月別アーカイブ: 2007年11月

滞在型リゾート──何もせずに過ごすことの魅力

 いまマレーシアのペナンというところにいます。ペナンはマレー半島の西側にあるビーチリゾートとして知られ、ここから車で2時間も走ればタイとの国境だとか。最近、日本人旅行客がけっこう目立つランカウイやヨーロッパの人たちに人気のあるプーケットなどに比べるとやや地味ですが、それでも大きなホテルがいくつかあります。

 26日にシンガポール入りし、翌日・翌々日と2日間をクアラルンプールで過ごした私たちがペナンに入ったのは昨29日。明後日まで3泊の予定ですが、日本人がいちばん不得意だといわれる「滞在型リゾート」なるものを体験しようということでやってきました。実際、昨日もホテルに付随するプライベートビーチを歩いてみたのですが、何日間も泊まっているように思える欧米人の姿が目につきました。分厚い本(多くは小説)を貸し出すサービスまであるようです。

L1010717  日がな1日海岸やプールサイドに寝そべりながら過ごしたり、マリンスポーツを楽しんだりし、夜はゆっくり食事やお酒を楽しむ、あるいはホテルの外に出てブラブラする──そんな過ごし方をするのでしょう。実際、海岸べりに立つホテルの近くには夜になると屋台がびっしり並び(その数はハンパではありません)、多くの人でにぎわっていました。

私も生まれて初めてそういう時間の過ごし方をしたのですが、これはこれでけっこう心地よいものです。なんと、エステも体験してしまったのですが、体が“ゆるむ”というのはまさしくこういうことなんだと実感できました。夢心地の3時間半はあっという間に過ぎてしまいましたが、人間、ときにはこういう時間も必要なのかもしれないと痛感したしだい。

 このペナンのリゾートに比べると、首都のクアラルンプールの都心エリアは活気にあふれています。ASEANのなかでもシンガポールと並んで発展いちじるしいマレーシア。それを象徴しているのが、私たちが泊まったホテルのすぐ近くに建つツインタワービルでした。空に向けてそそり立つ2本の高層ビル全体がライトアップされ、まるで大宇宙船といった風にさえ見え、強烈なインパクトがあります。

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NYとパリ、「食」に対する態度の違いは?

 一昨日からニューヨークに来ています。数年ぶりで訪れたのですが、相変わらず活気に満ちた魅力的な都市です。

 今回の目的は「沢竜二のオフブロードウェイ公演」を観ること。沢竜二は以前もこの欄で書きましたが、全国座長公演で初めて出会った役者さん。そのドぎつい、超アナクロといってもよいお芝居は、日本でも根強いファンがいるようです。それを昨年に続いてニューヨークでやろうというパワーに感心させられたからです。

 今年の7月、同じニューヨークで公演した中村勘三郎一座は大好評だったようですが、それとはもちろん比べものになりません。会場も、勘三郎一座のリンカーンセンターとはうって変わって、ふだんはアングラ演劇をやっているんだろうなとしか思えないちっぽけで古びた小屋ですし、装置などにもほとんどお金をかけていません。

 でも、不思議なもので、演者から伝わってくる熱気はたぶん同じレベルではないかという気がします。そして、アメリカ人の観客もそれを感じるのか、セリフも歌も理解できないはずにもかかわらず、ここぞという場面ではやはり拍手と歓声があがります。
終了後、出口で沢竜二はじめ出演した役者たちが観客を見送るのですが、全身汗びっしょりになりながら握手したり写真撮影に応じたりしているのを見ると、ここまで観にきたかいがあったと思いました。

 劇場を後にし、近くの地下鉄の駅まで歩いて行く途中、その界隈に日本料理の店がやたら多いことに気づきました。このエリアに限らず、いまニューヨークはそこここに日本料理の看板が目立ちます。聞けば千軒は軽く超えているとかで、近頃の日本食ブームは本当なんだと感じられました。

 とくに最近は、昔から定番の寿司、すきやき、天ぷらだけでなく、創作日本料理とでもいうのでしょうか、そのテのメニューを出す店が多いようで、とんでもなく値段の高い店も少なくありません。インテリアなどにもたいそうお金をかけているらしく、ホントにそういう店が長続きするのかなと、他人事ながら心配になってしまいます。

