2013年4月21日
前日の夕方から京都へ。今日は朝早くに所用を済ませ、9時4分京都駅発園部行きの嵯峨野線(=山陰本線)ローカル電車に乗り、福知山へと向かいました。途中、亀岡という駅で特急「はしだて1号」に乗り換え、10時40分着。京都から30分も走らないのに、保津峡の駅を過ぎると、都会の喧騒とはまったく無縁といった感じの田園風景が広がり始めることに改めて驚きます。
それでも特急が停車する亀岡とか綾部はまだ「町」で、福知山ともなると、駅もえらく大きくて立派です。それもそのはず、福知山は山陰本線、福知山線、北近畿タンゴ鉄道(KTR)の3線が交わる交通の要衝ですから。その昔、ここには旧国鉄の大きな車両基地があったため、いまでも駅のすぐわきにJR西日本の支社があります。
まだ小学生のころ、母親と弟の3人で名古屋から東海道線で京都まで行き、山陰本線の夜行寝台に乗り換えて山口県の萩市(東萩駅)まで行ったことがあります。そのとき、この福知山駅でけっこう長い時間停車し、興奮して眠れずにいた私は列車の窓から、信じられないくらい多くのSL(蒸気機関車)を目にした記憶がかすかにあるくらいですから、よほどその数が多かったにちがいありません。いまでも駅前にはSLが1台飾られていますし、市内にはその時代をしのぶ記念館もあります。
さて、福知山です。北近畿の交通の要衝というわりには、それほど多くの人を見かけるわけではありません。10年ほど前に完成した駅舎はまだ新しく素晴らしくきれいなので、レストランや商業施設もさぞかしたくさんあるのかと思いきや、餃子の王将と和民、あとは小さなローカルのカフェがあるのみ、昼食を食べようにも、選択肢がありません。結局、美しくはあるものの人通りがほとんどない駅前で唯一存在感を示していたインド料理店でカレーを食べたのですが、これがえらくおいしかったです。満席だったのも無理ないことです。
市内を2時間半かけて歩いて取材しました。駅を背にかつての中心商店街を抜け、明智光秀を祀った御霊(ごりょう)神社を観たあと、寺町(といっても3カ寺)から川沿いの旧城下町へ。そこに治水記念館という、あまり観光スポットらしくない名前の施設がありました。この町は古くから、市内を流れる由良川という川の氾濫・洪水に苦しめられていたそうです。2003(平成16)年10月、日本列島を直撃した台風23号で、福知山より少し下流にある舞鶴市でこの川の堤防が決壊、あふれた水のためにツアー客ら37人を乗せた観光バスが立ち往生し、乗客全員がバスの屋根に避難して約9時間後に救出されたということがありました。その川なのです。
治水記念館では、毎年のように襲ってくるそうした水害とこの地の人たちがいかに戦い、いかに克服してきたかということが学べるのですが、けっこうおもしろかったです。川の堤防のすぐ脇にあるのですが、もともとは旧城下町の呉服屋さんだった建物は、1953(昭和28)年の大洪水のときも流されずに済んだとかで、説得力があるのです。それにしても、「最初の治水は明智光秀が城を築き、城下町をつくったとき、川を付け替えたのが始まり。ですから、ここでは光秀は大恩人なんです」という言葉には心がこもっていました。
治水記念館の裏手はすぐ堤防。その上を歩いて城に向かいます。途中、なぜこんなところに? と思わせる洋館に出くわしました、えらく広い敷地に建っているのですが、重要文化財のようです。「足立音衛門」という名の洋菓子(私も古いですね、「スイーツ」のことです!)屋さんの持ち物のようで、店舗は、堤防の下を走る城下通りに面して建っていました。 見てのとおり、普通よくあるスイーツの店とはまったく趣が違うので、ちょっと見ただけでは何の店かわからないのではないでしょうか。結局、時間もなく立ちよることはできませんでしたが、通販でも商品は買えるようですし、東京・銀座の松屋デパートにも店を出していることがわかりました。えらく人気のあるお店みたいです。
さて、戦国末期に明智光秀が築いた福知山城。外側は木造なので、大変味わいがあります。つい最近目にした木造の大洲城はまだ新しい感じがありありとするのですが、ここは修復された25年以上を経ているせいか、それなりの風格も感じました。もちろん、丸岡城(福井県)ほど風雪に耐えてきた歴史は見て取れませんよ。中身は例によって、全国どこでも同じ風でどうということはないのですが、外装のユニークさはやはり出色でしょう。
この福知山城は年中休みなしですが、ほかの施設の休館日が「火曜日」に設定されていることに感心しました。観光地であろうがなかろうが、全国どこでも、美術館や博物館といった公共施設は月曜日が休館とほぼ相場が決まっています。
ところが、これだと困ることがあります。それは、たとえば週末から月曜日までというスケジュールを組んでも、そうした場所には行けないからです。外側だけ見ればOKという建物もなくはないのですが、内部もきちんと見学したい場合はそれが大きなネックになり、日程を短縮あるいは変更せざるを得ません。その点、福知山の場合は火曜日ですからとてもありがたいのです。自分たちの町を観光地として位置づけるのであれば、ほかのところも大いに見習っていいのではないでしょうか。ただ、福知山の場合、行きたいと思う施設が少ないのが難点でした。