」の始まりです。

DSC03625 DSC03613

DSC03640チェックインを済ませ、キャビンに入りました。20㎡と聞いていたので、ほとんど期待していなかったのですが、予想以上に広い印象がします。なんともコンパクトに造られているのですね。海外旅行で数日滞在するホテルとの最大の違いは、スーツケースをベッドの下に収めること。そのため、室内はゴチャゴチャした感じがまったくしません。「なるほど!」と感心してしまいました。

 

まったく知らなかったエゲルの町は感動のひと言

2017年10月30日

お昼ごろ成田を出発し、ヘルシンキ経由のフィンエアー便でハンガリーの首都ブダペストに到着したのは昨夜の9時前。今回の旅は、ワールド航空サービスという旅行会社主催の「アマデウス・エレガント号でゆく 秋色に輝くドナウ河と珠玉の町々を巡る船旅12日間」ツアーです。ハンガリーのブダペストか入り、最後はドイツのミュンヘンから帰国(途中、船には7泊)。私と家人にとっては初めての本格的な船旅で、どんな経験ができるか、けっこうドキドキもしています。

今日からさっそく観光が始まりますが、最初の目的地はブダペスト市内ではなく、エゲルという近郊の町。私自身、その名前さえ知りませんでしたが、ガイドさんの話からすると、この町はハンガリーの人たちの“心のふるさと”と言ってもよさそう。16世紀半ば、オスマントルコに攻め入られたとき、城主ドボー・イシュトヴァーンがこの町の城にたてこもりトルコを撃退したからです。さほど大きな城ではありませんが、見晴らしのいい場所に建っているのがよかったのでしょう。

DSC03407

たしかに、ここから見下ろすと、青空のもと、大小の教会を中心に、美しい色彩を放つ街並みが広がっています。その中に、なぜかミナレット(イスラム教のモスクに付随する塔)もありました。一度は撃退されたトルコですが、それから数十年後、16世紀末には結局この町を手中にした、その名残です。

DSC03419

DSC03433DSC03443

DSC03468ほかにも大学や市庁舎など、バロック様式の美しい建物が数多く残されており、シャッター押しまくりといった感じです。古い町なのにこんな大きな……と思える「ドボー・イシュトヴァーン広場」も印象的でした。市内を散策したあとは、ワインセラーが集中している「美女の谷」という名のエリアにあるレストランでランチ。店は楽しい造りで、内装にも凝っています。この地の名物「ビカヴェール(雄牛の血)」というワインもおいしく飲めました。

DSC03466 DSC03479

ツアーのメリットとデメリット──。いろいろありそうですが、その地域に詳しい、しかも熱心なプロが企画してくれる分、シロウトの私なんぞまったく知らない町や村、名所旧跡、自然景観などさまざまなスポットに行けるというのが最大のメリットではないかという気がします。

あるいは、最近流行の「こと消費」もその一つでしょう。たとえば、昨年3月、私と家人で観に行ったフィレンツェの「山車の爆発」やスペイン・タラゴナの「人間の塔」(偶数年の10月)。また、毎年2月、スイスのサンモリッツで開催される「ホワイト・ターフ(氷上競馬)」なども、格好の素材になりそう。いま現在、これらのイベントを観戦する企画を盛り込んだツアーは、私の知るかぎりでは、ありません(ひょっとすると、あるかもしれませんが)。しかし、これもあと、2、3年後には出てきておかしくない「こと」のように思えます。

夕食は市内随一の老舗レストラン「グンデル」で。格式も高いようで、エリザベス女王やローマ法王も来られたことがあるといいます。食事中はずっとクラシックの生演奏が続き、さすがという雰囲気。食事もハイレベル! この会社のツアーは、食事のクオリティーが高いというのも好評の一因だそうです。

DSC03480

IMG_2272IMG_2273IMG_2274IMG_2275

 

 

まさか高雄で本格イギリス紅茶を味わえるとは!

