月別アーカイブ: 2022年5月

初めての国立競技場━━試合は◎、スタンドは✕

●2019年10月のワールドカップ以来、2年半ぶりでラグビーを生で観戦しました。今年からスタートした「リーグワン」の決勝で、会場は国立競技場。1月5日の開幕戦に行くはずだったのですが、選手にコロナ陽性が出て試合が中止になり、半年近くおあずけに。試合のほうは素晴らしい内容で、3万4千の観衆も大満足だったにちがいありません。


●ただ、期待していた競技場にはガックリ。座席の前後がとんでもなく窮屈で、席が列の中ほどだったりすると、いったん座ったら最後、ハーフタイムまでまったく動けないのです。オリンピック用に新設したのに、こんな狭苦しい座席に、日本人より半回りは体が大きい外国人を座らせていたら……と思うと、無観客開催にしてホントよかった!


●この日の最高気温は31℃。さかも、私たちの座ったバックスタンドは試合中ずーっと日が当たりっぱなし。2時間もしたら日干しになってしまうのではないかと心配になりました。そもそも、この時期によりにもよってPM3時キックオフというのも信じられません。7月9日のフランス戦も同じだというのですから、主催者はいったい何を考えているのやら。


●それと、ラグビーの日本一を決めるイベントなのに、プログラムの紙切れ1枚もらえないのにも失望しました。ニュージーランドやオーストラリア、イギリスではふだんの試合でも、プログラムはそこかしこに山積み。チームのTシャツやノベルティーグッズ(はっきり言ってチープなものがほとんどですが)とか、バンバン配っています。まあ、仕切っているのが「おっさん」ばかり(2022/3/5ご参照)ではこれも致し方ないか。(2022/5/30)

「北前船」の祝賀会で、五木ひろしさんが熱唱

●歌謡曲を、それも生で聴くなんて、何年ぶりでしょうか。ひょんなきっかけで「北前船寄港地フォーラム」に関わり始めて早11年。「フォーラム」はその後発展・拡大の一途をたどり、「交流拡大機構」がスタートして6年、開催回数はすでに30回を数えています。5年前、寄港地の多くが「日本遺産」に指定されたことも追い風になりました。


●金曜日の夜、それを祝う会があり、全国から300人を越える方が出席。夕方5時からの新型コロナウィルスの抗原検査に始まり、中締めが9時という長丁場でしたが、まったく疲れないというか、むしろ元気が湧いてきました。直接人と会って言葉を交わすのが、コロナ禍にやられている私たちにとって最高のクスリのようです。前日参加した50人ほどの会合は話を聞くだけのワンウェイでどっと疲れただけに、それを強く実感した次第。


●祝賀会の最後は、歌謡界の大御所五木ひろしさんが登場し、自身の作曲による新曲「北前船」と「港町恋唄」を披露。五木さん自身、北前船の寄港地がいくつもある福井県の出身とあって、曲作りにも力が入ったそうです。その言葉どおり、ドラマチックな、それでいて親しみやすい歌に仕上がっていました。


●「北前船フォーラム」の次回開催地はなんとフランスですが、主催者もこうした展開は想像していなかったでしょう。この日の東京は昼過ぎまで猛烈な雨。それに打たれながらも、我が家のアマリリスは大きな花を咲かせていました。フォーラムにとっても、ここ2年続いているコロナ禍が、思いもかけぬ拡大・発展を促す役割を果たしてくれたのかもしれません。(2022/5/28)

排骨飯を食べたら、台湾に行きたくなりました

●歯医者に行ったついでに、新大久保で台湾の駅弁メニューの一つ排骨[パーコー]飯を食べました。魯肉[ルーロー]飯は家でも簡単に作れますが、排骨飯は、いい骨付き豚肉が手に入れにくく、しかも油で揚げなくてはならないので億劫になり、外でということになります。


