月別アーカイブ: 2021年12月

よい本に出会えたのもコロナ禍のおかげ!?

●今年の最後は「53年ぶり」というお話。NHK大河ドラマを、なんと全回観たのです。録画も2、3回ありましたが、それ以外はすべてリアルタイム。全回観たのは高校2年のとき、1968年の『竜馬がゆく』以来です。今年はコロナ禍で自宅にいる日・時間がいかに多く、長かったかの証でしょうね。53年前竜馬を演じた北大路欣也が今回、徳川家康としてイントロの語り役で登場しているのを見て、自分の年齢を改めて実感しました。
●さて、今年最大の喜びは、ここ数年来でいちばん多くの本を読めたこと。年頭に読んだ『人新世の「資本論」』の衝撃たるや、ここ何年かで最強でした。『資本論』はNHKEテレ『100分de名著』の素材にもなりましたが、著者の言う「3.5%」の意識ある人の一人になりたいものです。
●”マイベスト2”は、プロ野球中日ドラゴンズの指揮を執った落合博満の8年間を描いたドキュメンタリー『嫌われた監督』。落合自身の姿勢もさることながら、駆け出しの記者から落合とともに力をつけていく著者・鈴木忠平の変わりようが強く印象に残りました。”ベスト3″は『中国料理の世界史』。世界のどこに行っても中華料理店がないということはまずありませんが、その理由がよくわかりました。
●あと数時間で新しい年がやってきます。29日はお墓参り、昨日・今日は大掃除。今夜はN響の第九をゆっくり聴き、テレ東の『孤独のグルメ』を楽しんで寝むことにしましょう。1年間ご愛読、ありがとうございました。どうかよいお年を!(2021/12/31)

Facebook Post: 2021-12-31T16:27:58

宇治で人生初の普茶料理を経験

●京都のレポートもこれが最後。スキップしてもよかったのですが、初めて体験した「普茶[ふちゃ]料理」のことをぜひお伝えしたいと思いまして。ツアー3日目の12月14日は京都市の南にある宇治市へ。宇治といえばお茶と源氏物語、あとは平等院でしょうか。今回訪れたのは宇治上[がみ]神社&宇治神社、平等院鳳凰堂、萬福寺の4カ所です。
●なかでも興味深かったのは黄檗[おうばく]宗大本山萬福寺。黄檗宗は禅宗の一派ですが、日本に伝えられたのがもっとも遅かったため、寺院、檀徒とも非常に少ないようです。ちなみに、母の実家は山口県萩市にある黄檗宗東光寺(戦国期中国地方全域を支配していた毛利氏の菩提寺)の檀家でした。
●萬福寺の境内は、左右対称に配置された堂宇伽藍がすべて屋根付きの回廊でつながっています。「卍くずし」の装飾をほどこした勾欄、アーチ形の天井、円形の窓、桃の実の形をした飾りが彫られた扉など、中国風のデザイン、技法が多用され、異国情緒満点。僧侶の読経も中国語なのだとか。
●その萬福寺で供されるのが「普茶[ふちゃ]料理」。見学に訪れた者も、希望すれば食べることができます。精進料理なので肉類は皆無ですが、ゴマ油を使った揚げ物の多いこと。メニューで「油糍[ゆじ]」に分類されている10品+数品、全体のほぼ半分がそれで、いまの唐揚げの起源とも言われています。肉や魚に擬した「もどき」料理も特徴で、胡麻豆腐は白身魚の刺身のよう。途中でギブアップした家人をよそに、私は完食。食べられる場は、全国的でも数えるほどしかないだけに、貴重な経験でした。(2021/12/14)

