月別アーカイブ: 2016年4月

観ましたーーっ! 『ハミルトン』

2016年4月30日
今回のアメリカ旅行の目玉はブロードウェーのミュージカル『ハミルトン』です。
タイトルにもなっている(アレクサンダー・)ハミルトンはアメリカの初代財務長官で、いま出回っている10ドル紙幣の肖像にもなっている人物です。その生涯を描いた作品なのですが、これがいま大変な人気だという話を聞いたのは3カ月ほど前のこと。

25年間通っている池袋のお寿司屋さんのカウンターでたまたま隣り合わせた方から教えてもらったのですが、「チケットは何カ月も先の分まで売り切れで、出回っているのはリセール(転売)のものだけ」とのこと。まずまずの席でも800ドル以上(!!)出さないと買えないといいます。仕事柄、30年近くブロードウェーに足を運んでは数々の作品を観てきているその方のおすすめとあっては、私たちも観ないわけにはいかないでしょう。

家に帰りさっそくネットで調べてみると、話のとおり、通常のチケットは1枚もありません。いくつかの業者が手がけているリセールチケットだけで、なかには2000ドルを越えるものまでありました。これでトニー賞なんぞ受賞したらもっとひどいことになりそうだと思い、ひと晩でニューヨーク行きの計画を立ててしまったのです。航空券の空き状況や値段をチェックした上で、リセールチケットのサイトをいくつか見ながら、「これなら」というものを探し当て、なんとか買い求めることができました。

Photo

Dsc00340そして、今日がその日。土曜日の日中とあってタイムズスクエア周辺は大変な人出です。『ハミルトン』が上演されているリチャード・ロジャース劇場の前には、開演1時間以上前だというのに、長い行列ができていました。全席指定なので、早く行ったからいい席にすわれるわけでもなんでもないのですが、やはり気持ちがはやるのでしょうね。あとで聞いて知ったのですが、毎回、20枚ほど当日券が売り出され、その抽選に当たると、10ドルで観られるのだそうです。それを目ざして並んでいた人もいたにちがいありません。

Dsc00344劇場自体は古めかしく、それに狭いものですから、階段を昇っていくのも大変です。私たちがなんとか手に入れた席は2階バルコニー席の前から3、4列目あたりでまずまずでした。しかし、高校生のグループもいれば親子連れもいるといった具合で、これまでのブロードウェー・ミュージカルとはだいぶ様子が違う感じがします。それだけ幅広い客層に支持されている(=大ヒットしている)ということなのでしょう。その理由はやはり、作品のユニークさにあるようです。

何が違うのかというと、この『ハミルトン』、台詞(=歌)がすべてラップになっているのです。そのため、台詞の文字量が普通のミュージカルのほぼ倍だとかで、役者も大変なのではないでしょうか。また、作品を企画し、台本を書き、なおかつ主役まですべて同じ人(=リン・マニュエル・ミランダ)だというのも話題を呼んでいるようです。」しかも、そのミランダは主人公ハミルトンと同じプエルトリコからの移民。アメリカが独立を勝ち取り、憲法を制定しようとしていた当時の話で、内容はけっして甘いものではありません。もちろん、女性も登場はしますが、メインのテーマはどちらかといえば"お堅い系"です。ただ、それがラップ仕立てになっているのがミソなのでしょう。舞台に出ているのもほとんどが移民の役者ですから、ある意味リアリティーもあります。

それと、音楽が素晴らしかったですね。昨年のグラミー賞を受賞しているといいますから、それも納得です。私たちもそれだけは同感。というより、台詞のほうはラップなものですから、正直、ほとんど聞き取れずじまいだったこともあります。あらあらのストーリーは予習していきましたが、やはりそれだけでは……という感じでした。ただ、トニー賞(6月に発表される)を取れば、いまよりもっとプレミアがつき、チケットも取りにくくなるのではないでしょうか。その前に観られたということでよしとしなくてはいけませんね。

初乗り運賃さえ下げればOKなのか?