●ただ、これを提供するところがなぜか少ないのです。たまたまネットでその店のことを知り、さっそくトライ。骨こそ付いていませんでしたがカラっと揚がっており完食、大満足! 私たちにとっていま現在”最後の海外旅行”となっている「台湾一周鉄道の旅」に行ったとき食べた、池上驛の排骨飯便當(弁当のこと)を思い出しました。2020年1月、コロナ禍直前のことです。


●我が家で最初に台湾を旅したのは家人で、20年ほど前のこと。話を聞き私も行ってみたところすっかりハマってしまいました。外国なのにストレスフリーでいられるのは、やはり波長が合うのでしょう。というともっともらしく聞こえるかもしれませんが、要は近い、安い、そして好みの食べ物が多いと(笑)。


●来月16〜19日、上野公園で「台湾フェスティバル」が開催されると聞き、とりあえず足を運んでみることにしました。コロナ禍が収束し、自由に海外旅行ができるようになったとき真っ先に行きたい国の一つが台湾。それだけに、香港やウクライナのような事態にならないよう心から願っています。(2022/5/21)

森と海の不思議な力が、絵と書を呼吸させるのかも

●”大人の社会見学”小田原&真鶴編”の2日目です。高校の同期生が━男子でも━7人もそろうと、話にとめどがなくなり、布団に入ったのは午前1時過ぎ。干物の朝食を済ませると、しゃべり過ぎて喉が……と、さっそく「ういろう」のお世話になるメンバーもいました。


●周りを散策に出ると、民宿の裏手から東映映画のオープニング映像で有名な巨岩(+波しぶき)のある海岸まで「お林」と呼ばれる大きな森が広がっています。「お」が付いていることからもわかるように、もともとは皇室の御用林。「お林」は俗称らしく、正式には「魚つき保安林」といって、魚の繁殖、保護を目的として海岸や湖岸に設けられた森林のことだそうです。


●森林の土に含まれる栄養分が地下水と一緒に海に流れ出るとプランクトンが繁殖、豊かな海を育てます。また、木々が直射日光を遮断して水温の急激な変化を防ぐなど、海の生物の繁殖を促す役割も。おいしい魚介類が穫れるのに大きく貢献しているというわけです。


●お林の一角に、生前この地で過ごした中川一政の個人美術館が。コンクリート打ち放しの建物ですが、周りの木々に溶け込むような感じがします。そこから少し歩くと相模湾が大きく開け、この日は向かい側の初島もくっきり見えました。アトリエがあったのもそのあたり。97歳まで創作を続けた中川の作品は天衣無縫というか、油絵も書も力みがなく、のびのびしています。彼が装丁した向田邦子の『あ・うん』は、まさしく”ジャストフィット”。森にも海にも備わる不思議な力が彼の才覚をいっそう刺激したのかもしれません。(2022/5/18)

改めて感じた、生産地でしか手に入らない物のありがたみ

●小田原駅から南へ、正面に城の櫓[やぐら]を見ながら歩くこと15分。国道1号線に面した所にその建物はあります。外観は城のようですが、「ういろう」という薬と和菓子を売る店です。1368年中国の元が滅び、日本の博多に亡命した一人の外交官が陳外郎と名乗り明から輸入したのが始まり。その後京都に移り朝廷に仕えていましたが、応仁の乱で焼け野原となってしまったため、1504年、北条早雲の招きで小田原に移り、店を開いたそうです。お菓子のういろ(う)は全国に広まりましたが、薬はここ小田原だけにしかありません。


●店の裏手にある博物館でその歴史を話してくださったのは、25代目の御当主。この日参加した高校時代の仲間6人全員、薬のほうを購入しました。というか、いまどきまれな、ネットでは販売していない(郵送も不可)ので、お店で買うしかないのです(それも1人3箱まで)。全国を相手にするとすぐ売り切れてしまい、地元や近隣の人たちが必要になったとき買えないからだといいます。「小田原で長く商売させていただいていることへの感謝」とは御当主の言葉。


