月別アーカイブ: 2010年6月

琉球紅型でつくってもらった表札

サッカーのワールドカップで日本代表が決勝トーナメントに駒を進めた興奮がまださめやらぬ昨日、那覇の新都心・おもろまちにある県立美術館・博物館に行きました。今年4月、ひょんなことからその存在を知った虹亀商店(http://nijigame.ti-da.net/)の亀谷明日香(写真中央)さんに製作をお願いしていた「紅型(びんがた)の表札」が完成、それを受け取るためです。L1040704

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受け取り場所をそこにしたのは、この日、「沖縄慰霊の日」にちなむ行事の一つとしておこなわれている「沖縄平和詩歌祭」に、彼女の造った「紅型灯籠」が展示されていたからです。これは、俳句や短歌、詩を一つひとつに、異なる絵柄(文字は同じ書体)の紅型をほどこし、木枠で囲った裏側から電球を点灯するというものです。造形的なコンセプトとしてはそれと似通っているのですが、なんとも味わい深い紅型の絵柄と色づかいによるユニークな表札ができ上がり、感動しました。

65年前、本当の戦争があった場所で

6月23日、ここ沖縄では「祝祭日」の扱いで、役所や学校は休みです。といっても、この日には「祝」の要素もなければ「祭」の要素もありません。太平洋戦争で、日本国内唯一の地上戦がおこなわれた沖縄。その最終決着がついたのがこの日で、沖縄における戦闘で亡くなった、24万人もの戦没者の霊を慰める日なのです。「戦没者」といっても兵士だけでなく、その多くは民間人であったことが、沖縄の大きな特徴です。

L1040699_2 この日を中心として、沖縄県内ではさまざまな行事がおこなわれ、人々が「戦争」に思いをはせる時期になっています。早朝から深夜まで、「戦争は絶対許さない!」という言葉をひんぱんに見聞きします。年に1回といってしまえばそれまでですが、多くの人が「戦争」について深く、真剣に考えさせられるチャンスがあるのは、ほかの都府県では見られない現象といえます。それでも、「戦争体験が風化しつつある。このままでは後世に伝わらない」と危機感を抱く人も少なくないようです。

22日に沖縄入りした私と家人は昨日、菅直人新総理も列席・挨拶をしたという式典が終わったころを見計らって、本当南部の糸満市摩文仁(まぶに)にある平和祈念公園に出かけました。着いたころから雨が降り始めたのですが、この日は早朝から戦没者の遺族をはじめ、多くの人が訪れていたようで、雨を気にするふうはありません。アメリカ軍の砲弾や銃弾、火炎などを雨あられと浴びせられたことに比べればどうということない、との思いでしょう。

L1040695地元沖縄の戦没者は市町村別、それ以外の人は道府県別に、「平和の礎(いしじ)」にその名が刻まれ、どの礎の前にも多くの花束が手向けられていました。もちろん、戦前は日本の植民地だった朝鮮や台湾、樺太、さらにはアメリカ兵のものもあり、こちらの前にも小さな花輪や国旗が置いてあります。すでに65年も前のこととはいえ、実際に戦争がおこなわれた場所で、その当時の悲惨きわまりない状況を想像するのは、遠く離れた場所にいるのとでは、格段の差があることを痛感したしだい。こんなところでも、「アナログ主義」は、人間に深い影響を与えるのです。

天才アラーキーよりもっと天才、その名は荒木一郎

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自他ともに天才と認めるアラーキーこと荒木経惟は写真家です。たしかに、アラーキーの写真は、独特のエロティシズムがあますところなく表現され、間違いなく楽しめます。でも、分野は違うものの、天才度にかけては、アラーキーの上を行くのではないかと思われるのが、苗字は同じ「荒木」なのですが、日本のシンガーソングライターの元祖といわれる荒木一郎です。

若い人にはあまりなじみがないかもしれませんが、私くらいの年齢の者にとって、とりあえずミュージシャンとして、その存在感は圧倒的なものがあるのではないでしょうか。ちょうど私が高校に入ったばかりのころ、ラジオから流れてくる彼の曲を聴いて身震いした人は少なくないはずです。

その荒木一郎が6月13~15日、大胆不敵というか、なんと3日間連続のライブをおこないました。これほど大規模なライブは8年ぶりだそうです。ライブで3日間連続というのは珍しくないでしょうが、日によって内容がすべて違うというところにユニークさがあります。1日目は、10代のころ、まだ歌手になるとかいう話などない時期につくって歌った曲、2日目は歌手として全盛をきわめた20代のころの曲、そして最終日は、それより後、どちらかといえばほかの歌手や俳優のためにつくった曲で構成されていました。

L1040679 会場は、東京・世田谷区の北沢タウンホールという、地味なところです。下北沢の駅から徒歩3分ほどのところにあるのですが、基本は区役所の分庁舎。その2階に400人弱収容のホールがありました。客のほとんどは50代以上でしたが、関西や名古屋あたりから、このライブのためにわざわざ上京してきた人も少なからずいたようで、荒木一郎への支持の根強さが感じられます。もちろん、3日間とも満席。私も毎日通いましたが、なんとも素晴らしい内容でした。

