コルマールで観たピカソの『ゲルニカ』

2016年8月3日

ホテルで朝食を済ませ、近くのウンターリンデン美術館に。もともとは修道院だった建物を改装してできたそうです。実はこの美術館こそが、今回の旅を実行する最大の動機でした。家人が“女子会”旅で沖縄に行った折、県立美術館に特別展示されていた『ゲルニカ』のタピストリー──世界に3つあるそうです──を観たと。その1つがここに展示されているという話をしてくれました。素材は布ですから、当然絵とは趣がまったく違うけれども、一見の価値はあるというのです。残りの1つは群馬県立美術館が所蔵しているそうですが、残念ながら常設展示はされていません。となると、その現物を観るには……ということになったわけです。

それとは別に、私は以前から「アルザス・ロレーヌ」というところに行ってみたいという思いがありました。小学生のころ国語の授業で習った『最後の授業』という話が頭の片隅に残っていたからです。

プロシア(いまのドイツ)との戦争(普仏戦争)で負けたため、アルザス地方の領有権がフランスからドイツに移されることになった。明日からドイツ領になるという日、この地の小学校の教師が「今日はフランス語で授業ができる最後の日」という話を子どもたちにする。でもみんなはフランス人なんだから、フランスを愛し続けるんだよ──。そんな内容だったと記憶しています。

この話を習ったとき、私は子ども心にこう思いました。「明日から授業は全部英語になる」なんてことになったら、どうしよう……。そんなことが起こるのは、実際どんなところなのかこの目で確かめてみたい。というわけで、『ゲルニカ』と『最後の授業』がくっついたわけです。「ついで」というか「つなげること」は旅の大きなポイントになるというのが、私の持論ですから。

もっとも、そういう場所だからこそ、『ゲルニカ』も展示する意味があるのでしょうね。家人の話では、タピストリーのほうはオリジナルの絵よりふた回りほど小さく、色合いも違うとのこと。ここでは、前面がガラスで保護されていました。布のほうが傷みやすいからでしょう。それでも、そこに描かれているメッセージは強く伝わってきます。ほかにもピカソの作品がいくつか展示されていましたし、来て本当によかったと思いました。

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午後はコルマールから車で30分足らずのところにあるエギスハイム(Eguisheim)へ。ここもまた「フランスの最も美しい村(Les plus beaux villages de France)の1つに選ばれているだけあって、おとぎ話の舞台のような街並み。

ここでもまた、日本語音声ガイド付きのプチトランが走っていました。それによると、4世紀にローマ人が初めてぶどうの苗を植えたことで、アルザスワイン発祥の地として栄え、現在でも40軒ほどのワイナリーが営業を続けているのだとか。なるほど、そういわれて観てみると、深い歴史が感じられます。

DSC_0380何より素晴らしいのは花を活かした景観美。どの家の窓にも鉢植えの花が美しく飾られ、道路端にも大小さまざまな花が。その色彩に合わせたかのようなコロンバージュ(木組みの家)の家も壁の色が微妙に異なっています。日本でも近ごろは、花を活かした町づくりがあちこちでおこなわれていますが、こちらはやはり年季が違います。花の種類はもちろん、色彩や配列のセンスだけでなく、その周りの建物や噴水、街灯などとも実によくバランスが取れているのです。何より、建物が風格(お金をかけているという意味ではありませんよ)歴史を感じさせるものばかりですから、深い味わいがあります。

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夕食は、そろそろ“縦メシ”(日本料理もしくは中華料理)が食べたかったので、街中探し歩きましたが、ネットで見つけた店は全部、消えていました。結局、ホテルのレストランにします。中庭に置かれたテーブルで食べた食事は最高! 最初は「予約でいっぱいなので」とお断わりされたのですが、「泊まっているんだから」と、半ば強引にすわってしまったら、まったくノープロブレムでした。