沖縄で、皆既日食に興奮

 トカラ列島の悪石島に大勢のマニアが訪れているのをよそに、私はたまたま取材で着ていた沖縄本島・那覇で、46年ぶりという日食に出くわす幸運に恵まれました。日食観測用のメガネ(500円!)を片手に、太陽とにらめっこしながら午前中を過ごすことになったのです

 46年前といえば、私が中学1年生のとき。そういわれれば、ろうそくを燃やして出る煤をつけたすりガラスの破片を手にしながら、必死になって空をながめた記憶がよみがえってきました。それ以来のことなのですが、大人になっている分、どこかクールな自分がいます。

 それでも、実際それを目にすると、ドキドキするものです。名古屋でその昔見たのは、おそらく部分日食だったのでしょう。それが沖縄ともなると、92%も太陽が欠けるのですから、あたりがかなり暗くなるのではないかなどとあらぬ想像をめぐらせたりもします。

L1030247 日食が始まって15分ほど経過。もう3分の2以上消えている。

 でも実際は、そこまで行きませんでした。太陽のまわりにまん丸の虹みたいなものができ(これは不思議です!)、メガネを通して見る太陽が時々刻々と欠けていく幻想的な様子を目の当たりにすると、やはり素朴に興奮します。

L1030252 太陽のまわりにこんな神秘的な”虹”が状のものが見える

 本当は、一眼レフに望遠レンズとフィルターを用意したうえで撮るのでしょうが、それほどのマニアではありませんから、コンパクトのデジカメのレンズに、500円の日食用メガネをかぶせて撮る、まったくの急ごしらえ。それでも、まずますの映像が撮れるので、私としては十分でした。

 それにしても、こういう珍しい天体のショーを見ると、ゾクゾクしてしまうのが人間なんですね。いまでこそ、何月何日何時何分何秒まで、皆既日食が起こるなどということが事前にはっきりわかるわけですが、そんな情報など一切なかった大昔の人たちは、いったいどうだったのでしょうか。突然あたりが暗くなり、気温も下がり、気がついたら太陽が姿を消してしまっているのですから、よほど恐ろしいことが起こったと、うち震えたのではないかと思うのです。おそらく、そのとき人々は自然に対する畏怖の念を抱いたことでしょう。

 科学の力ですべてが明かされてしまっている現代人と、そうでなかった昔の人たち。どちらが幸せなのか、そんな疑問もわいてきます。