「第九」で体の芯から熱くなった

●”ベートーヴェンの全交響曲制覇”のラストはもちろん「第九」です。「第九」で思い出すのは高校2年のときの文化祭。名(迷)物のクラブ対抗合唱大会で、私の属するラグビー部の選んだのが、なんと「歓喜の歌」。それも原語(ドイツ語)で歌おうというのですから、これはもう”神をも恐れぬ所業”と言っていいでしょう。
●準備期間は3日。練習を終えヘトヘトの体に鞭打ちながら、「フロイデ シェーネル ゲッテルフンケン トホテル アウス イーリージウム……(Freude,schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium……)」と大声を張り上げました。もちろん、付け焼き刃もいいところで本番はさんざんでしたが、体育館は大爆笑&大拍手。おかげでこの部分だけはいまでもソラで歌えます。
●さて、今回のバーンスタイン&ウィーンフィルのシネコンサートで気がついたことが。演奏時期が1978年前後=40年ほど前ということもあって、女性の楽団員が一人もいないのです。メンバーは気むずかしそうな顔をしたおじさんばかり。女性が多くソフトな雰囲気がただよう最近のオーケストラに比べると、いかにも硬い印象を受けます。ゲルマン民族らしいといえばそれまでですが、こんなところにも時代の隔たりがあらわれているのですね。
●それにしても、からだ全体で100人もの演奏者を自由自在にコントロールしていくバーンスタインの素晴らしさ。全方向に視線を送る、目をつむる、ときにはメロディーを口ずさみ、横を向き上を向き、前に乗り出し後ろにそり返る、表情は千変万化……一つの楽章を終えただけで汗だくです。聴いているだけの私も体が熱くなりました。会場を出て、夜の寒気に包まれ始めた恵比ガーデンプレイスをあとにするとき、「フロイデ シェーネル…」と口ずさんでいたのはご想像のとおり。

Facebook Post: 2020-12-18T21:41:40