2016年4月5日
「あっ、そこで止めてください」と運転手に声をかけた瞬間、メーターが1000円から1090円に。東京でタクシーに乗っているとよく経験するできごとです。ポケットにしまった財布をまた取り出し、100円玉を1つ付け足して払うハメにおちいるのですが、それより何より不愉快なのはメーターの刻みが「90円」と大きいことです。「だから、タクシーはイヤなんだよなぁ」。これがかりに「20円」とか「30円」だったら、そういう気分にはなりません。

今朝の朝日新聞1面、それもトップに、「タクシー初乗り、東京400円台も 距離縮め、来春にも」という記事が出ていました。「2キロ730円」という現在の初乗り料金を、「1キロ強で400円台」に下げ、「高齢者や子連れ客らに、買い物などの近距離でも気軽に乗ってもらう」ようにするためだそうです。

初乗りが下がれば乗りやすくなるのは間違いありません。歩いて13~14分を超えるかどうかがタクシーに乗る・乗らないの目安になるのも、経験上わかります。雨でも降っていればいいところ10分でしょう。しかし、これだけがタクシーに乗る決め手なのかというと、違います。私はむしろ、初乗り距離を過ぎてから加算されていく金額の幅がけっこう影響すると思っているからです。

東京のタクシー業者にこうした感覚がないのはなんとも不思議な気がします。先日、ミラノでタクシーに乗ったとき、なんと10セント単位で上がっていくのを経験しました。10セントといえば13円です。これほど少額の刻み幅は私にとっても初めての経験です。もちろん、13円ですから距離は短いですよ。ただ、メーターが上がっていってもそれほど気になりません。まして、血圧が上がったりイライラしたりすることなど一切ありません。

ロンドンなど、初乗り運賃の実質は東京の約4倍です。これをもとに「いや、東京のほうが断然安い」といわれれば、たしかにそのとおりかもしれません。でも、その後の加算による刻み幅は「32円」です。距離と金額を比べると、東京のほうがわずかに割高なのですが、小さく刻まれている分、不愉快な気分を味わうことはありません。

先の記事によると、「大手の日本交通は(中略)、初乗り距離を1・059キロに縮め、運賃は410円。その後、235・25メートルごとに80円を加算し、2キロ時点で730円とする」とのこと。「90円」から「80円」にほんの少しだけ刻み幅が減るようですが、私の感覚からするとまだ不十分です。初乗りは「1キロで400円」ポッキリ、加算は「60メートル程度で20円」くらいが妥当でしょう。いまの初乗り730円に到達するまでの距離はほとんど同じですから、問題ないはずです。

見かけの金額の差は60円。小さな子どもを育てている親にとって、60円あればお菓子の1つ、2つ買い与えることができます。運賃改定の趣旨が「少しでも利用しやすく」ということなら、そうした現実も踏まえた上で料金体系を考えてほしいものです。

やっぱり私は「花よりダンゴ」かと思いきや

2016年4月3日
3、4日前から東京も桜が満開。都内では昨日・今日と、お花見渋滞があちこちで起こっているといいます。今日は日曜日ということもあって、そんな都内を家人と2人、車で“パトロール”してみることにしました。といっても、メインの用件は門前仲町に住む長男一家にイタリアのお土産を届けること。午後2時過ぎに家を出て、途中、学習院大学正門や新江戸川公園といった、渋滞までは引き起こさない道も通沿いにある桜の名所も見ました。混雑していそうな皇居前はナビのおかげで回避し、すんなり目的地に到着。

dsc00232そのあと、まっすぐ帰るのももったいないので、「羽二重だんごでも食べたいね」という話になり日暮里へ。途中、言問橋など隅田川の周辺は大変な人出のよう。幸い、どこでも渋滞にはひっかからず日暮里駅近くの店に。閉店の1時間ほど前でしたが、席もすぐに空き、2本で540円というチョーぜいたくな羽二重だんごをいただきました。何かの催しでたまにデパートに出店した機会に出くわして食べたことはありますが、本店で食べたのは初めて。一段とおいしかったです。

