2015年6月27日
今日でローマともお別れです。出発までまだ余裕があったので、ホテルにいちばん近くにありながら一度も観ていないサンタマリア・マッジョーレ教会に行ってみます。ここもまた韓国人観光客がいっぱいでした。そこから歩いて3、4分のところにある「パネッラ」パン屋さんで朝食を取ることに。店の中と外にテーブルが。ひっきりなしにお客がやってくるのを見ても、地元では人気があるのでしょう。
10時15分テルミニ発の特急に乗り、“ロメオとジュリエットの町”ヴェローナまで移動します。事前にTORENITALIAのウェブでチケットを買い求めてはあったのですが、座席が進行方向と逆。これが私は苦手なのです。気持ちが悪くなったりすることはないのですが、どうにも不自然というか……。ビジネスクラスの車両なので、新聞はタダで配ってくれますし、飲み物とスナック菓子も無料。ワゴンがやってきてほしい物を聞いていくのです。もちろん、ヨーロッパの鉄道には珍しく、検札もきっちりおこなわれました。
約3時間でヴェローナ(ポルタ・ヌオーヴァ)駅に到着。駅前の広場は工事の真っ最中で、タクシー乗り場がやや離れた場所に移されているようです。でも、予約してあるホテルはタクシーに乗るほど離れてはいません。実はこれがいちばん厄介で、結局スーツケースを引きずりながら、地図と首っ引きで15分ほど歩き、無事チェックイン。中心街からは離れているので、まわりは地味で静か。週末の野外オペラ開催日と重なっていて、思うようにホテルの予約が取れなかったのです。
荷ほどきを済ませるとすぐ、バスで中心街にあるアレーナ(円形闘技場)まで行くことに。噴水と公園があり、それを取り囲むようにして広がっているのがブラ広場。何かのイベントなのでしょう、新旧のシトロエン車がずらり駐車していました。私たちが見ている間にも続々到着し、なかには1930年代に製造されたとおぼしきものまであります。シトロエンは第1次世界大戦後の1919年、大砲用の砲弾製造で財を成したフランスのアンドレ・シトロエンが、ヨーロッパにおける自動車の大衆化をめざして設立したメーカーで、先鋭的な技術開発で注目されました。ただ、そうした経営手法はだいたいうまく行かないのが常のようで、いまはプジョーの傘下に入っているとのこと。
ここいら一帯はヴェローナの中心地で、レストランとカフェが軒を連ねており、どこで食べるか、決めるのが大変です。それでも、写真付きのわかりやすいメニューを店先に出している店を選んで食べました。今回も◎です。イタ飯というのはまずハズレがないので、ありがたいことこの上ありません。
食後、とりあえず街の中をぶらっと歩いてみようと、高級ブランドの店がずらりそろったマッツィーニ通りを抜けるとまたまた大きな広場が。エルベ広場というのだそうですが、土曜日ということもあって大変なにぎわいです。広場のほぼ全体にテントを張った店が出ていました。その中にあるのがランベルティの塔。まあ、高いこと高いこと。たしかに、84mの高さまで上がればさぞかし眺めもよかろうと思われます。
13~14世紀にこの町を支配していたスカラ家の廟【びょう】からサンタナスターシア教会をのぞいたところで、一度ホテルに戻ります。あまりの暑さのため、タクシーです。しばし休憩ののち着替え。オペラなので、Tシャツに半パンというわけにも行かず、いちおうジャケットを羽織り、革靴に履き替えました。
再びバスに乗ってアレーナのすぐ近くまで行ったのですが、なんとなんと、降りたとたん雲行きがあやしくなってきました。野外オペラには大きなリスクがあって、雨がひどいと中止になってしまうのです。そんなことになったら、苦労して買い求めたチケットがパア。いっときの夕立で済むことを願いつつ、とりあえず腹ごしらえをしておかなければと、ブラ広場の一角にある店へ。オペラファンがイタリア国内はもちろん、隣国のスイスやドイツからも来ているようで、どのお店も大繁盛です。
7時半ごろから案の定、猛烈な雨が降り始めました。レストランやカフェはどこも皆、店の外にもにテーブルをかなりの数並べているので、テントを張ってあるとはいえ、けっこう影響があります。軒先には、ポンチョを売りに来る人もおり、私たちもとりあえず2着買いました。
オペラでも野外での公演となると、日本ではなかなか経験できるものではありません。ヴェローナという古い町の魅力もさることながら、今回ここを訪れた最大の目的はこれです。幸い、食べ終わるころには夕立もほぼ止み、アレーナの入口でしばらく待機させられましたが、ようやく中に入ることができました。今日の演目は『アイーダ』。客席まで歩いていく間、そのセットに度肝を抜かれました。野外で高さや幅に制限がないので、思い切り大きく作ってあるのです。しかも、舞台はメッチャ広く、役者の動きもダイナミック。雨あがりの澄んだ空に月、星が冴え、その下で縦横無尽に繰り広げられるオペラの演技に感動したのはいうまでもありません。