Facebook Post: 2021-12-24T22:30:41

おいしい食べ物屋は自力で見つけるのがいちばん

●京都ツアーの6日目は終日フリー。テレビなどでよく伝えられる将棋のタイトル戦の会場を初めてナマで見ました。「竜王戦」の第2局(豊島将之竜王vs藤井聡太三冠=この時点で)がおこなわれた仁和寺[にんなじ]の宸殿[しんでん]です。とんでもなく広い部屋で、しつらえもハンパありません。それもそのはず、宸殿とは天皇がお寝みになる場所のこと。
●仁和寺は世界遺産ですが、高校の古典で習った『徒然草』に登場していたのを覚えているくらいです。平安時代半ばから宇多法皇が寺の敷地内に「御室(おむろ)」を造営、日々を過ごされたことから、「御室御所」と呼ばれるようになったといいます。以来天皇家との関わりが深く、格式も高い寺なのだとか。広い境内には庭園や国宝・重要文化財の建物がいくつもあり、さすがという感じです。
●この日は、仁和寺見学のあと四条烏丸近くの京料理店でランチ。夕方から気温が下がり雨もパラつき始めたので、早々にホテルに戻りました。夕食は近くで簡単に済ませようと、向かいのそば屋に。ごくフツーの店構えなのですが、何かしらピンと来るものがあったからです。体を温めようと注文した鍋焼きうどんは関西風というか、昆布で出汁がとってあり、鶏肉がいっぱい。 おいしくいただきました。
●近ごろはグルメ情報があふれていますが、店の数が少ない地方の町ならいざ知らず、大都市ではあまりアテになりません。むしろ自分で歩いて探すほうが面白いですし、結果にも納得が行きます。その点、このそば屋はヒットでした。町歩きや旅の大きな楽しみと言えるでしょう。(2021/12/17)

Facebook Post: 2021-12-23T13:35:52

京都で見つけた名古屋の”飛び地”

●話は前後しますが、京都の4日目(12/15)は終日完全フリーでした。実を言うと、今回のツアーで最大の魅力はこれ。ツアーといえば、出発から解散まで、添乗員の掲げる小旗のもと完全団体行動というのが常識です。旅先でそんな一団に出くわすと、「ああまでして……」と、これまでは正直思っていました。
●ただ、歳を重ねるにつれ、悔しいことに、スーツケースの重さが体にこたえるように。でも、ツアーだと自力で運ばなくてもいいのです。一度その恩恵にあずかってしまうと、もういけません。以来、海外旅行も3回に2回はツアーで参加しています。それでも、根が団体行動嫌いなので、個人で動ける比率が高い今回のようなスケジュールはとても好都合です。
●というわけで、この日は蓮華王院三十三間堂へ。金色の千手[せんじゅ]観音が1001体ずらり並んでいるのはやはり壮観です。その向かいにある国立博物館、豊国神社、方広寺、東側の妙法院、智積[ちしゃく]院まで含めた広大な地に、奈良のそれをしのぐ大仏を建立させたのは豊臣秀吉。大仏殿はいま豊国神社が建っているあたりにあり、全国から参拝客が訪れたといいます。
●その後大仏は地震や火災に遭い、そのたびに再建されたものの、1973年の火事で完全に消滅。方広寺には例の「国家安康」の文字を刻んだ巨大な鐘もありました。「家」と「康」が切り離されているのはけしからんと家康が怒り、大坂の陣につながったという話で有名な鐘です。豊国神社には秀吉が祀られており、この一帯はさながら名古屋の”飛び地”状態でした。(2021/12/16)

Facebook Post: 2021-12-21T16:01:42

通りを一本、山ひとつ越えただけで……

●今日は東京に戻る日。前夜から今朝にかけ雪との予報でしたが、ホテルのある二条通り周辺は軽くパラついた程度。でも、タクシーの運転手さんによると、京都では丸太町通りを越えて北に行くと大きく変わるそうです。実際、金閣寺はうっすら雪化粧、大原や貴船[きぶね]あたりではかなりの積雪があったといいます。
●午前中出かけた青蓮[しょうれん]院、知恩院、円山公園は前夜の風で晴れわたっていましたが、京都駅を出て山科のトンネルを抜け滋賀県に入ると白一色。空もどんより曇り、すっかり別世界です。それが関ヶ原を過ぎると一転、再び青空が。三河安城あたりでは、妙に横長の雲が地上すれすれの高さに這っていたり。目まぐるしい空の変化に、弁当もゆっくり食べていられません。
●弁当といえば、今日は久しぶりに大阪・水了軒の八角弁当。13〜14種のおかずが隙間なく収まり最後まで楽しめる、駅弁の傑作。以前は大阪出張というと、これが楽しみでたまりませんでした。京都駅でもそれが売られているのを知ったのはつい最近。今回は京都での乗車時刻がランチタイムと重なり、一も二もなくゲットしました。
●1週間で20カ所近いスポットを訪れた今回のツアーですが、最後の長楽館は出色。もともとは、明治期にタバコの製造販売で大成功を収めた村井吉兵衛が円山公園近くに建てた別荘なのですが、いまは高級ホテル&レストランに。せめてお茶でもと、訪れてみました。ただ、タバコ王が作った建物なのに「全館禁煙」とは。村井もあの世で苦笑いしているかもしれません。(2021/12/18)