2017年10月17日
IMG_2226今日もまた暑そうです。朝行った港近くの「旧英国領事館」は高台にあり、建てられた当時の赤レンガ・バロック風建築のまま保存されています。かなり急な階段を昇っていくのですが、眺めは最高。何より、その2階がカフェになっており、そこで本格的な英国風の家具調度に囲まれながら本格的な紅茶を楽しめます。私たちが飲んだイギリス式のアイスティーはもう最高。高台の、それもバルコニー席ですから多少は涼しく、冷たいお茶が心も体も癒してくれました。

IMG_2228 !cid_2d17da19-5c13-4e63-b96c-667b189d11c8@apcprd04_prod_outlook

IMG_2230次に訪れたのは旧港の一角にある倉庫街で、広大な敷地に10以上の倉庫が点在しています。「駁二藝術特区」と呼ばれるエリア。倉庫の外壁はすべて昔のままで、なかには、オリジナリティーあふれる絵が描かれたものもあります。また、外にはなんともユニークな巨大オブジェも置かれていました。

 

 

DSC03345リノベーションされた建物の内部には、博物館あり、アートギャラリーあり、書店あり、雑貨店ありで、一日中楽しむこともできそう。私たちは雑貨店がいくつか入った建物をしばらくぶらぶらしましたが、日本にはない独特の品もけっこう並んでおり、そこそこ楽しめました。台湾の大型書店チェーン「誠品書店」が手がけたとのことで、「さすが」という感じです。

 

そこから少し歩いたところにある古い店で氷あずきを食べ、ホテルに戻りチェックアウト。夕刻の便で次の訪問地マカオに飛びました。高雄にかぎらず、台湾というところは、なんの変哲もない、というよりこぎたない店でもかなりおいしいものが食べられるのが大きな魅力です。その極致が夜市の屋台でしょうが、衛生面のことを考えたりすると不安もなくはありません。しかし、ハズレはほとんどありません。ほとんど、どこで、何を食べてもおいしく感じられます。しかも、値段がめっちゃ安いときているので、これほど楽しくて魅力的な国はないと言えます。

IMG_2231

DSC03349この日、昼食を食べた「美麗島駅」近くの店もそうでした。特製のスープに、自分で選んだ具材を入れてもらうシンプルなスタイルのメニューなのですが、これが素晴らしく美味。それだけではありません、店主と素晴らしい“会話”ができたのです。

実は、前日、ホテルから「鳳山龍山寺」にタクシーで行ったとき、おもしろい経験をしました。行き先を書いた紙を渡すと、それを見た運転手がやおらスマホを取り出し、信号待ちのとき何やら小声でささやいています。そして私たちに見せてくれた画面を見ると、行き先を示す日本語の文字が! そう、中国語から日本語への音声翻訳アプリなのですね。「次に行くところは決まっているか?」とか「何時ごろまで時間があるのか?」などと書かれた画面を見せてくれるので、スマホに向かって日本語で答えると、それが中国語に訳され、運転手も理解するという仕組みのようでした。

感動した家人がさっそく、そのアプリを自分のスマホにダウンロードし、今日さっそくそのレストランで試してみたのです。「何がおすすめですか?」と中国語で書かれた画面を店主に見せると、いくつかの具材を指さしてくれます。私たちもそれに従って選んだのですが、すんなりコミュニケーションできました

。帰りがけに、「とてもおいしかったです」と日本語で入力し、それが中国語に翻訳された画面を店主に見せると、もう大喜び! 以前は、コミュニケーションといっても、漢字で紙に書いて見せるだけで終わっていましたが、それだとほぼ一方通行でしかありません。しかし、この翻訳アプリのおかげで、もう一歩前に進むことができるわけで、たいそうすぐれものです。ネットで調べてみると、これと同様のアプリは世界50数カ国語も用意されているようで、これからの旅でも試してみようと思いました。

この時期でもなお暑い台湾の高雄

2017年10月16日
今日は高雄の2日目。前来たときは十分な時間がなく、市内を見て回ることができなかったので、今回はそちらに重点を置いてプランニングしました。ただ、最大の目標だった「鄧麗君(テレサ・テン)紀念文物館」は残念ながらクローズしており、ほかのスポットに変更せざるを得ません。

問題は高雄の暑さです。以前、友人から「高雄は暑い!」と聞いていたので、この時期にしてみたのですが、それでも暑さはハンパではありません。日中の最高気温は30℃を軽く超えるので、日中の街中を歩くのは大変です。それでも、市内東部にある道教の寺院に足を運んでみました。

