2019年9月23日
21日のニュージーランドvs南ア戦の試合終了時間が遅く、翌22日の試合も同じ横浜、キックオフが16時45分と早めだったので、スタジアムから歩くだけで済む新横浜駅上のホテルに泊まりました。同じような考えのファンも多かったようで、ホテル内はそれっぽい人が目立ちます。
キックオフまで時間に余裕があるので、中華街でランチでもと思い出かけてみました。多少予想はしていましたが、まあ大変な人出です。それも通常の土日と違い、外国人のグループがそこここに。メインの通りは朝の丸の内地下通路状態でした。W杯開催期間中に国慶節(10月1日)と双十節(10月10日)という二つの休日があるので、その日はおちおち歩いてなどいられないのではないでしょうか。
22日はアイルランドvsスコットランド。予選で日本と同じプールの強豪です。日本が決勝トーナメントに進むには、できれば両国とも、最悪でもどちらかに勝つ必要があります。前回大会で、南アに勝ったあと、中4日で戦って負けたスコットランドは何がなんでも蹴落としたいので、この試合はできればアイルランドに勝ってほしい、それもボーナスポイントなしで、というのが正直な気持ちです。
試合前の国歌演奏では両国とも国歌(National anthem)とは異なる歌(Anthem)を歌っていました。スコットランドは独立国ではないので、これはよくわかります。でも、アイルランドは普通の独立国ではないかと誰もが思うことでしょう。しかしラグビーの世界では、そのアイルランドに加え北アイルランド(こちらはイギリスに属している)も加えた形でチームが構成されているのです。そのため、選手たちの国籍は最少でも2つ(外国人や移民も加えればそれ以上の可能性もあります)で、「(アイルランドの)国歌」を歌うわけにはいきません。そこで、1995年のW杯からは、ラグビー用に作られた「アイルランズ・コール(Ireland’s Call)」を歌っています。ちなみに、スコットランドは「フラワー・オブ・スコットランド」という曲です。能書きより、実際に聞いたほうがその素晴らしさがわかります。日本人が聴いても、勇気をかきたてられそうになる曲調にシビレますよ。これもYoutubeでどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=pH5I2Y4BBjw
国歌だけでなく、国旗もアイルランドは2つ(1つはアイルランド=緑+白+橙、もう一つはイギリスに属する北アイルランド=アルスターの旗)。スコットランドも当然ユニオンジャックではなく、紺地に白の斜め十字です。
そもそもラグビーでは「イギリス」から4つもの「国」が出ているのですね。イギリスはUK(United Kingdom)というように、正式な国名はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国です。そのグレートブリテンもイングランド、スコットランド、ウェールズという3つの「国」から成っています。そのどれもが出場するのですから不思議というか不公平というか。オリンピックや世界陸上は「イギリス」なのですが。サッカーはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの「国」があり、アイルランドは本来のアイルランドとして出ています。
試合のほうは、現在世界ランキング1位のアイルランドの一方的な勝利でした(27対3)。オールブラックスのような派手さはありません。スタープレーヤーもほんの数えるほどです。しかし、鉄壁のディフェンスは相変わらず。相手のスコットランドとは何度も
戦っているので手の内は十分わかっているのでしょうが、それにしても、スコットランドのいいところを完璧に封じ、ノートライに抑えました。
しかも、アイルランドが前半あげた3つのトライはすべてフォワードによるもの。“トライはバックス”というのが半ば常識ですが、フォワードが文字どおり「前へ前へ」と突き進むので、チャンスをつかむのもフォワードの選手なのです。この試合ではバックスが、これまた文字どおり後方で強力な防御を見せていました。タックルの成功率は95%と、新聞のスポーツ欄にありましたが、これはもう驚異の数字です。その昔私は「アタックル」という言葉を教えられました。タックルは防御のためだけではなく、それを起点にアタックに転じていくのが本当のタックルなのだという意味です。
後半4つ目のトライを奪いボーナスポイントも獲得。私たちの願いはかないませんでした。そして、この強くてしぶといアイルランドとJAPANは28日に戦うのです。でも、負けてもともとという開き直りと、相手を混乱させるような変幻自在、それでいて緻密な攻撃を仕掛ければ活路が開けるかもしれません。最悪でも7点差以内に抑えボーナスポイントを獲得してほしいものです。怖がったりしてはいけないのです。
中華街でもスタジアムでも、この日は緑のジャージを着たアイルランド・サポーターの姿が目立ちました。私たちの席の後ろにも数十人のグループが陣取っていましたし、大きな声を上げ、試合前とハーフタイムのときは巨大な国旗を持ったサポーターがスタンドを走るなどという光景も(サッカーではよくありますよね)。世界一の大酒飲みとも言われるアイルランド人ですから、試合後は横浜の随所で“緑の雄たけび”が聞かれたのではないでしょうか。