日蓮生誕800年にちなむ展覧会を観に山梨県へ

●私の住む東久留米市のすぐ隣は、志村けんの東村山市。先日お伝えしたイオンモールがある武蔵村山市の「東」に位置していることからその名がついたようです。鎌倉時代は、政都・鎌倉と東北、北陸方面を結ぶ鎌倉街道上道が通っており、市内の久米川[くめがわ]には大きな宿場がありました。鎌倉から東北・北陸に向け茫々[ぼうぼう]たる武蔵野の原野を歩いてきた旅人にとって、清き流れがたゆとう久米川の宿に着くと心も安らいだはず。
●佐渡に配流となった日蓮が相模国依智[えち](現在の神奈川県厚木市)を発ち、最初にわらじを脱いだのも久米川です。今年はその日蓮の生誕から800年。それにちなんで「日蓮聖人と法華文化」展が開催されていると知り、私も笛吹市にある山梨県立博物館まで行ってきました。地味なテーマなのでガラガラかと思いきや、けっこうな数の人が訪れているのにはビックリ。
●展示されていたのは、日蓮自身やその弟子・後継者の手になる紙幅の曼荼羅、書状、経典写本、肖像、棟札、日蓮の生涯を綴った読み物など170余点。戦国時代に日蓮の教えを信奉する武士が合戦のときに身につけた陣羽織(背中に南無妙法蓮華経と記されている)、文字ではなく絵で描いた曼荼羅など、ユニークな品もありました。なかでも、日蓮ゆかりの各地の寺院や宿のガイドブックは秀逸。絵をふんだんに用い、説明文も「るるぶ」や「まっぷる」顔負けの懇切丁寧さ。このテの本は宗派を問わず広く出回っていたといいます。
●それにしても「笛吹市」などという市があったとは、今回初めて知りました。温泉で有名な石和[いさわ]など5町2村が合併して2004年に発足したそうですが、市名を決めるときは大いに悩んだのではないでしょうか。結局、深沢七郎の小説で知られる笛吹川がこのあたりを流れていることから決まったようで、西東京市とか北名古屋市のような、安直というか無機質というか、そうした名前にせずによかった! (2021/11/18)

Facebook Post: 2021-11-19T08:42:31