Facebook Post: 2021-12-18T18:10:12

京都・嵐山のイルミネーション━━でも、人が多すぎ

●ブリュッセルの小便小僧、コペンハーゲンの人魚像、シンガポールのマーライオンといえば、”世界観光名所の三大ガックリ”。有名なわりに、行ってみると大したことがないと。それになぞらえて言うなら、嵐山は”京都三大ガックリ”にノミネートしていいかもしれません。そのココロは、ちょっとお茶でもと思っても、”おとな”向けの店がほとんど見当たらないのです。
●嵐山は京都でも一、二を争う人気スポット。渡月橋、天龍寺、化野[あだしの]念仏寺、常寂光寺、二尊院、祇王寺、落柿舎[らくししゃ]、大河内山荘、竹林の径[みち]……と、観光資源には事欠きません。何もしなくてもお客━━といっても、若い人とインバウンドがほとんど━━がやってくるので、それに甘んじていられるのでしょう。
●そのため、半世紀以上前と同じとしか思えないような、いかにも団体向けのレストハウスや土産物屋、あとは東京・原宿の竹下通りなどによくある風の雑貨屋や飲食店が軒を並べています。そうした中を歩いてようやく見つけたコーヒーショップTully’s に入ったところ、私たちのような者のたまり場といった感が。
●滞在4日目(12/15)の夜、今年で最後というので「花灯路」に足を運んでみたのですが、平日にもかかわらず大変な人出。押し合いへし合いしながら竹林のライトアップにスマホのカメラを向けてみたものの、疲れました。家人に言わせると、「竹はやっぱり昼間がいい」。なるほどそうかもしれません。先週自宅近くの竹林を歩きましたが、心の癒やされ度はそちらのほうが高かったような気がします。(2021/12/15)

Facebook Post: 2021-12-17T08:50:47

初めて訪れた南山城の3カ寺

●今回泊まっているのは二条城近くのビジネスホテルで、部屋の広さは20㎡=7畳弱。そこに家人と2人ですから、「暮らすような旅 京都長期滞在7日間」というツアータイトルが泣きそうな狭さです。もっとも、部屋でゆっくりしているより外に出たほうがいいと捉えれば、ふだんどおり。場所が京都に変わっただけで、私にとっては「暮らすような旅」ではあります(笑)。
●2日目(12/13)は、南山城エリアの古寺3カ所を訪ねました。現在の京都府は旧山城国・丹波国・丹後国東部という3つのエリアから成っており、旧山城国のうち京都市以外が南山城。ホテルから南へバスで20分も走ると、伏見区の南部あたりからにわかに田園風景が広がってきます。昔はこのあたりに湖と言ってもいいくらい大きな池があり、太平洋戦争前に埋め立てられのだとか。住むには不向きなのでしょう、いまでもほとんどが田んぼのままです。
●そのさらに南側、京田辺市・木津川市にある観音寺、蟹満[かにまん]寺、浄瑠璃寺が目的地。どの寺も住職みずからその来歴や概要を語ってくださるなど、ツアーならではのメリットを味わえました。なかでも浄瑠璃寺は、いかにも女性好みといった感じで、ほかの2カ寺に比べ、訪れる客も多いようです。つい先日行った称名寺@金沢文庫と同じく浄土庭園が特徴です。仏堂の前面に蓮池を配置し、池の手前を此岸(現世)、仏堂の側を彼岸(極楽浄土=死後の世界)になぞらえた独特のスタイルが浄土庭園の特徴。
●今日の観光は南山城の3カ寺だけなので、午後1時過ぎにはホテルに戻りました。近くのイタリアンで昼食を済ませ、三条通り商店街へ。長さ800mの両側に昭和レトロ風の店がびっしり建ち並び、地元の人たちに長く親しまれているようです。キラキラ・ピカピカとは無縁のこういう場所を歩きくと気持ちもなごみ、まさに「暮らすような」感じ。充実した一日を過ごせました。(2021/12/13)

