モンゴルでお勉強

 8月12日から6日間、モンゴルに「研修」で出かけました。現在日本経済新聞で堺屋太一氏が小説「世界を創った男」を連載中ですが、その堺屋氏が首都ウランバートルで開催するセミナーへの出席が目的です。昨年(2006年)、チンギス・ハンによる世界統一800周年を記念してユニークなイベントが大々的に開催されました。当時チンギス・ハンが率いていた軍団を模した500頭の騎馬軍団が繰り広げるパフォーマンスです。今年もそれがひきつづきおこなわれているため、世界各地から見物客が訪れていました。私たちの研修旅行にも最終日にその見学が組み込まれていたのですが、聞きしにまさる迫力でした。

 モンゴルといえば何より、広大な草原と、どこまでも青い空です。この催しが開催されたのも、ウランバートルから車で1時間ほど走った郊外。モンゴルは、ウランバートルこそ都市化が進んでいますが、それでも都心から30分も走ればそこはもう住宅もまばら。見えるのは、伝統的な住居=ゲルばかりです。もともとが遊牧民の国で、人々はゲルに住まいながら羊や牛を放牧し、しばらくたって草がなくなったら、次の放牧地をめざして移動します。だから、隣人といっても、何十キロも離れたところに住んでおり、次に会うのはいつのことやらもわかりません。こういう社会では、朝晩の挨拶といっても、家族の間ならともかく、隣人どうしではないに等しい。挨拶の言葉はとおりいっぺんの「おはよう」とか「元気」といったものではんく、きわめて具体的な内容をともなっています。「水の出ぐあいはどうだ」とか「どこか、いい草の生えてるところを知っているか」といったぐあいなのです。

 狭い島国・日本のように、相手の心の機微を推測しながら……などという挨拶など存在しないわけで、そうなればどうしたって、細かなことを気にしてなどいられなくなります。横綱・朝青龍が日本の相撲の伝統がわかっていないとか、横綱の品格がウンヌンなどと批判する向きがありますが、そうしたこととはおよそなじまないのがモンゴルの人々なのです。そうした、歴史と風土に裏打ちされた価値観や風俗・習慣にまで目を向けずに、日本で相撲を取っているのだから……とやみくもに批判してもナンセンスなのではないかという気がするのだがどうでしょう。

 それにしても残念なのは、これだけ近いところにこれほど素晴らしい国があるのに、日本人の観光客がまだまだ少ないということです。たしかに、日本人の大好きなブランドものを買える店は皆無です。テレビで紹介されるよう世界遺産もありません。しかし、そこには、スケールの大きな自然があり、そして普遍性を秘めた世界王国の土台となるものの考え方がまだ根づいています。そうしたものを体感できる場所は、世界広しといえども、なかなかないのではないかと思うのですが。

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