広島へ。たった10カ月の間に大変化

2013年5月20日
 昨日夕方早く、広島にやってきました。市内でおこなわれる「八丁堀シンポジウム」にパネラーとして参加するためです。Mtfuji20130519_2 東京を出て名古屋まではえらく好天で、新幹線の車窓から富士山がくっきり見えました。なぜか、富士山を見ると興奮してしまう──これはもう日本人の習性でしょうか。

 さて、シンポジウムの会場は「八丁座」。広島の中心部にある老舗デパート福屋の8階、全国でもおそらく唯一の、デパートの中にある映画館です。映画館といってもそんじょそこらのそれとは違います。だいたい、地方都市で中心商店街に映画館があること自体、画期的です。

Hattyouza2_3  近ごろ、映画館といえばちょっと郊外にあるシネコンというのが通り相場ですから。地方都市になればなるほどその傾向は顕著で、それが若い人たちの映画復帰を実現したのもまちがいないのですが、ただクルマで行って帰ってくるというのでは、なんだかさびしい気もします。古い考えなのかもしれませんが、映画というのはやはり、それプラス食事とかお酒とか、もう少し色気があってもいいのではないかと思います。

 こんな映画館をつくったのは地元・広島の蔵本順子さん。まわりからは「素敵な暴挙」ともいわれたそうですが、新しいことに躊躇なくチャレンジする、初めてのことへの挑戦が大好きという広島人の面目躍如といっていいでしょう。昨日のシンポジウムはその蔵本さんもパネラーのお一人でした。

  八丁座のシートはとにかくゆったり(幅85センチ、畳半畳分の大きさ)した造り。ソファー総張仕様と木肘仕様という2つのタイプがあり、最後部には、スタンドバーのような雰囲気のカウンター席、グループで観られる畳席もあって、それだけでまず驚きます。

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Hattyouzaroby  内装もユニークです。日本アカデミー賞最優秀美術賞を2度受賞した広島市出身の映画美術監督・部谷【へや】京子さんがデザインを担当、「江戸時代の芝居小屋」をイメージしたというだけに、東映京都撮影所から譲り受けた襖【ふすま】絵や実際の映画で使われた行燈などの小道具もあしらわれたりしていますし、スタッフも半纏を着ており、非日常の気分がふんだんに味わえます。

 そんな会場で、もうお1人、広島国際学院大学社会学部長の迫勝則さんの計3人で「八丁堀」をテーマにお話しさせていただいた次第。銀幕をバックにしたステージが造られ、そこにすわったのですが、聴衆がああまでゆったりすわっているのを見ると、とてもうらやましく思います。

http://www.mecsumai.com/hatchobori/event.html

L1060226_2  終了後、『広島学』の取材で大変お世話になったNさんと、えびす通りの「忠茶【ただちゃ】」という居酒屋へ。日曜日は休みなのですが、Nさんと懇意ということでわざわざ開けてくれたそうです。「ねぶと(天竺鯛)」「よりエビ」の唐揚げ、焼きカレーなど、お店の名物を次々出してくださり、どれもみな感激の味ばかり。一発でファンになってしまいました。

Dassai  山田錦でない、普通のコメでつくった日本酒もよかったですし、その後飲んだ獺祭【だっさい】の米焼酎(大変なレアもののようです!)がまたまた捨てがたい。焼酎とはとても思えない香りが、アルコール度の高さ(33度)をまったく感じさせません。

 「ねぶと」というのは初めて口にしましたが、身の丈8~10センチにしかならない、鞆の浦特産の小魚だそうで、頭を落とした身だけを揚げたもの。そのサクサク感たるや、ほっぺたが落ちそうになります。

 〆にいただいたのが「鉄皿焼きカレー」。見た感じはグラタンかピザのイメージ。実際、チーズがたっぷり乗っかっていて、カレーは隠れてしまっています。ところが口にすると、中はころあいに混ぜたカレーライス。その心地よい辛さが舌を覆います。あとはもう一気。

L1060231_2 それにしても、たった10カ月来なかっただけというのに、市内の変わりようには驚きました。駅前の再開発が始まっていましたし、八丁堀のデパート天満屋が撤退し、その建物にはヤマダ電機、ユニクロ、丸善+ジュンク堂さんが入っていました。近ごろ、街の変化のスピードは、ホント早いです。

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