Facebook Post: 2021-12-15T21:48:26

上白石萌音のおかげで、久しぶりにドラマを堪能

●今日(12/12)から京都に来ています。東京駅を出て、富士山が見えるあたりまでは元気いっぱいでしたが、それから先は京都までほぼ白河夜船状態。前日(12/11)テレビを見過ぎたからです。もともとこの日は、上映時間274分(!)というチョー長尺の映画『ボストン市庁舎』を観に行こうと決めていたのですが、朝刊のテレビ欄を見て、即あきらめました。おもしろそうな番組が5本もあったからです。こちらは合わせて6時間半で、そこへさらに5時間近い映画を加えるのは、体力的にも無理だろうと。
●テレビのほうは、『あの日あの時あの番組 太平洋戦争80年▽日本人はなぜ戦争へと向かったか』『伝説のお笑い講師登場』『この道わが旅 すぎやまこういち音楽の旅路を』『ブラタモリ 南紀白浜 “一大リゾート”への道のりとは!?』ドラマ『忠臣蔵狂詩曲(ラプソディー)No.5 中村仲蔵出世階段[しゅっせのきざはし]』の5本。最初の4本がNHK、ドラマもNHKBSプレミアムでした。
● 民放をほとんど観なくなってから、もう10年以上経つでしょうか。コロナ禍が始まってからは、『羽鳥慎一モーニングショー』をほぼ毎日観ていましたが、今年9月以降はパッタリ。最近はNHKオンリーと言っても過言ではありません。
●それにしても、『忠臣蔵〜』(後半)はなんとも痛快なドラマでした。予定調和の極致と言ってしまえばそれまでですが、そこに至る”階段[きざはし]”=ストーリーメイクの巧みさ。キャスティングも、主人公の中村仲蔵を演じた勘九郎に加え、七之助、市村正親、高嶋政宏、段田安則と秀抜でした。なかでも、仲蔵の妻を演じた上白石萌音の非凡さといったら。デビュー作『舞妓はレディ』(2014年)で日本アカデミー賞新人俳優賞。京都旅の初日、東寺で持たれたオリエンテーションの余興で登場した本物の舞妓さんも真っ青でしょう。(2021/12/12)

Facebook Post: 2021-12-13T20:14:11

涸[か]れない・尽きない・止まらない━━和田誠の生命力はどこから?

ここのところ長尺の投稿が続いたせいか、いささか疲れ気味。そこで、今回はあっさりと。
2年前に亡くなった和田誠の展覧会に行ってきました。学生時代吸っていたハイライトのパッケージデザイン、イラスト、ポスターなど、どの作品も都会的な、それでいて押しつけがましさのない線使い、透明感に満ちた色使いがとても印象的です。映画監督、雑誌編集も手がけ、著書も200点以上と、まさしくマルチプレーヤー。それも83歳までですから、驚くべき生命力としか言いようがありません。「疲れ気味」などと弱音を吐いているのが恥ずかしくなります。(2021/12/9)

Facebook Post: 2021-12-09T20:28:34

男7人で抹茶をいただきながら紅葉を楽しむ

●東京の紅葉スポットで今年も断トツの人気なのが、神宮外苑のイチョウ。広い道の両サイドにまぶしいほど黄色い葉に覆われた高い木々が並び立ち、奥にはレトロモダンな絵画館と、舞台装置も抜群とくれば、それも当然でしょう。週末ともなれば人であふれ返っているようです。
●前回お伝えした「横浜・鎌倉ウォーキング」は、土日にもかかわらずそうした喧騒とは無縁で、紅葉をゆったりと楽しめました。朝比奈の切り通しを歩き抜き、十二社[じゅうにそう]近くの蕎麦屋でランチを済ませると、後半最初の目的地・浄妙寺へ。境内は黄色いイチョウと赤いモミジが織りなす「秋」が全開。枯山水の庭、水琴窟[すいきんくつ]を楽しみながら茶屋で抹茶をいただいたり。70歳過ぎの男7人がずらっと並んで茶碗を回す姿は”壮観”でした。
●次は、竹林で有名な報国寺。山門を出たところに水仙と万両が遠慮がちに咲いているのを発見、お正月が近いのを感じます。鶴岡八幡宮に着いたのは3時過ぎ。数年前同じメンバーで流鏑馬[やぶさめ]を楽しんだ参道から、源義経を祀る白旗[しらはた]神社を抜けると本宮。七五三の参詣客でそこそこ混み合ってはいましたが、密までは行っていません。
●鶴岡八幡宮を出て段葛[だんかずら]を一路鎌倉駅へ。大船までは2駅で、改札を出るのももどかしく、忘年会で予約している居酒屋へ急ぎます。開店して半年も経っていない店ですがたいそうな人気で、私たちの盛り上がりも最高潮。メンバーの一人が保有する江ノ島の”研修ハウス”に着くと、その彼がプロデュースしたテレビドラマがちょうど始まるところ。テレビの前に全員がすわり、当人の解説を聞きながら、1時間半楽しみました。(2021/12/5)