DSC03268最初に行った「鳳山龍山寺」は台湾にある5つの龍山寺の中で二番目に古いのだとか。観世音菩薩が祀られているようで、境内にある「南雲東照」と書かれた扁額の落款から、清国乾隆帝の初期に造られたことが分かります。伝統的な寺廟の外観と工法が完全な状態で残されている貴重な存在だそうです。本堂の片隅に賽銭箱が置かれていましたが、そっくりそのまま金庫にもなっており、これには笑ってしまいました。

 

DSC03274

高雄には道教の名刹があちこちにありますが、二つ目の「鳳山天公廟」にはひっきりなしに参拝客が訪れていました。安産の神様や商売繁盛の神様が祀られているからでしょう。道教寺院の特徴は極彩色の内外装。とくに建物の内側はまばゆいばかりの金箔が隅々まで貼られ、目が痛くなるほどです。祀られている神様とゆかりの深い日には、大変な数の人が訪れ、線香を捧げながらお願い事をするにちがいありません。ここから歩いてすぐのところにあるカフェは涼めてよかったですね。

DSC03278 DSC03283

DSC03286

今回は残念ながら、「三鳳宮(350年ほど前、清・康熙帝の時代に創建された台湾最大の三太子廟)」や「内門紫竹寺」「高雄関帝廟(武廟)」「孔子廟」「旗津天后宮」などには行けませんでしたが、写真で見るかぎり、どこも皆似たような印象はまぬかれず、まあいいかと。

それと、高雄というところは、人口280万という台湾第二の大都市でありながら、観光地としてはいまひとつ垢抜けていない感じがするのです。市内を流れる「愛河」の川沿いには遊歩道や多くのカフェがあり、遊覧船も出ているのですが、何がなんでもという気にはなれません。高さ248mという「高雄85ビル」も、しょせんは「台北101」ビルの亜流といった感じがします。高雄の近くにある台南のほうが、観光地としては魅力的に受け止められているのはそのせいかもしれません。

DSC03353次に足を運んでみたのが、観光スポットとしてはやや意外な「美麗島駅」。地下鉄(=MRT)のオレンジラインとレッドラインの乗り換え駅なのですが、2012年に、アメリカの旅行サイトで「世界でもっとも美しい地下鉄の駅」の2位に選ばれたそうです。地下の広大なスペースは、4500枚ものステンドグラスが天上に隙間なく貼られたドームのような構造になっています。4年以上かけ、すべて手作業で貼られたそうで、毎日3回「光のショー」がおこなわれるとのこと。ただ、残念ながら、それに出くわすことはありませんでした。

暑いのでいったんホテルに戻って休憩したあと、高雄港近くの「寿山公園」に。港を一望できる夜景が美しいことから、地元のデートスポットとして人気だそうです。「LOVE」の文字のオブジェクトがあり、訪れた人は皆、ここで記念撮影していました。私たちはもちろん、遠慮しましたが(笑)。

DSC03306

福岡→台北→嘉義→高雄を1日で移動

2017年10月15日

昨日は昼間がルワンダ、夜がメソポタミア、そして今日は台湾です。昨日ここでご紹介した二つの催しが福岡で開催されたが故に実現した旅といっていいでしょう。福岡というところは、日本の中にあって独特の立ち位置を占めています。さまざまな魅力にあふれた都市なのですが、それとは別に交通の便がメッチャいいのです。東京に行くより上海に行くほうが早いというのがその象徴で、中国、台湾、香港、韓国といった東アジアはもちろん、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポールなど東南アジア、さらに、夏だけですがヨーロッパにも、ここから飛び立つことができます。

 

IMG_2150福岡空港で国際線を利用するのは初めてですが、国内線ターミナルとはまったく別になっていて、場所も国内線ターミナルと滑走路をはさんだ向かい側です。まだ新しいだけあって、明るくて広めなのも快適でした。ただ、完成した当時は、十分に余裕があるはずだったのでしょうが、いまとなっては若干狭い感じもします。要するに、利用する人が予想をはるかに上回るスピードで増えたということでしょう。

 

それでも、年末年始やゴールデンウイークの羽田・成田ほどは混雑していません。私たちが乗ったのはキャセイパシフィックの香港行き。ただし、台北で途中下車、いえ途中降機です。降りたのは台北でも、郊外にある桃園国際飛行場。こちらも近年どんどん整備が進んでおり、今年の春、空港から台湾高鐵(新幹線)の桃園坫(駅)まで行けるMRT(新都市交通システム)が開通したそうです。

