2017年5月4日
出発前に国内で予約しておいた、市内のあちこちを自由に見て回れるホップオン・ホップオフスタイルの観光バスでまずはおさらいです。「コロン劇場」の前から乗って市内の南東部を観て回りました。ボカ地区が中心ですが、「カミニート」という観光名所は初めてだったので大感動。ブエノスアイレスでもいちばん古くから開けていた場所で、カラフルに塗られた外壁の家並みが特徴的。北半球でいうとちょうど11月の上旬と同じ季節なので木々が紅葉しており、この界隈にもそうした木が。それが街並みにも文字どおり色を添え、いっそう美しく見えました。
昼食は、前日も訪れた「ガレリアスパシフィコ」地下のフードコートで。ファストフード系の店が多い中、この「ポスタベッキア」という店だけは別格のよう。ここに入って、牛肉の炭火焼きステーキを食べました。えらいボリュームで、味はハイレベル、しかも安いこと。女性が一人でふらっと立ち寄り、ワイン1杯と各種の炭火焼きステーキをささっと食べていきます。さすがアルゼンチンですね。
午後はまずエビータ博物館へ。エビータはミュージカルの作品にもなった、元アルゼンチン大統領ペロンの夫人エバ・ペロンのこと。地方のごく普通の家、しかも私生児として生まれ、若いころはウエイトレスやモデル、娼婦を生業としていましたが、声優や女優として次第に名を上げていきます。それが、当時まだ軍人(といっても、軍事政権下で副大統領兼国防大臣兼労働局長の任にあった)フアン・ドミンゴ・ペロンに見初められ結婚。
その後ペロンが大統領になったため、突然ファーストレディーになります。その生い立ちから国民的な人気を得るようになった、現代版シンデレラといった風の女性。32歳の若さでガンに斃れたこともあり、伝説の人になっています。100ペソ紙幣にも描かれていることからもその人気ぶりがうかがえます。ただ、その一方で、過去の来歴、あるいはファーストレディーとして公私混同と言われても仕方のない行動が目立ったため、存命中は批判する者も多かったようです。
続いて足を運んだのは「日本庭園」。あまり期待していなかったのですが、ここがなんと大当たり! この種のスポットは“「日本」とは名ばかり”とまでは言わないものの、結構いい加減な造りをしていたりして、がっかりさせられることが多いのですが、ここは違いました。まず、お金をしっかりかけてあるのが一つ。庭園自体も素晴らしいですし、季節柄、鯉のぼりが上がっていたりなど、随所にさまざま工夫が凝らされ、観る者を飽きさせません。しかも、来場者が多いのです。日本人は一人も見かけませんでしたが、あちこちからやってきた外国人観光客は真剣な表情。近ごろはどこの国に行っても、「日本の文化」が注目されていることを実感しますが、それはこの地でも同じようです。
この日のバス観光で最後に立ち寄ったのが、「世界で2番目に美しい書店」と言われる「El Ateneo Grand Splendid(エル・アテネオ・グラン・スプレンディド)」。もともと劇場だった建物を改装して作られたのだそうで、荘重な印象さえあり、観光名所になっているのも納得です。1階と2階がメインのようで(ところどころにソファー風のイスが置かれていて、そこに腰をおろして本を試読しているお客も)、3階は壁に絵が展示され、休憩場風になっていました。
ただ、「2番目に美しい」と言われると、「じゃあ、1番はどこなの?」と気にかかります。もともと、このランキングはイギリスの新聞「GUARDIAN」が2010年7月に「The world’s 10 best bookshops」と題して発表したものだそうです。日本では、京都の「恵文社」という書店が選ばれているとのこと。なかには、世界遺産になっている書店もあるようで、ぜひ一度のぞいてみたいと思います。