初乗り運賃さえ下げればOKなのか?

2016年4月5日
「あっ、そこで止めてください」と運転手に声をかけた瞬間、メーターが1000円から1090円に。東京でタクシーに乗っているとよく経験するできごとです。ポケットにしまった財布をまた取り出し、100円玉を1つ付け足して払うハメにおちいるのですが、それより何より不愉快なのはメーターの刻みが「90円」と大きいことです。「だから、タクシーはイヤなんだよなぁ」。これがかりに「20円」とか「30円」だったら、そういう気分にはなりません。

今朝の朝日新聞1面、それもトップに、「タクシー初乗り、東京400円台も 距離縮め、来春にも」という記事が出ていました。「2キロ730円」という現在の初乗り料金を、「1キロ強で400円台」に下げ、「高齢者や子連れ客らに、買い物などの近距離でも気軽に乗ってもらう」ようにするためだそうです。

初乗りが下がれば乗りやすくなるのは間違いありません。歩いて13~14分を超えるかどうかがタクシーに乗る・乗らないの目安になるのも、経験上わかります。雨でも降っていればいいところ10分でしょう。しかし、これだけがタクシーに乗る決め手なのかというと、違います。私はむしろ、初乗り距離を過ぎてから加算されていく金額の幅がけっこう影響すると思っているからです。

東京のタクシー業者にこうした感覚がないのはなんとも不思議な気がします。先日、ミラノでタクシーに乗ったとき、なんと10セント単位で上がっていくのを経験しました。10セントといえば13円です。これほど少額の刻み幅は私にとっても初めての経験です。もちろん、13円ですから距離は短いですよ。ただ、メーターが上がっていってもそれほど気になりません。まして、血圧が上がったりイライラしたりすることなど一切ありません。

ロンドンなど、初乗り運賃の実質は東京の約4倍です。これをもとに「いや、東京のほうが断然安い」といわれれば、たしかにそのとおりかもしれません。でも、その後の加算による刻み幅は「32円」です。距離と金額を比べると、東京のほうがわずかに割高なのですが、小さく刻まれている分、不愉快な気分を味わうことはありません。

先の記事によると、「大手の日本交通は(中略)、初乗り距離を1・059キロに縮め、運賃は410円。その後、235・25メートルごとに80円を加算し、2キロ時点で730円とする」とのこと。「90円」から「80円」にほんの少しだけ刻み幅が減るようですが、私の感覚からするとまだ不十分です。初乗りは「1キロで400円」ポッキリ、加算は「60メートル程度で20円」くらいが妥当でしょう。いまの初乗り730円に到達するまでの距離はほとんど同じですから、問題ないはずです。

見かけの金額の差は60円。小さな子どもを育てている親にとって、60円あればお菓子の1つ、2つ買い与えることができます。運賃改定の趣旨が「少しでも利用しやすく」ということなら、そうした現実も踏まえた上で料金体系を考えてほしいものです。