コロナ禍でもタバコはうまい──私の「マイクロツーリズム」⑬

●「STAY HOME」に入って1週間。今日は天気もよかったので、少し遠出してみました。目的は、本所吾妻橋(ほんじょあづまばし・都営地下鉄浅草線)にある「たばこと塩の博物館」で開催中の「明治のたばこ王 村井吉兵衛」という展覧会。村井のライバルで、鹿児島県出身の岩谷(いわや)松平を拙著で取り上げたことがあり、それ以来関心を抱いていました。昨年の秋その開催を知り、ようやく願いがかなった次第。
●本所吾妻橋駅の真ん前には東京スカイツリーが。雲ひとつない冬の青空に立つスカイツリーのソフトな曲線が寒さを和らげてくれているかのようです。駅から歩いて10分ほどで到着。その昔、たばこと塩とアルコールの販売は、専売公社が独占していました。しかし、明治時代は、タバコの製造・販売が自由。それまで刻みタバコしかなかった日本にアメリカ風の紙巻きタバコが入り始めた頃で、京都の村井と岩谷の二人が熾烈な競争を展開しました。結局は国が専売事業化したため、どちらも手を引かされたのですが、岩谷が不遇な晩年を過ごしたのと対照的に、村井はその後も充実した人生を満喫します。
●それにしても、人間が生命を維持するのに欠かせない塩とタバコが同じ扱いを受けていたとは! タバコの常設展示のフロアには「客あればお茶より先にタバコ盆」「今日も元気だタバコがうまい」など、かつて一世を風靡したCMコピーが紹介されていましたが、いまからすると考えられない文言です。そういえば、昔は病院の待合室、駅のプラットホーム、飛行機の中……ほとんどどこでもOK。タバコが体に悪いなどとは、誰も考えていなかったのでしょうね。
●塩のフロアも見て回ったので、たっぷり1時間半楽しめました。その間入館者は私一人で、途中でマスクはポケットに。建物を出ると、脳が「聖なる儀式」を求めているのがわかります。入口に立つシンボルモニュメント(19世紀初めにスウェーデンのタバコ屋が看板として使用していたものが原型だそう)の前で、携帯灰皿片手に一服。脳だけでなく全身がリフレッシュし、めっきり元気になりました!

Facebook Post: 2021-01-19T20:39:25