私たちは従来から走っているバスで行きましたが、15分ほどで高鐵桃園坫に到着。そこからまず高鐵嘉義まで移動します。目的地は台北にある故宮博物院の別館・故宮南院(正式名称は「國立故宮博物院南部院區・亞洲藝術文化博物館」)。高鐵嘉義には新幹線で1時間ほど。毎度思うのですが、台湾の新幹線は外側も内側も日本(東海道・山陽新幹線)とそっくり。表示だけが中国語なのですが、それを無視してしまえば、一瞬、日本にいるような気持ちになります。

DSC03259 IMG_2153

故宮南院は高鐵嘉義の駅からバスで10分ほど。まず驚いたのはその敷地の広さです。入ってすぐのところに大きな人工の池が設けられ、その向こう岸に美術館が建っているのですが、そこまでは数百メートルほどありそうです。ゆるやかな上り坂もあるので、家人のために車イスを借りました。

IMG_2179

オープンしてまだ2年足らずですが、駐車場には観光バスがぎっしり並び、ひっきりなしに客が訪れている様子。この日は日曜日の午後とあってさほど混んではいませんでしたが、日中あるいは土曜日だったらどうかという感じがします。

 

台北の本院と違って、全体がゆったりした造りになっており、展示スペースも広いので、圧迫感がまったくありません。全体は9つに区切られていて、一つひとつ、特定のテーマに基づいて展示されています。そのため、とても観やすく、台北のように「今日はここまで」ということにはなりません。3時間もあればおそらく隅から隅まで鑑賞することができるのではないでしょうか。

IMG_2172私たちは2時間弱滞在しましたが、6つの展示室を訪れ、最後はミュージアムショップもゆったり回ることができました。台北の売りは「翠玉白菜」ですが、こちらは「肉形石」。台北とは比べものにならないほど、ゆったり、ゆっくり、じっくり、それこそ四方八方から観ることも可能です。

 

 

 

IMG_2166それとは別に興味深かったのは、中国に持ち込まれた伊万里焼の数々。また、インドやアラビア、トルコの皇帝から中国の皇帝に贈られた品々でした。どちらも初めて目にするものばかりでしたが、いわれてみれば、そうしたもの(とくに後者)が中国にあってもまったくおかしくありません。皇帝から皇帝への贈り物ですから、どれ一つとっても、まさしく贅の極みといった感じの品ばかり。今回はそのなかでもインドからの品々に焦点が当てられていましたが、台北の本院では、展示されていたとしても、ここまでゆっくり楽しむことはできないでしょう。

 

美術館の見学は、たいていの場合、荷物を預ける必要があります。ここも同じですが、そのためのコインロッカーがユニーク。どの扉にも、日本でいうなら家紋のような文様があしらわれているのです。どれも皆、由緒のあるものなのでしょうが、これは驚きました。

DSC03257

IMG_2188南院を出て再びバスで高鐵嘉義まで戻り、今日の最終目的地である高雄の左営坫(駅)へ。30分ほどで到着しましたが、途中停車するのは台南だけ。台湾の南北縦断はホント楽になりました。小腹が空いていたので駅の売店で売られていた「便當」を買い求め、二人でつまみました。これで100台湾ドル(約400円)はお値打ち! 素朴ですが、味もバッチリでした。

 

 

古代メソポタミアの人たちが食べていたのは……

2017年10月14日

今日は一日でビッグイベントが二つあるという日。場所はいずれも福岡市内でした。

最初は、私のプロデュースした単行本『ルワンダに灯った希望の光 久美子のバナナ和紙』の著者・津田久美子さんが講演される会合です。今年の3月、福岡のユニークな出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」から出版されたこの本の内容については、このブログでも前に触れたので割愛しますが、今日の会は、男女共同参画社会を作り上げようと60年も前から活動している団体が開いたもの。

IMG_2112

60年前といえば、まだ女性が社会に出て仕事をするなどということ自体が珍しがられた時代です。でも、実際はそのころからすでに、近ごろは当たり前のように言われていることを実現しようと行動していた人がいたことに驚きました。