●すぐ隣の蕎麦屋さんで昼食を済ませ、真鶴[まなづる]の料理民宿へ。ひと風呂(温泉ではありません)浴びたあと、地魚の刺身舟盛り+煮魚+焼き魚を囲んでの夕食となりました。宿の真ん前の海で獲れた魚しか出さないのがこの宿の信条だそうで、マグロ、ハマチといった刺身の定番もナシ。肉料理はもちろん、野菜の付け合わせ等も一切ありません。


●そのため色彩的には地味ですが鮮度は抜群、しかも美味。〆の伊勢海老の味噌汁もおいしくいただきました。山間[やまあい]の温泉宿で刺身が出てくるのを昔から疑問に思っている私も納得。「お客さんっていっても、ここらの人ばっかだからね」とは女将の言。地元への愛を最優先しているのが感じられます。どこにいてもすべて手に入るのが当たり前といういまの時代、なんだかホッコリした気持ちになりました。(2022/5/17)

なじみの薄いデザイナーズホテル━━でも、心地よかった

●浜松から名古屋までは新幹線で30分足らず。”楽器の町”ならではの駅ピアノを横目にホームに上がり、乗った車両はガラ空きです。名古屋駅近くの中華料理店で中学時代からの友2人に再会。やたら話し好きの店員さんもときおり巻き込みながら大盛り上がりし、スリーショットの写真を撮ってもらうのを忘れてしまうほどでした。


●さて、今回の旅で泊まった2つのホテルは対照的でした。1泊目は、出入口のフロアにはピアノの鍵盤、ロビーにはバイオリンとピアノ、窓には楽譜と、浜松らしく音楽にちなむデザインやツールがそこここにあしらわれている老舗ホテル。朝食のレストランの名もFigaro(フィガロ)でした。部屋はオールドタイプですが、慣れているので落ち着きます。

●夜は、高校の同期生がオーナーシェフの洋食店で弟夫婦と。コロナ禍の影響を心配していましたが、営業を続けていて何よりでした。二人と会うのもほぼ3年ぶりで、積もり積もった話に花が咲き、いまは人と会って話をするのが元気の素であることを実感。

●2泊目の名古屋は、最近増えてきたいわゆるデザイナーズ風。このテのホテルはなじみがなく心配していましたが、スタッフのカジュアルな服装も、ロビーや部屋のしつらえもすこぶる心地よかったです。朝食はプリフィックスというか、固定の部分(3パターンから選ぶ)+パンやスープ、フルーツ、サラダ、飲み物などを自分で選ぶスタイル。”和洋なんでもそろっています。お好きにどうぞ”式のフルバイキングが苦手な私にとっては、ありがたく感じられました。(2022/5/7)


浜松式の乾杯「やらまいか!」で元気いっぱい

●今年のGWでいちばん混んでいなさそうな5/5〜7の期間を利用し、旧友たちと会いに浜松&名古屋へ。初日の5/5は浜松です。たまたま「浜松まつり」の最終日で、呼び物の一つ大凧揚げ大会がおこなわれていました。徳川家康の城下町時代の町ごとに作った大凧を遠州灘の中田島砂丘で揚げる催しで、100年ほど前から続いているそう。浜松は空っ風が有名ですが、それを利用してのことでしょう。


●この日は風がいまイチでしたが、地上では各町の若い衆が、ベテランの指揮で糸を引いたり伸ばしたりの”重労働”。士気を鼓舞するラッパの音が乾いた空気に力強く鳴り響き、それに合わせるかのように凧が広い空を舞います。


●凧揚げのあとは駅の近くでご当地名物の餃子。といっても居酒屋で、はからずも昼飲みとなりました。乾杯は、年長者が「やらまいか!」と声に出したら同席者が「おいしょ
お!!」と応じ、グラスに口をつけるというのがこの店の流儀。「やらまいか」(やってやろうじゃないか)は、新しいことに積極果敢に挑む、この地方特有の進取の気風を示す言葉で、お店の人に教えられたとおり声に出すと元気になります。ヤマハ、河合楽器、ホンダ、スズキの淵源[えんげん]はこれなのかと納得。


