2015年8月1日
今日は日中がヘルシンキ市内観光に充てられています。10時過ぎに出発、まずはオリンピックスタジアムへ。10年前、私たちが世界陸上の観戦に行った場所ですが、そのときは2日間とも夜でした。しかし、明るいところで見るスタジアムは、まったく趣が違います。スタンドにだれもいないせいもあるでしょう。
このスタジアムは1952年のオリンピックのために造られたとのことので、とても質素に造られています。観客用のイスも木製です。当時のこととて、プラスチックがほとんど使われていません。木、石、鉄、あとはガラスくらいなものでしょうか。東京の新国立競技場のように2300億円かかるとかかからないといった話が、絵空事のように思えます。これで十分なんじゃないのと、改めて思いました。
それより、古いから、世界中からやってくる観客を「お・も・て・な・し」するには、デザインにもお金をたっぷりかけて豪華に……という発想に疑問を抱いてしまいます。このヘルシンキのスタジアムは観光スポットにもなっているのですが、フィンランドという国を通じて見た「オリンピック」というものを考えさせる工夫が随所にほどこされていました。
「フィンランドとオリンピック」との関わりで思い出すのは、日本の村社【むらこそ】講平という、宮崎県出身の小柄な(162cm・50㎏)陸上長距離選手のことです。もちろん、実際に見たわけではなく、子どものころ読んだ本に書かれていた話です。
村社は1936年のベルリンオリンピック陸上5000mと10000mに出場しました。10000mで、ラスト1周のところまでトップを走っていた村社をいとも簡単に抜き去っていったのが、1位になったサルミネンなどフィンランドの3選手。結果は同国のワンツースリーで、村社は4位に終わってしまいました。このときの模様はレニ・リーフェンシュタールの映画『民族の祭典』にも描かれています。
この映画を観て感銘したチェコスロバキアの少年が、のちに“人間機関車”の異名を取ったエミール・ザトペック(チェコスロバキア)です。ザトペックは、1948(ロンドン)の10000mで金メダルに輝きましたが、1952年のヘルシンキ大会では5000m、10000m、そしてマラソンでも金を取るという、いまでは考えられないような離れ業を成し遂げています。
オリンピックスタジアムをあとにして向かったのがシベリウス公園。家人は、この国が生んだシベリウスに敬意を表し、出発前にわざわざCDまで買ってその作品(『交響曲フィンランディア』)を聴いてきたとのこと(ただ、暗~い曲で途中でやめたとも)。公園は、その曲とはうって変わって、明るい日差しに満ちた素晴らしい場所です。もちろん、フィンランドの象徴である森がたっぷりあって、気持ちよく歩けました。
次に行ったのは、岩盤の中に造ったというルター派の教会です。中央駅からさほど遠くない住宅街の一角にあり、岩盤でできた小さな丘をくり抜いた中が教会になっています。側面の上のほうにガラスがはめ込まれていて、自然光が入り込むようになっているので、けっこう明るく感じます。世界各地から年間数十万の人が訪れるこの教会、音響効果も優れているらしく、コンサートホールなども開かれるそうです。
このあとランチは、昨日も訪れた、駅近くのFORUM。ただし、今日は別の建物の中にあるフィンランド料理の店。時間がかなりおしていたようで、当初歩いて移動するはずだった港まで、急遽トラムを利用することになり、ギリギリのタイミングで船に乗りました。目的地は船で15分のところにある世界遺産・スオメンリンナ要塞。ほとんど期待していなかった場所でしたが、これが意外に楽しめました。
要塞からまた港まで戻り、夜7時56分発のサンクトペテルブルク行き国際特急の出発まで自由時間。小腹がすいていた私たちは、ちょっと何か食べておくことにし、駅前にある「レオナルド」か「ダ・ヴィンチ」かで迷ったのですが、結局「ダ・ヴィンチ」にしました。どちらもイタリアンで、こちらはピザが有名なのだとか。両店は経営的には関係ないらしく、たまたますぐ近くにあるだけのようです。
7時少し半前にホームに移動し、列車に乗り込みました。ほぼ海に沿って走りながら途中で国境を越えてロシアに入ります。日本にいてはもちろん、海外でもなかなか体験できないことなのですが、けっこう緊張しました。
フィンランドからの出国手続きを終え、しばらく走るとロシア領。こんどは入国審査ですが、こちらはやはり緊張させられます。出発から4時間弱でサンクトペテルブルクに。日にちが変わる直前の到着だったので、ホテルにチェックインしたときはほとんど午前1時前でした。
同じ北の国でも、フィンランドとロシアとでは、やはり違います。ホテルのロビーは明かりが半分消されていて、暗い中で添乗員からキーを渡されるのを待っている間、疲れがどっと襲ってきました。私たちの部屋はチョー狭く、スーツケースを開けるスペースもありません。最低限のものだけ出して、即就寝です。
ホテルの部屋が狭いのは圧迫感のせいもありますが、なんともプアな気持ちにさせられるものです。ほかにも快適なホテルの条件はいくつがありますが、せっかく日常を離れるのですから、できるかぎりリッチな気分を味わいたいもの。その第一条件が部屋の広さというのが、私の考えです。その点、このオクチャーブリスカヤというホテルは厳しいものがあります。ツアーで決められているので仕方ないのですが、この次サンクトペテルブルクに来るときは、もう少しグレードの高いホテルにしてほしいというのが正直な気持ち。