女性が働く、社会に参画するのは、建前として理解できても、いざ自分が……と思うと、さまざまな障害が立ちはだかります。津田さんの場合も40代に入ってから、得意の英語を活かせる仕事に就いていたわけですが、それだけで終わらなかったのが、ユニークなところ。50歳を過ぎてからは、NPO法人を立ち上げ、アフリカのルワンダという国で、新しい「仕事」を生み出す活動にたずさわってきたのです。

資源もそれほど豊かなわけではない国の中で、それまでだれひとり思いもつかなかったことに取り組んだ勇気と実行力、そしてそれを実現するまであきらめない粘りには感服させられます。会合で津田さんのお話を聞かれた方々も大いに共感を覚えたようで、本を出して本当によかったと思いました。

 

夜は、すぐ近くのホテル(といっても、最近増えているホステルスタイルですが)で開かれた、最近話題の『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』という本の出版記念パーティーに参加しました。著者の遠藤雅司さんは、国際基督教大学教養学部で音楽を専攻しましたが、現在は音楽とはほとんど無関係な“歴史料理”の研究をされているとのこと。そして、初めて出されたこの本の販売促進のため、全国各地で「歴メシ」のイベントを開催しているのだそうです。

IMG_2133  IMG_E2122

今回の会をプロデュースしたAさんは、『博多学』を書くためにおこなった取材の折、ひとかたならぬお世話になった方。“おもしろがり”という部分で、彼女ほどセンスがあり、またそれを実際の形にする力に長けている人はそうそういません。そのAさんが最近とみに興味を引かれたというのがこの「歴メシ」。

 

世界各国の歴史に残されているさまざまな料理を再現するプロジェクトを「出版記念お食事会」と銘打って、Aさんの地元・福岡でもぜひ開きたいということで企画・プロデュースしたそうです。話をちょっと聞いただけで、とても面白いと思った私はすぐに参加をエントリー。ちょうど先の津田さんの講演する日と同じだったので好都合でした。

本の中身は、オリエント世界とヨーロッパ世界の8つの時代に実際に食されていた料理40品のレシピと、当時の食文化や社会背景などを解説したもの。その該博な知識もさることながら、けっして豊富にあるとは思えない資料からレシピを確定させ、それを実際に料理として作って出す努力には脱帽です。

「ヴェルサイユ宮殿の晩餐会」で出されたメニューとか、「中世イングランドの王がふだん食べていたもの」などは、なんとなくイメージできる気もしますが、この日出された「古代メソポタミア」の料理となると、ティグリス&ユーフラテスという川の名前くらいしか知らない私などにはおよそ想像もつきません。

 

この日、食したメニューは次のとおり。●かぶの煮込みスープ ●アカル(ビール風味のパン) ●メルス(古代メソポタミア風ガレット) ●レンズ豆と麦のリゾット ●古代小麦とラム肉のシチューの5品です。世界史の教科書で目にした楔形文字を解読し、そこに記されていたことから推測しながら割り出されたレシピの中には、塩・コショウを使うという記述はまったくなかったそうで、味はもっぱら、コリアンダーやらクミンといった調味料から引き出していたようです。そのため、はっきり言って、現代人の舌には物足りません。

IMG_2130  IMG_2132 IMG_2129

IMG_2146  IMG_E2148

ただ、そのことは。著者も料理の作り手も十分承知していたのでしょう。私たちの舌を満足させようと、当日はオリジナル版とともに、塩とコショウを加えた現代人向けバージョンを作って出してくれました。豆類、ナッツ、果物など、身近で入手できるあらゆる食材をさまざま工夫することで料理に変化をつけていた様子もうかがえ、貴重な経験となりました。

 

この日の参加者は40人ほどでしたが、20代・30代の人が9割。60歳を過ぎているのは数えるほどで、別段指示されたわけではありませんが、その数人がなんとなくひとところに集まった(イスが置かれていたせいもありそう)のは自然の流れでしょう。正直、メソポタミア料理に舌鼓というわけにはいきませんでしたが、同世代の方々とのお話は、軽やかに舌が回りました(笑)。

横浜・本牧の妙香寺で「君が代」の “原曲”を聴く

2017年10月9日
いま手がけている文庫版『鹿児島学』の内容に手を入れる材料を仕入れに、横浜・本牧にある妙香寺を訪れました。この地は明治時代の初め、薩摩藩が日本初の吹奏楽団(=薩摩バンド)を作ったとき、数十人の藩士がイギリス人教師の指導を受けながら練習に励んだ場所です。その指導者はジョン・ウィリアム・フェントンという人物(イギリス第10連隊第1大隊軍楽隊長)で、彼が日本の国歌「君が代」を作ったのです。いうならば、「君が代」発祥の地が妙香寺なのです。境内には、「日本吹奏楽発祥の地」「君が代発祥の地」という二つの碑も建てられていました。

