「衛星都市」になっても埋没しない街

 7月30日に神奈川県海老名市、31日は茨城県の小見玉市に、朝日新聞「街魅しゅらん」の取材で行ってきました。どちらも予備知識がほとんどなく、こんなことでもないかぎりまず行きそうにないところですが、それぞれ大きな発見がありました。

 海老名というところは日本で初のシネマコンプレックスがつくられた街だそうです。小田急沿線とはいえ、東京からはかなり遠く、どちらかというと横浜のベッドタウンでしょう。しかし駅前は、ディズニーランドにでも来たのかと一瞬錯覚しそうになるくらい、えらくお洒落な感じがします。建物やその周囲の施設のユニークなデザインや色使いが、その要因なのでしょうか。

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 そんなことを思いつつ、駅から市役所に向かって歩き始めました。すると、この地域で古くから盛んだった農業に、市や地元の人たちがいまでも力を入れていることがひしひしと伝わってきます。駅から数分も歩くと、あたりはもう畑と田んぼにビニールハウス。しかし、駅前のマンションや商業施設とミスマッチの印象はありません。農業ががっちり根をおろしているという感じがするのです。

大都市近郊にある多くの街が、ベッドタウンであることにひきずられアイデンティティーを失ってしまう中、それを保っていられるのは、できそうでできないことです。それが、駅前の見かけだけでない、この街の魅力を高めているような気がしました。

 翌日出向いた小見玉市は、旧小川町・美野里町・玉里村の2町1村が平成の大合併で一緒になって生まれた街。地元関係者以外でその存在を知っている人がいたらめっけものでしょう。というか、地元出身者でもすでにそこを離れている人は、そのことを知らずにいるようです。

 それというのも、ラジオで、「私は美野里町の出身なのですが、いつの間にか小見玉市になってたんですね。知らない名前なので、びっくりしました」などという声が寄せられていたからです。来年3月には、市内に茨城空港が誕生するので、「小見玉」の名前がマスコミをにぎわすことでしょうが、それまではいまのまま、無名の状態が続きそうです。でも、これは考えてみると不幸な話です。

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 それにしても、こんなところに空港をつくって、利用者がいるのだろうかと心配になってしまいます。市内にもその周辺にもこれといった観光資源はありません。現在定期便の就航が決まっているのはアシアナ航空だけだそうですから、せいぜい、韓国からゴルフを楽しみにくる(需給がアンバランスで料金がえらく高い韓国に比べると、茨城・栃木は格段に安い!)人がいるくらいではないでしょうか。