古代メソポタミアの人たちが食べていたのは……

2017年10月14日

今日は一日でビッグイベントが二つあるという日。場所はいずれも福岡市内でした。

最初は、私のプロデュースした単行本『ルワンダに灯った希望の光 久美子のバナナ和紙』の著者・津田久美子さんが講演される会合です。今年の3月、福岡のユニークな出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」から出版されたこの本の内容については、このブログでも前に触れたので割愛しますが、今日の会は、男女共同参画社会を作り上げようと60年も前から活動している団体が開いたもの。

IMG_2112

60年前といえば、まだ女性が社会に出て仕事をするなどということ自体が珍しがられた時代です。でも、実際はそのころからすでに、近ごろは当たり前のように言われていることを実現しようと行動していた人がいたことに驚きました。

女性が働く、社会に参画するのは、建前として理解できても、いざ自分が……と思うと、さまざまな障害が立ちはだかります。津田さんの場合も40代に入ってから、得意の英語を活かせる仕事に就いていたわけですが、それだけで終わらなかったのが、ユニークなところ。50歳を過ぎてからは、NPO法人を立ち上げ、アフリカのルワンダという国で、新しい「仕事」を生み出す活動にたずさわってきたのです。

資源もそれほど豊かなわけではない国の中で、それまでだれひとり思いもつかなかったことに取り組んだ勇気と実行力、そしてそれを実現するまであきらめない粘りには感服させられます。会合で津田さんのお話を聞かれた方々も大いに共感を覚えたようで、本を出して本当によかったと思いました。

 

夜は、すぐ近くのホテル(といっても、最近増えているホステルスタイルですが)で開かれた、最近話題の『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』という本の出版記念パーティーに参加しました。著者の遠藤雅司さんは、国際基督教大学教養学部で音楽を専攻しましたが、現在は音楽とはほとんど無関係な“歴史料理”の研究をされているとのこと。そして、初めて出されたこの本の販売促進のため、全国各地で「歴メシ」のイベントを開催しているのだそうです。

IMG_2133  IMG_E2122

今回の会をプロデュースしたAさんは、『博多学』を書くためにおこなった取材の折、ひとかたならぬお世話になった方。“おもしろがり”という部分で、彼女ほどセンスがあり、またそれを実際の形にする力に長けている人はそうそういません。そのAさんが最近とみに興味を引かれたというのがこの「歴メシ」。

 

世界各国の歴史に残されているさまざまな料理を再現するプロジェクトを「出版記念お食事会」と銘打って、Aさんの地元・福岡でもぜひ開きたいということで企画・プロデュースしたそうです。話をちょっと聞いただけで、とても面白いと思った私はすぐに参加をエントリー。ちょうど先の津田さんの講演する日と同じだったので好都合でした。

本の中身は、オリエント世界とヨーロッパ世界の8つの時代に実際に食されていた料理40品のレシピと、当時の食文化や社会背景などを解説したもの。その該博な知識もさることながら、けっして豊富にあるとは思えない資料からレシピを確定させ、それを実際に料理として作って出す努力には脱帽です。

「ヴェルサイユ宮殿の晩餐会」で出されたメニューとか、「中世イングランドの王がふだん食べていたもの」などは、なんとなくイメージできる気もしますが、この日出された「古代メソポタミア」の料理となると、ティグリス&ユーフラテスという川の名前くらいしか知らない私などにはおよそ想像もつきません。

 

この日、食したメニューは次のとおり。●かぶの煮込みスープ ●アカル(ビール風味のパン) ●メルス(古代メソポタミア風ガレット) ●レンズ豆と麦のリゾット ●古代小麦とラム肉のシチューの5品です。世界史の教科書で目にした楔形文字を解読し、そこに記されていたことから推測しながら割り出されたレシピの中には、塩・コショウを使うという記述はまったくなかったそうで、味はもっぱら、コリアンダーやらクミンといった調味料から引き出していたようです。そのため、はっきり言って、現代人の舌には物足りません。

IMG_2130  IMG_2132 IMG_2129

IMG_2146  IMG_E2148

ただ、そのことは。著者も料理の作り手も十分承知していたのでしょう。私たちの舌を満足させようと、当日はオリジナル版とともに、塩とコショウを加えた現代人向けバージョンを作って出してくれました。豆類、ナッツ、果物など、身近で入手できるあらゆる食材をさまざま工夫することで料理に変化をつけていた様子もうかがえ、貴重な経験となりました。

 

この日の参加者は40人ほどでしたが、20代・30代の人が9割。60歳を過ぎているのは数えるほどで、別段指示されたわけではありませんが、その数人がなんとなくひとところに集まった(イスが置かれていたせいもありそう)のは自然の流れでしょう。正直、メソポタミア料理に舌鼓というわけにはいきませんでしたが、同世代の方々とのお話は、軽やかに舌が回りました(笑)。