Facebook Post: 2021-12-08T11:57:07

エサがないと体が動かない? 高校同期7人で切り通しを踏破

●高校同期の仲間が集まり、1泊2日の「社会見学(今回は自然探索もプラス)」を楽しみました。コロナ禍で長らく中断していたのですが、先週末およそ2年半ぶりで実現。今回のコースは、金沢文庫から朝比奈切り通しを経て鶴岡八幡宮という長丁場。全行程12kmのほとんどが歩きという設定で、70・71歳の男7人にとってけっして楽とは言えません。それでも、終わったあとの忘年会を楽しみに、まあ歩いたこと。スマホの万歩計には、24000という驚異的な数字が出ていました。
●京浜急行金沢文庫駅に集合し、最初に訪れたのは称名寺[しょうみょうじ]。称名寺は、執権・北条時頼、時宗の補佐役でもあった北条実時が屋敷内に建てた持仏堂が起源です。朱塗りの赤門をくぐり参道を抜けると仁王門が建ち、高さ4mの仁王像が二体。背後には「浄土」になぞらえた立派な庭園が広がります。ボランティアガイドに案内され歴史を学びながら、紅葉も楽しみました。
●金沢文庫のほうは建物だけ見て終わり。モノレールで金沢八景まで移動し、バスで朝比奈へ。ここから十二所[じゅうにそう]までの1.5kmが切り通しになっています。切り通しとは、山を切り開き人や馬が通れるようにした道のこと。高さ10mはあろうかという崖にはさまれた未舗装の道の幅は4mほどで、側溝の水があふれぬかるんでいる箇所も。都会の商店街を歩くのとはわけが違います。
●足もとに不安をかかえている仲間もおり、踏破するのに小一時間ほどかかりましたが、快晴の空の下、せせらぎ(といっても側溝ですが)を流れる水の心地よい音に足の疲れも癒されます。高周波・超高周波が重なり合って生まれるハイレゾな自然音はやはりたいしたものですね。◇つづく◇(2021/12/5)

Facebook Post: 2021-12-07T12:27:41

奈良の旅⑤妙にとがっておらず、落ち着ける町・奈良

●奈良公園近くの道路上に、「鹿に注意」書かれた表示を見つけたときは驚きました。たしかに、その一帯を歩くと、数え切れないほど多くの鹿と出会います。鹿をホルンで呼び寄せる「鹿寄せ」という伝統行事があるそうですが、ホルンのお世話にならずとも、煎餅を見せるだけで10頭以上は近寄ってきます。煎餅をやると頭を下げるなどというのは、鹿にも古都奈良の余裕が乗り移っているとしか思えません。都としてのキャリアは奈良のほうが京都より上。とがったところがなく、町の隅々まで大人っぽい落ち着きがただよっているのです。
●そんな奈良でいま熱いのは「ならまち」エリア。古民家が建ち並ぶ中にいかにも”インスタアップされ狙い”風のお店が増えているようです。それでもまだ京都ほどではないので、心配は無用(笑)。前回取り上げた老舗の和菓子店もその一角にありました。
●今回私たちが2泊した奈良ホテルは「ならまち」の近くにある、いわゆるクラシックホテル。近ごろ流行りのデザイナー風のたたずまい・しつらえではありませんが、高齢の身にはそのほうがくつろげるように思えます。部屋の窓から興福寺五重塔が見える部屋もあるようで、それだけで”奈良にいる感”が堪能できそう。ただ、来年4月から長期の修復工事に入ると、それがかなわなくなりますが……。
●今回の旅では奈良の主なスポットを訪れましたが、小学校の修学旅行で行ったきりの春日大社をじっくり見て回りたかったですね。奈良の余裕・落ち着きを象徴するスポットではないかという気がするからです。それと、冥土の土産にぜひと思っているのが吉野山の桜。まだまだ欲は尽きないなぁと思いつつ帰路へ。我が町・東久留米が真っ赤な富士でお出迎えしてくれました。(2021/12/2)

