2013年12月6日
クリスマスマーケットだけでは飽きもするだろうと、出発前に買い求めておいたオペラ『トスカ』の上演が今晩です。バイエルン州立歌劇場というのは、たかだか「州」でこんなにも立派な劇場をというくらい素晴らしい建築物。なにせ最初に訪れた、王様の住居「レジデンツ」とセットになっている建物ですから、相当なものです。もっとも、バイエルンはいまでこそ「州」ですが、かつては独立した国家だったので、当然かもしれません。ただ、ウイーンのオペラ座のように内外に贅を尽くした派手派手しさはありません。ドイツ的というか、権威的な感じはありますが、これ見よがしの装飾などは極力排されているようです。
開演は7時だったので、昼間町に出たときにウイルコールでチケットの受け取りを済ませておきました。中央駅近くのカールスバッドというドイツでは有名なデパートをのぞき、その足でカールスプラッツ(広場)を経てマリエンプラッツまでぶらぶら歩き。
今日は朝から風が強く、気温もかなり低い感じです。しかも、出発前に家人が風邪をひいており、こちらに来てもなかなかよくならなかったため、午後は部屋で休んでもらい、私は一人で、強風で雪が舞う中を、旧市街地の東側を流れるイーザル川の中洲にあるドイツ博物館の見学へ。これがまた、とんでもなく広い博物館で、機械好き、鉄道好き、飛行機好き、船好きの人にはたまらない場所なのではないでしょうか。
私自身はそれほどのマニアでもなんでもないのですが、3時間近くいて飽きることはなく、疲れも感じませんでした。ナチスドイツが第2次大戦中に使ったVロケットやUボートの実物を目にしたときは、それまで知識としてしか知らなかったものだけにやはり感銘を受けました。
しかし、何より度肝を抜かれたのは、博物館の地下にある「炭鉱採掘ジオラマ」です。実際と同じスケールで複雑な坑道やら運搬用のトロッコ、選鉱のための施設など、ありとあらゆるものが忠実に再現されているのには感心を飛び越え、感動しました。途中、階段を上ったり降りたりするうちに妙に息苦しくなったりもし、非常にリアルなのです。30分ほども見てまわり、最後ようやく1階に上がっていったときはホッとしたというか、実際にその仕事に従事していた人たちの思いもかくあらんというか、ドイツ人のこだわりのようなものを感じさせられました。
博物館、それもいかにも男くさそうなシロモノばかりを集めたところですから、客層は例によって、中年過ぎのマニアックを絵に描いたようなオッサンがほとんどではないかと思っていました。しかし、これがどうしてどうして、若いカップルやら家族連れなど意外な感じの客が多いのには驚きました。今回私が見られたのは全体の半分ほど。まったく足を踏み入れなかったエリアもまだまだあり、全体を見学していたら、おそらく丸1日はかかるのではないでしょうか。
オペラのほうは事前の予習が足らず、ストーリーをよく理解しないままで臨んだものですから、楽しみも半ばというところでした。しかし、チケットは早々に完売になっていましたし、しっかりお洒落をしてきている客がほとんどで、会場の素晴らしさとともに、そうした時間の過ごし方ができるドイツ、というかヨーロッパの人たちの心の余裕のようなものを感じたしだい。ちなみに、私たちの買い求めたチケットは2人で240ユーロほど。前から15列目、左右のちょうど真ん中あたりという素晴らしい席でしたから、“授業料”としては安いものでしょう。