IMG_2099IMG_2100

毎年1回、往時を偲んで、ここ妙香寺の本堂でその演奏会が開かれているのを知り、来てみました。私たちが知っているいまの「君が代」とはまったく違うと聞いていたので、どこがどう違うのだろうという興味もありました。こればかりは楽譜を見せられるより、自分の耳で聴いてみるのがいちばん手っ取り早いわけですし。

IMG_E2090  IMG_E2091

本堂の中には200人近い聴衆が詰めかけており、横浜市消防局の楽隊(30人ほどでしょうか)が並んでいます。プログラムを見ると、この日演奏が予定されている曲の中にフェントン版「君が代」も入っています。聴いてみて、驚きました。私たちがなじんでいる「君が代」とは似ても似つかない、まったく別の曲だからです。たしかに、イギリス人に日本語、それも古語がわからないのは当然としても、あまりに急ごしらえで作ったため、詞と曲とのととのえがきちんとなされていません。そのため、日本語の区切りと曲の進行とがシンクロしておらず、奇妙奇天烈な感じに仕上がってしまったのとでしょう。このあたりの経緯は、12月初めに刊行される新潮文庫版『鹿児島学』をお読みください。

大人も大興奮する大分の「アフリカンサファリ」

2017年10月3日
私が使っているスマホの待ち受けは3頭のキリンが顔を寄せ合っている、ユニークな写真の図柄です。大分にある「アフリカンサファリ」という動物園で獣医をしている方が、キリンを診ているときに出くわした場面を撮ったものだそうですが、なかなか見られるものではありません。キリン?の私はさっそく獣医さんのウェブサイトにアクセスし、「スマホ用」と記されていたデータをダウンロードしました。

いつかは現地に行って、3頭とはいわないまでも、キリンが顔を寄せ合っている場面を見てみたいと願っていたのですが、予想外に早くそれが実現することに。たまたま、別府でおこなわれる企業の研修会に講師として招かれたのです。せっかくの機会なので、研修会の前日か翌日、そのキリンがいる「アフリカンサファリ」に行ってみようと思い立ちました。大分なら温泉もありますし……。一石二鳥、いな三鳥ではないかと。

IMG_2058

ということで、講演の前日、早起きして羽田から大分に飛び、レンタカーで「アフリカンサファリ」を訪れました。このサファリを楽しむには2つの方法があります。自分たちが乗る車でそのまま中に入って順番に回っていくのが一つ。もう一つは、車を駐車場に止め、そこから園内を周回するバスに乗り換える方法です。

 

IMG_2019私たちはレンタカーでそのまま中に入りましたが、様子を見ていると、バスで行ったほうが動物たちの寄りつきがいいようです。バスには、エサをくれる人が多く乗っているのを動物たちなりに学習しているからでしょう。もちろん、バスについている窓は自由に開け閉めできません。しかし、エサを与えるための穴のようなものがボディーに備え付けられており、そこから手に握ったエサを与えることができるようなのです。IMG_2030

サファリの中はまず草食動物と肉食動物に分かれ、その中がまた細分化されています。トータル的には、5つか6つのゾーンがあって、お目当てのキリンは最初から3つ目のゾーンにいました。キホン、柵はないので、その気になればぐんと近づくことも可能でしょうが、車から降りてはいけないという規則を守らないわけにはいきません。多少は遠目であっても、柵のない場所で飼育されているのですから、動物たちもストレスはなさそうです。

 

IMG_2035

結局、たいした写真は撮れませんでしたが、ライオンやトラはけっこうな数がおり、それがまとまっているのを見ると、やはり新鮮な印象を受けます。1時間少々の滞在でしたが、とても楽しめました。そのあとは湯布院まで行って、温泉に。湯布院もかつてとは違いがぜん国際化しており、宿泊料金もかなる上振れしています。その中からリーズナブルな料金の宿を見つけるのは大変でしたが、なんとか上々のところを見つけました。食事もよく、十分に楽しめました。

IMG_2015

IMG_E2047