Facebook Post: 2021-12-03T22:02:28

奈良の旅④60年ぶりで訪れた東大寺大仏殿

●奈良の定番観光スポットといえば東大寺大仏殿、春日大社、興福寺五重塔、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡と言ったところでしょうか。60年前、小学校6年生の修学旅行で訪れたときも最初の三つでした。東大寺自体は、3年前にも訪れていますが、そのときは二月堂のお水取りを見ただけです。夜の行事ということもあり、見た場所もほんの一部。しかし、今回は朝の見学で、二月堂の上階までのぼり隅々まで見て回れたので、お水取りのすさまじさが実感できました。大仏殿でも、大仏の表情や巨大な建物の構造上の秘密などの解説を聞け、大人的な興味が大いに満たされた次第。
●その前、朝8時過ぎから興福寺国宝館へ。開館前に入り、貸し切り状態で僧侶の詳しい解説が聞けました。そこで知ったのが、東大寺も興福寺も、ある意味特別な寺院であること。両寺に元興寺[がんごうじ]、大安寺、西大寺、薬師寺、法隆寺を加えた「南都[なんと]七大寺」は朝廷の保護を受けていたため檀徒が不要(=寺の維持にエネルギーを費やす必要がない)、仏教を学ぶためだけの場だったのですね。
●そのうちの一つ元興寺がホテルのすぐ近くにあるので、足を運んでみました。ところが、かつては広大な寺域を誇り、国宝が二つ、重要文化財が五つもあるというのにいまは人影もまばら。なんでこれほどまでに廃れてしまったのかと深い疑問が湧いてきます。
●「旅をすれば感覚が研ぎ澄まされ……今まで無関心だったことにも、不意に何かを感じるようになる」とは、スウェーデンの作家ペール・アンデションの言ですが、今回の奈良の旅はまさにそうなっています。もちろん、これまで関心を抱いていた物への感度も大幅アップ。帰りに立ち寄った店で食べた「葛餅2種+求肥+餡」はいつになく美味でした。(2021/11/30)

Facebook Post: 2021-12-02T19:50:26

奈良の旅③法隆寺 見れば柿より うなぎかな

●3日目のメインは法隆寺ですが、その前に、橿原市内の今井町を訪れました。戦国期から、のちに称念寺となる御坊を中心に発達した寺内[じない]町で、周囲を堀で囲み、部外者の干渉を許さなかった自治都市。安土桃山時代・江戸時代には、「海の堺、陸の今井」「大和の金は今井に七分」と言われるほど、繁栄を謳歌したそうです。
●今井町は東西約600m、南北約310mで、面積は17.4haほど。重要伝統的建造物群保存地区にも選定されていて、域内760戸のうち3分の2が伝統的建造物。一地区内の数としては日本一だそうです。電柱・電線の完全な地中化も進んでおり、”歴史的町並みファンにとっては垂涎の的かもしれません。
●午後は斑鳩[いかるが]の里・法隆寺へ。今回が2回目ですが、資格を持ったガイドさんがつきっきりで説明してくれるので、そのすごさがよくわかりました。━━五重塔が実は一階建てで、真ん中に立つ一本の芯柱で全体を支える免震構造になっている。東京スカイツリーもそれにヒントを得て作られた。日本でいちばん多くの国宝(38点)を持つ寺である等々。まあ、そうしたことを知らずとも、1300年前に建てられた世界最古の木造建築物だというだけで十分ではあるのですが。
●ただ、この日いちばんの感動は夕食のうなぎ。蒲焼きと白焼きをいっぺんに味わえる「あい乗せ重」なるものをいただきました。こんな食べ方は初めてです。場所は興福寺に近い料亭「菊水楼」。皇族の方も来られるくらい格式が高いというのでビビりましたが、うなぎを供する「うな菊」はその脇にある別棟ですし、店員もツナギのユニフォーム姿だったので、普通に食べられました。値段も平均的ですし、奈良に行かれた際はぜひお試しあれ。(2021/11/29)

Facebook Post: 2021-12-01T18:32:48