 私たちは結局、そういったたぐいのところにはまったく行かず、今年で創業120年というブルックリンのステーキ屋(ピーター・ルーガー)、グランドセントラル駅構内にあるシーフード店(オイスター・バー)など、いかにもアメリカを感じさせるような店ばかり選んで行きました。ニューヨークというところはパリなどと違い、お金を使いたくなければ、いくらでも安い店があります。テイクアウトできる店も多いので、時間がないときなどはとても助かります。

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 もちろん、ニューヨーカーなりに「食」へのこだわりはあるのでしょうが、パリジャンなどのこだわりとは根本的に違うようで、そこにアメリカとフランスのお国柄、それぞれの国民性・気質の違いも出ていそうです。朝でも昼でも、とにかくゆっくり時間をかけて食べようとするフランス人。それに対して、アメリカ人はとりあえず食べられればOKという感じが強いのでしょう。ニューヨークはやはり、忙しく走りまわるビジネスマン、ビジネスウーマン向きの都会なのです。私も食べることは大好きですが、ニューヨーク流のほうが肌に合っているような気がしました。

近頃流行りの「デザイナー」なんとかに疑問

 11月3日から上海に行き、今日帰国しました。今回は成田出発(浦東空港着)ではなく羽田からの出発、しかも上海中心部に近い虹橋空港着だったので時間的にはとても楽でした。

 わずか1年半ぶりなのですが、その間に大きく変わっています。あちこちで工事をしているため、交通渋滞がハンパでなく、以前から上海の特徴であるけたたましさ(車のクラクションをガンガン鳴らす)も手伝って、とにかく以前よりいっそうゴチャゴチャしていた感がしました。聞けば、2010年に開催される万博までの間に地下鉄が一気に延伸あるいは新たに開通するとかで、その準備に躍起ということです。

 ちょうど季節が合っていたので、最初の日の夜は上海蟹を食しましたが、それより印象に残ったのは3日目に食べた四川料理でした。日本のそれと違い、本家本元・四川省の人々の基準に合わせた辛さでしたから、辛いものがめっぽう好きな私にとってはピタリはまりました。
 なかでも、川魚を油で揚げたものの上から赤唐辛子、青唐辛子、さらに山椒を合わせたソースを、魚の姿がほとんど見えなくなるほどかけた料理(名前は不詳)は圧巻。口に入れたとたん、脳天までズシンとくる辛さが襲いかかってくるショックは強烈そのもの。といって、けっして不愉快な辛さではありません。体の内側からホカホカしてくるこの辛さこそが四川料理の真骨頂なのでしょう。

 今回泊まったのは、豫園のすぐ近くにこの夏オープンしたばかりのホテルでした。近ごろ日本でも流行っているデザイナーズホテルとでもいうのでしょうか、インテリアはいちいち凝っているのですが、使い勝手がわかりにくくてたまりません。極端な話、洗面所のコックでさえ、どこをどうすれば水(湯)が出てくるのか首をかしげてしまうのです。デザイン優先の悲喜劇といってしまえばそれまででしょうが、もう少しなんとかしてほしいなと、このテのホテルに泊まるたびに感じます。

 デザイン、とくにインテリア関係、あるいはインダストリアルの分野は、姿かたちも大事でしょうが、まず何より使い勝手がよくなくては失格ではないかと、私個人は思っています。キッコーマンのしょう油さしがいかにしてつくられたかという話を以前テレビで見たことがありますが、人間の手の動きや視線のありようなどを深く、またていねいに探求してデザインされていたのを知って感心しました。それゆえ誕生してから半世紀近く経っているいまでも同じデザインでつくられています。時代や空間を超えた普遍性がそこにはあるわけです。

 最近、「ユニバーサルデザイン」という言葉をよく耳にしますが、本当の意味で「ユニバーサル(=普遍的)」であるのはやはり大変なことなのでしょう。デザイナーはともすると、見た目のカッコよさに酔ってしまうようですが、目先のカッコよさだけでは、そのとき・その場はウケても、けっしてユニバーサルたり得ないということをよくよく知っていただきたいなと思います。