試合前からハンパなく疲れていたJAPAN

2019年10月22日

JAPAN、負けました! やはり地力の差としか言いようがありません。何日か前に披露した私の妄想──南アに勝ち、準決勝でウェールズもしくはフランスに勝ち、決勝でニュージーランドと戦う……もあえなく打ち砕かれてしまいましたが、しょせんは妄想なので、お許しのほど。

20日の試合、前半が終わった時点で3対5という僅差。見かけはJAPANの大健闘という印象ですが、それより目についたのは南アフリカのミスの多さ。いいところでノックオンやスローフォワードなどのハンドリングエラーをしてしまい、なかなか得点に至りません。選手もかなりフラストレーションをためていったようで、その象徴が前半ラストの場面。トライかと思われましたが、レフェリーの笛が鳴りません。プロジェクターで見ると、タックルされたらボールからいったん手を離さなければならないのですが、それを忘れそのまま持ち込んでいたのがはっきり映っていました。「なんとか1本トライを」と気が早っていたのでしょうね。

それにしても、これまでグラウンドを縦横無尽に動き回っていたJAPANがこの日は、時間の経過とともにどんどんへたっていくのがうかがえました。スクラムは押される、ラインアウトはマイボールを奪われる、モールは押される、パスを回そうとすると強烈なタックルを浴びる、そればかりか持ったまま押し戻される、密集でボールを奪われる(ジャッカルですね)、キックしても相手にキャッチされ逆襲される……。前後半を通じ、これまでのようにボールが5人、6人とつながる場面がほとんど見られませんでした。

その原因は南アのチョー素早いディフェンスです。「オフサイドぎりぎり」「いや、ひょっとしてオフサイドじゃないの」と言いたくもなるほど、南アのディフェンスは前に出てきました。しかも、早いこと、早いこと。今大会でこれほど早いディフェンスは、初めて見ました。

ハーフタイムで、南アのヘッドコーチが選手たちを覆っていたフラストレーションを拭い去る魔法をかけたのか、後半は規律を保ち、のびのびとプレーしていたように思います。単純なミスも減りました。それにより、持ち前のフィジカルの強さがいよいよ生きてきます。選手交替でグラウンドから出ていくJAPANの選手は皆ヘトヘトの様子。代わって出てくる選手の表情にもそれが乗り移ってとまでは言いませんが、何かはじけた様子が感じられません。これまでの4試合はすべて「ヨーシ、オレの出番だ!」といった雰囲気がしていたのですが。

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後半に入り3本のPKを決められ3対14になった時点で、「なんとか1本、トライを決めてほしい」という願いに切り替えました。そうしたことを一瞬期待させる場面も1、2回はあったのですが、逆にラインアウトからのモールをなんと40メートル近く押され、最後はハーフの金髪ロン毛のデクラークに持ち込まれ、ほぼジエンド。この試合を象徴するようなシーンでした。デクラークは試合を通じて縦横無尽の活躍を見せ、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いています。

南アは百戦錬磨のチームで、フィジカルもさることながらゲームコントロール、攻撃、ディフェンス、レフェリーとの駆け引き、選手層の厚さ、すべてにわたりJAPANを上回っていました。言うならばこれが「ティア1」の壁なのでしょう。日本は今大会「ティア1.5」くらいまではレベルアップできたと思います。しかし、その先に立ちはだかる分厚い壁は一朝一夕で突き崩せるものではありません。

また、最初から予選プール、準々決勝、準決勝、そして決勝まで見据えて選手を起用していくプロセスに慣れている南アのようなチームと、まずは決勝トーナメント進出が目標というJAPANとでは、選手の意識、フィットネスコントロールも違っていそうです。
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選手は「疲れている」「どこそこが傷んでいる」などとは、口が裂けても言おうとしないはず。ただ、コーチ陣はそれをキャッチしているにちがいなく、スコッド31人の状況を踏まえながら出場メンバー23人、先発メンバー15人を決めていったのでしょう。しかしJAPANの場合、31人のうち、FW第1列の北出卓也、木津悠輔、同3列の徳永祥尭、ハーフの茂野海人、BKのアタアタ・モエアキオラの5人は最後まで、ジャージを着てグランドに出ることはありませんでした。

決勝トーナメントに進んだほかの7国はすべて、スコッド31人全員が出場しています。要は手駒の数がそもそも違っていたということです。ちなみに、南アで予選プール4試合とも出場していた選手は7人、ただしフル出場はゼロ、一方JAPANは16人、うちフル出場はラファエレティモシー、松島幸太朗、姫野和樹、ラブスカフニの4人もおり、全員がそろってタックルしまくっていました。しかも姫野とラブスカフニはFWですから、消耗の度合いもハンパではなかったはずです。

考えてみると、このハンディは大きいですよね。ほかの7国が31人の中から試合ごとに23人を選んでいるのに、JAPANは26人からなのですから。予選プール4試合を、全員が心身とも疲れの極致にあるのはわかっていても、補充が利かないのです。もちろん、使ってみたらどうだったのかという疑問は残ります。でもジェイミー・ジョセフの目からすると、5人は残念ながら力不足と判断せざるを得なかったのでしょう。

決勝トーナメントに進むまではそれでもなんとか間に合ったのですが、結局のところ、そこから先となると、チーム総体としての力がいまひとつ足らなかったとしか言いようがありません。次大会以降はこうした問題を解決すべく準備を進めていく必要がありそうですね。