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横浜・本牧の妙香寺で「君が代」の “原曲”を聴く

2017年10月9日
いま手がけている文庫版『鹿児島学』の内容に手を入れる材料を仕入れに、横浜・本牧にある妙香寺を訪れました。この地は明治時代の初め、薩摩藩が日本初の吹奏楽団(=薩摩バンド)を作ったとき、数十人の藩士がイギリス人教師の指導を受けながら練習に励んだ場所です。その指導者はジョン・ウィリアム・フェントンという人物(イギリス第10連隊第1大隊軍楽隊長)で、彼が日本の国歌「君が代」を作ったのです。いうならば、「君が代」発祥の地が妙香寺なのです。境内には、「日本吹奏楽発祥の地」「君が代発祥の地」という二つの碑も建てられていました。

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毎年1回、往時を偲んで、ここ妙香寺の本堂でその演奏会が開かれているのを知り、来てみました。私たちが知っているいまの「君が代」とはまったく違うと聞いていたので、どこがどう違うのだろうという興味もありました。こればかりは楽譜を見せられるより、自分の耳で聴いてみるのがいちばん手っ取り早いわけですし。

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本堂の中には200人近い聴衆が詰めかけており、横浜市消防局の楽隊(30人ほどでしょうか)が並んでいます。プログラムを見ると、この日演奏が予定されている曲の中にフェントン版「君が代」も入っています。聴いてみて、驚きました。私たちがなじんでいる「君が代」とは似ても似つかない、まったく別の曲だからです。たしかに、イギリス人に日本語、それも古語がわからないのは当然としても、あまりに急ごしらえで作ったため、詞と曲とのととのえがきちんとなされていません。そのため、日本語の区切りと曲の進行とがシンクロしておらず、奇妙奇天烈な感じに仕上がってしまったのとでしょう。このあたりの経緯は、12月初めに刊行される新潮文庫版『鹿児島学』をお読みください。