やっぱり私は「花よりダンゴ」だなぁ、などと納得しかけたのですが、日暮里駅といえば谷中霊園の目と鼻の先。墓園を“桜の名所”と呼んでしまっていいのかという疑問もありますが、店と線路をはさんだ反対側にある墓園まで足を延ばしてみました。上野公園のすぐ近くなのですが、こちらは喧騒とはまったく無縁。みごたなまでに花を咲かせた桜の木が並ぶ道をゆっくり歩き、堪能しました。枝ぶりの大きな、しかも下まで垂れ下がっている桜はやはり何物にも代えがたい美しさで迫ります。うっとりした顔で桜を楽しむ外国人の姿も目につきました。私たちも「花よりだんご」で済まずによかった!

dsc00240

 

dsc00242再び日暮里駅までとって返し改札の前を通り抜けようとすると、大きな「谷根千MAP」が掲示されていました。駅から谷中・根津・千駄木周辺の見どころ、お店などが、細かな道筋とともに大きな文字で書かれているのですが、ふと、「これじゃ外国人にはなんの役にも立たないだろうな」と思ってしまいました。そう、英語といえば「MAP」の文字だけで、あとは全部日本語。たまたま地図のすぐ前をノルウェーからやってきたとおぼしき観光客の一団が通り過ぎていきましたが、「MAP」に目をやることはありませんでした。改札を抜け駅構内に入っても、とまどっている様子がありあり。こちらは英語の表示が随所に見受けられたのですが……。

そういえば、一昨日、浅草に行ったときも同じような事例に出くわしました。というか、どこに行ってもその種のことが多いのですが、肝心な部分でインバウンド(=外国人旅行客)向けの案内表示が欠けてしまっているのです。

たとえば、浅草には東京METROと都営地下鉄の2路線の駅がありますが、2つの駅はつながっていません。そのため、多くの人がとまどってしまうのでしょう、ときどき「都営浅草駅へは階段の裏の通路を」などといった類の案内表示が貼られています。要するに、最初の設計段階ではそうした情報が欠けていたため、あとになってから手作りしたわけです。ところが、そうなるともうダメで、日本語の表示しかありません。日本人よりもっと不案内な外国人にとっては不自由きわまりないことになってしまうわけです。

「トイレ」「雷門・浅草寺方面」といった簡単明瞭な表示はほぼカンペキです。しかし、実際に営業している中で、予想外に質問が多かったりすることには臨機応変に対処するしかありません。日本人だけが相手なら、口頭でも手書きの表示でも対処できますが、中国語や英語、スペイン語しか話せない人たちにとってはまったく意味がありません。しかも、それが東京でもいちばん外国人観光客がやってくる浅草での話です。これがちょっと郊外の駅や地方の観光スポットならどうなるのか……と、不安になるのは私だけではないはず。日本ならではの“親切”がかえってアダになってしまっているのではないでしょうか。

外国のほうがこういうことははっきりしています。「自分でなんとかしなさい」ということになっているからです。たしかに不親切ですし、トイレを探しているようなときそうした状況におちいってしまうと大変です。日本と違い(といっても、浅草などまだまだですが)バリアフリーがまだ十分に発達していない国で、大きなスーツケースを引きずりながら乗り換えに四苦八苦させられると、泣きたくなります。空港はともかく、鉄道駅ともなると、ほとんどの国はまだまだ厳しいものがあります。

ただ、それはそれ。自力で問題を解決するしかないとなればその覚悟ができ、心の準備もするでしょう。しかし、「おもてなし」の国・日本となれば、やってくる外国人観光客の期待度はおのずと違います。そうした事態まで見すえてのインフラ作りを考えなくてはならないのですから、大変は大変。でも、徹底してやるしかなさそうです。外国人旅行客にはまったく意味をなさない、「白線の内側までお下がりくださ~い!」とか「ただいまの時間整列乗車をお願しておりま~す!」といった駅ホームでのアナウンスより、そうしたことにエネルギーを差し向けたほうがいいのではないかと思ってしまいます。