●夜は、各町に伝わる山車[だし]が辻々に止められ、私たちを楽しませてくれます。本来なら全部合わせて数十台ある山車がそろって行列するのですが、コロナ禍でここ2年は取り止め。今年ようやく各町内を練り歩くまではOKになったそうで、法被[はっぴ]を着込んだ人たちの表情も生き生きしていました。浜松人の「ケ」の充実は、こうした「ハレ」がある故なのでしょうね。(2022/5/6)

駅と街の姿は変わっても、住まう人は……

●読んだり見たり聞いたりして興味を引かれた事物があったら、可能なかぎり自分の五感で確認しないと気が済まないのが私の性分。それができずにいると、ストレスがたまってしまいます。というわけで、先日の山陰ツアーでご一緒した高齢の姉妹から聞いた西武池袋線富士見台駅近くの中華料理店に、さっそく行ってみました。テーブルが5つしかなく、私たちがすわると、開店直後だというのに早くも満席。

●メニューには、「メリハリのある力強い後味をめざす」と、オーナーシェフの言葉が。ジャコと青ピーマンの炒飯にトライしてみると、見かけとは真逆であっさり・さっぱりした味つけなのですが、たしかに後味はしっかりしています。BGMで流れるシャンソンの影響かもしれません(笑)。

●帰りの電車に乗ると2つ目が、1993年から2004年まで住んでいた石神井[しゃくじい]公園駅。ふと思い立ち降りてみたのですが、高架化と同時に駅周辺が大々的に再開発されたため、以前の面影がほとんどないのです。観光案内所までできていたのには驚きました

半世紀ほど前の石神井公園駅北口はこんな具合でした(練馬区HPより借用)

。●そういえば、かつて私の住んだ町にある中央線の武蔵境駅も、西武池袋線のひばりヶ丘駅も、京浜東北線の川口駅も、都電の鬼子母神[きしぼじん]停留所も、その周辺は大変貌。もともとの雰囲気を残しつついま風になっていればいいのですが、後者だけが際立ってしまうと、没個性になりかねません。ただ、見かけはどうあれ、街の個性・空気感を作るのはやはり、そこに住まう人々ではないかという気がします。(2022/5/5)

藤のない「藤まつり」━━ガックリは食で癒す

●今年のGWは最長10連休もありなのだとか。コロナ禍もなんとなく落ち着きを見せ始めてきた感じもあり、遠出する人が増えているようです。3日目の5月1日はあいにくの雨、気温も冬に逆戻り。ならば人出も少なかろうと身勝手な願いを抱きながら、亀戸天神社に行ってみました。

●ちょうど「藤まつり」のただ中で、境内は薄紫に染まっているのではと期待したのですが、なんと花は99.9%散っていました。ツツジもまだぼちぼちで、まわりはガッカリしている人の姿ばかり。緑一色の藤棚の先に見えるスカイツリーも、心なしかさびしそう。人間、期待度が高いほど、裏切られたときの落ち込み感も増しますが、今日がまさしくそうでした。

●この時期の亀戸天神社のウリは藤なのですから、もう少しサービス精神があってもいいのではとも思うのですが……。ウェブサイトに「明日から3日間がピーク」とか「見頃は過ぎましたが、ツツジがそろそろ」といった告知を入れるとか。祀られている菅原道真も、「東風[こち]吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主[あるじ]なしとて 春な忘れそ 」と詠んでいますよね。

●実は数日前にも、METオペラ今シーズンの新作「ナクソス島のアリアドネ」@新宿ピカデリーでガックリ来ており、これで2イベント連続の不発です。新宿では寿司を食べて癒やしましたが、今日はご当地の名物くず餅。ただ、それだけではいまイチもの足りず、そのあと蕎麦を食べに上野へ向かいます。ここのところフラれ続けていたお店ですが、今日はすんなり入れ、小海老と玉ねぎのかき揚げ蕎麦に大満足。亀戸で思い切り下がったテンションもやっと回復しました。(2022/5/1)