プロリーグ化の成功は、スポンサー企業しだいかも

2019年11月13日
今回のワールドカップはこれまでで最高の成功を収めたというのが、ラグビーの国際統括団体WR(ワールドラグビー)の総括だったようです。WRがめざしているのは、ラグビーを世界中に拡大すること。サッカーに比べるとまだまだ広がりを欠くラグビーにとってこれは絶対的な課題で、いまの熱が冷めないうちに、次の一手をどう打つかがとても重要になってきます。ポテンシャルが予想していた以上に高いことがわかった日本のマーケットを最大限活かしたいとの考えも芽生えたのではないでしょうか。大会が終わって早々に、イングランド、スコットランド、アイルランドなど「ティア1」の国々とJAPANのテストマッチが組まれたことでも、それがよくわかります。

ただ、この先どのような方向に進むにしても、いちばん重要なのは当事国である日本です。本当なら、前大会でJAPANが南アを相手に大番狂わせを演じたのを機に、ラグビーへの関心はもっと高まってもよかったはず。しかし、日本ラグビー協会はじめ関係者が、南アに勝ったという出来事を十分咀嚼しきれなかったのか、年が明けてしばらく経つまでボーッとしていたのが響いた部分もあります。そうでなければ、日本唯一のプロチーム(サンウルブズ)の「スーパーラグビー」除外をおめおめと受け容れてしまう、それもW杯開催の直前に!──などということは本来あり得ない話でしょう。

この一件についてはいまだどこからも納得の行く見解が明らかにされず、私のようなポジションにあるファン(数的には日本国内でいちばん多いと思います)にとってはミステリー以外の何物でもありません。伝え聞くところによればお金の問題が重いようですが、「スーパーラグビー」に参戦することの意味をきちんと理解していない人が協会の周辺に少なからずいたにちがいありません。

サンウルブズの除外決定をくつがえすのも重要ですが、それ以上に力を入れてほしいのはトップ・リーグの盛り上げです。年明け1月からスタートするトップ・リーグは、どのチームの陣容を見ても、これまでにない充実ぶりです。今回のW杯を戦った選手が10人以上、かつてティア1の代表としてプレーした経験を持つ選手も籍を置くことになります。そうしたチームどうしの戦いにいかに多くの観客を呼び込むかが勝負になるでしょう。

それにはメディア対策(テレビなら地上局とBS)が一つの大きな柱になりそうです。毎週末に「今週のトップ・リーグ」とでも題して、金曜日は見どころの紹介、土・日は全試合のダイジェストを解説付きで流すくらいのことはしないとダメでしょう。プロ野球もJリーグも皆それを実行してきました。また、SNSも活用してほしいものです。これは協会と参加全14チームが文字どおり「ONE TEAM」となって展開しなくてはなりません。

これもまだウワサの域を出ませんが、2021年からはトップ・リーグをベースに新たなプロのリーグをスタートさせるそうです。とりあえずは、今回W杯の試合を開催した12の都市に1チームをということになりますが、現状からすれば、正直12チームはハードルが高そうな気もします。ラグビー熱が伝統的に高い九州とはいえ、3チーム(福岡・熊本・大分)は多すぎるでしょう。となると、福岡で1+熊本か大分で1の、合わせて2チーム。

関西には3チーム(大阪・兵庫・京都)あってもよさそうです。W杯のJAPANの選手のインタビューを聞いていてお気づきの方も多いでしょうが、いまも昔も優秀なラグビー選手は関西からというのは変わりません。さらに東京は2チーム、神奈川・埼玉に各1チーム、愛知で1チームは順当なところ。ただ、釜石は心配です。ラグビー専用のスタジアムはあるものの、交通の便となるといまひとつ。昔から強い秋田、さらに宮城(仙台)も取り込んで1チームが妥当ではないかという気がします。サッカーJリーグに2チームある静岡もビミョーな感じがします。あとは北海道ですが、札幌よリ函館、あるいは思い切って道東の根室・釧路あたりか。中国・四国はいまの段階では難しそう。これで足し算をすると、静岡と北海道を入れて12チームにはなるのですが。

従来のトップ・リーグ的なコンセプトを完全に断ち切るとなると、観客の集め方も相当知恵を絞る必要があるでしょう。Jリーグ、Bリーグと同じように地域ごとのスポンサーをまんべんなく集めなくてはなりません。もちろん、その前にプロリーグ全般をスポンサリングする大手企業を確保すること。たとえば、今回のW杯も含め、長らくテストマッチのスポンサーを続けてきているリポビタンDの大正製薬。同社は特定のチームというより、日本のラグビー界全体を支える存在であってほしいですね。

また、今大会でウェールズ代表の練習の様子がニュースで紹介されたとき、ジャージにISUZUの名前がプリントされているのに気がついた人もいるでしょう。実はISUZUはスバルとともに、同国代表チームのスポンサーになっているのですが、どちらも日本国内ではラグビーと縁がありません。オーストラリアのDAIKINはじめ、世界各地のラグビーを見ると三井不動産、NISSUI、asics、三菱自動車の名も見えますし、W杯ではキヤノン、三菱地所グループ、大成建設、TOTO、NEC、SECOM、ヒト・コミュニケーションズもスポンサーに名前を連ねていました。このほか、これまで日本のラグビーとまったくかかわりを持ったことのない有名企業も含め、果敢にアプローチしていってほしいものです。豊富な資金を確保した上で、知恵者・切れ者がかかわっていけば、短期間のうちに斬新なアイデアが浮かび上がり、それを実際の形にしていくのも難しくはないでしょう。(共同通信)

最近めきめきファンを増やしているのがプロのバスケットボール=Bリーグです。テレビ報道などを見ると、若い女性から高齢者まで、その層が広いのが特徴だといいます。きっかけはイケメン選手、かわいいグッズ……など人それぞれのようですが、なんであろうと関係ありません。それがきっかけでファンのすそ野が広がれば、いずれその周辺で実際にプレーする人(主に子ども)が増えるからです。千葉ジェッツや川崎ブレイブサンダースなど、大都市周辺にこうしたパターンが多いようです。

もう一つは強烈なローカリティーでしょう。チームの地元が官民一体となってサポートしながらチームを育てていくことで、その地域全体が活性化していくというパターンです。琉球ゴールデンキングスが代表でしょうか。ただ、ポイントは、そのチームが強くなること。今回のJAPANのように、強ければサポーター、ファンはさらに増えていきます。そこから生まれるパワーが選手、チームに伝わるとますます強くなるという好循環が生まれます。

Bリーグの広がりはすさまじく、2019-20シーズンは全国に36チーム。準加盟やライセンス不交付のチームまで含めると40を軽く越えています。さすがに、これは多すぎるかもしれません。すでにサッカーJリーグが全国に定着し、そこへBリーグが加わっていささか過剰なところへ、さらにラグビーが加わるのはけっして容易なこととは思えませんが、いまの熱さが保たれているうちなら、なんとかなるような気がします。