朝日新聞の連載コラムを終えて

 昨年の4月から1年間続いた、朝日新聞のコラム=「街魅しゅらん」(毎週金曜日の「週刊首都圏」のページに掲載)が、今日付をもって終わりました。あっという間の1年間で、一抹のさびしさは否定できません。ただ、週に1回というのは考えていた以上にハードで、その意味では、正直ほっとしている部分もあります。

 この1年、首都圏の各都市に足を運ぶたび、その広さを感じるとともに、現地を実際に取材することの大切さをあらためて痛感させられました。その土地に住んでいる友人・知人から話を聞いたり、インターネットで調べたり、取材に行く前にある程度のリサーチをするのですが、聞く(読む)と見るとでは大違いとはよくいったものです。

 とくにインターネットを通じて得られる情報はもっともらしく、いかにも正しそうに見えます。きちんとした画面に、きちんとした形で出てくるからでしょう。ときには写真や動画までついているので、そのレベルがかなり高いように錯覚してしまうのです。

 新聞記者が最初に教えられるのは、「何度でも、現場に足を運べ」ということだと聞いたことがあります。もう遠い昔の話ですが、NHKでやっていた『事件記者』という人気ドラマでよく耳にしたセリフでした。当時はまだ小学生だったので、もちろん、その言葉の本当の意味など理解できませんでしたが、いまになって思えば、なるほどという気がするのです。

 現場には、現場にしか流れていない空気、風、においがあります。それは、その周辺に暮らす人たちがかもし出すものともいえます。あるいは、その地に古くからつちかわれている、広い意味での文化、風土のようなものかもしれません。

そうした空気や風、においを全身に浴びることで、体の中に強烈なエネルギーが湧いてくるのを感じました。ほぼ毎週そんな経験をしたわけですが、私にとってはとてもいい勉強でした。