ミリオンセラーになった「空に星があるように」「今夜は踊ろう」「いとしのマックス」「君に捧げるほろ苦いブルース」の4曲は毎日聴かせてくれました。しかし、ほかにも「梅の実」「海」「あなたといるだけで」「傷だらけの栄光」「あなたのいない夜」「ジャスミンの花は咲いてますか」「夜明けのマイウェイ」など、次から次とヒット曲を歌ってくれました。よく知られている作品の中で歌わなかったのは「ジャニスを聴きながら」くらいでしょう。MCもさえさえで、それだけ聞いていても飽きないところなど、たいしたものです。

若いころは気づきませんでしたが、今回思ったのは、その後シンガーソングライターとして名を成していったミュージシャンにも荒木一郎は多大な影響を与えたのではないかということです。たとえば、ひとつの曲の中で何度も転調する手法など、松任谷由実の専売特許のように言われますが、荒木一郎は10代のころからそうしたテクニックを盛り込んだ曲をいくつもつくっていますし、詞に表現される都会性も、こんな時代からと思わせるほど、卓越したものを感じさせます。そんなこともあるからでしょう、いま活躍中のミュージシャンにも、荒木一郎をリスペクトしている人は多いようです。

さすが天才、小説を書いたり、映画とかかわったり(俳優として、また監督として)など、さまざまな分野で活躍してきた荒木一郎。最近は音楽界での活動がめっきり減っていますが、それでも、その天才ぶりはいっこうに衰えを感じさせません。3日間、通しで楽しませてもらい、本当によかった! というのがいつわらざる実感です。

Thank you,荒木一郎!!

今年初めての著作『アナログ主義の情報術』を上梓

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昨年は結局、『名古屋脳』の1点しか上梓できませんでした。それも3月ですから、それからもう1年以上がたっています。これはまずいよなぁ……。そんなことは百も承知、二百も合点なのですが、去年4月から1年間続いた、朝日新聞(東京版)の連載コラム「街見しゅらん」が、週1回だというのに、思っていた以上に重かったのです。でも、ようやく、今年の1点目をこのほど出すことができました。タイトルは『アナログ主義の情報術』といいます。

版元は、ご存じないかもしれませんが梧桐(ごとう)書院といい、ここのところ次々と意欲的な企画を出している出版社。編集長とは20年来の付き合いで、昨年秋、この企画を依頼され、4月初めにようやく脱稿したしだい。カバーはシンプルで、それをはずした表紙(カバーを外した本の本体)には、私自身の仕事場で撮影していただいた写真がアレンジされています。全体としてシンプルな中に上品さがただよっていて、大いに気に入っています。

さて、中身ですが、タイトルから想像がつくように、近ごろ世の中を席捲しているデジタル的な情報収集・処理より、アナログ的な手法のほうがはるかに生産性が高い、しかもこちらの頭も柔軟かつ新鮮な状態を保つことができるから、結局はお値打ちですよという、私の独断的な考えにもとづいています。

詳しくはお買い求めのうえお読みいただくとして、新聞の電子版(日本経済新聞)や電子書籍など、i-Padが発売されたこともあり、デジタルの情報媒体はこれから先、想像を絶するような発展を見せるにちがいありません。しかし、だからといって、そればかりに頼っていては、私のような仕事は立ち行かないでしょう。デジタルの価値を否定するわけではけっしてありませんし、その利点は利点としてフルに活用しながら、これから先も、アナログ主義に足場を置きながら活動を続けていくのがいちばんだと、あらためて自覚したしだいです。

「がーまるちょば」が教えてくれる万国共通語

L1040655 土曜日(5月29日)の夜、新大久保にあるグローブ座でおこなわれた「がーまるちょば 東京凱旋公演」を観に行ってきました。がーまるちょばというのは日本人の2人組(ケッチとHIRO-PON)、国内でもさることながら国際的に有名なサイレントコメディー(パントマイム)の芸人、というよりアーティストです。ちなみに、がーまるちょば(Gamarjobat)とは、「こんにちは」を意味するグルジア語とのこと。

前後半あわせて2時間ほどの公演でしたが、ひとことも言葉を発せず、ただただしぐさと表情だけで観客をクギ付けにするのですから、感動してしまいます。とくに、後半1時間にわたって演じられた「BOXER」という演目は、素晴らしいのひとことです。その意味では、機関銃のようにしゃべりまくるお笑い芸人の、まさに対極的存在といえるかもしれません。

言葉を口にしないことでかえって国際性を持つというのも、考えてみるとおもしろい話です。逆に、しぐさと表情には、それくらい強烈な国際性があるということの証しでしょう。男も女も、大人も子どもも、だれもが楽しめる「がーまるちょば」、ぜひ一度観てみることをおすすめします。これまで海外26カ国で公演しているというのも納得できます。