齢(よわい)57で農業デビューした弟

2011年9月12日
長野県東御(とうみ)市で今年からブドウ(巨峰)の栽培を始めた弟から、初出荷の品が届きました。うつ病を克服し、社会復帰の道をさまざま模索していた弟ですが、ひょんなことから農業に縁し、一昨年からかの地で、ブドウ栽培の手伝いを始めました。その時点では、まさか自分がその栽培を手がけるなどとは思っていなかったようですが、これまでの農園主が引退したため、とりあえずその後を引き継いでみることになったのです。

7月、軽井沢に行った際、様子を見にそのブドウ園に立ち寄ったのですが、300坪という広さに驚きました。それでも、ブドウの迂遠としては狭いほうだとか。まあ、初めての者にとっては手ごろなサイズなのかもしれません。それでも、ブドウの木が生え、一定の高さ以上にしないように手入れし、その下で作業に励む姿を目の当たりにしたときは胸が熱くなりました。前の農園主の背丈に合わせて、ブドウの木の高さも抑えられているため、その下で作業するとなると、中腰というか、なんとも中途半端な姿勢にならざるを得ないわけです。その姿を想像しただけで、「これは大変だわ」と感じます。

専門的なことは何度聞いても覚えられませんが、それはそれは面倒くさそうですし、何より自然が相手ですから、作り手の思い描いているように育つわけでもありません。台風や長雨、異常な暑さやらに襲われたら、実の大きさやそのそろい加減、甘さ(糖度)など、ありとあらゆる面に影響するそうです。しかも、すべて初めての体験ですから、送られてきた今年の初ものを見たときは、なんともいえない気持ちになりました。

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しかし、そのでき具合はどうあれ、私としては、弟が何年かぶりに「社会」と接点を持てたことに感動しました。もともとが土木設計という、農業とはまったく縁もゆかりもない分野で生きていた弟です。年齢(57歳)からしても、初めてのことにチャレンジする苦労は想像を絶するものがあったにちがいありません。それをどうにか乗り越えての〝デビュー作〟ですから、私にとっては無条件でうれしい、というのが正直な気持ちです。