月別アーカイブ: 2022年4月

母の母校は国の有形文化財になっていた!

●萩は、10年前に亡くなった母の出身地。高等女学校を出て間もなく、朝鮮半島の北西端、中国と国境を接する新義州[シニジュ]という町に一家で移り住みましたが、終戦後シベリアに抑留された父親(私にとっては祖父)を残し、母親(祖母)、弟(おじ)の3人で帰国したと聞いています。その母が通っていたのが明倫小学校。

●かつて藩校明倫館(1719年創立)があった場所に新築された(1935年)校舎で母は学んだようです。2014年まで使われていましたが、移転にともない旧校舎を修理保存、いまは観光拠点の一つになっています。せっかくなので、ツアー4日目、フリータイムを利用し見に行くことに。その前に、名刹東光寺にある祖父母のお墓参りもしました。

● 明倫小学校は外観からしていかにも由緒ありげ、国の登録有形文化財になっているのも納得です。現存する木造校舎としては日本最大規模だそうで、廊下の長さは90mも。復元教室も残されており、ここで母が6年間学んでいたのかと思うと、ウルウルしてしまいました。

●そういえば、我が母校愛知県立明和高校の「明」も、旧制明倫中学の「明」から採ったもの。その「明倫」は1783年に創立された尾張藩の藩校「明倫堂」に由来しています。どちらもルーツは同じというわけで、それもウルウルにひと役買っていたのかも。ちなみに、「明倫」は孟子の「人倫[じんりん]を明らかにする」という言葉から。それに少しでも近づくためにも、また旅に出ようと決めました━━な〜んて、こじつけですが。(2022/4/23)

知らなかったぁ! タバコにも花が咲くとは!

●ツアー旅行は中日に疲れが出ると言われますが、たしかにたしかに。前日、5時間以上かけて石見銀山を歩いたのですから、当然かもしれません。温泉で多少は癒えたものの、70を過ぎた体にはまだ不足かと。さて、3日目の行程は温泉津[ゆのつ]から山陰線で、赤い石州瓦に見とれながら益田まで。そこからバスで向かった先は4年ぶりの津和野(山口県)。小さな城下町で、50年前「アンノン族」であふれ返って以来半世紀、町ぐるみで観光に力を入れてきたようです。ただ、ホテル・旅館がわずかしかなく、”ついでに観光”の域にとどまっています。


●津和野は画家・安野光雅の生まれ故郷で、21年前にその名を冠した美術館が作られました。白と黒のなまこ壁がなんとも印象的。たまたま展示されていた名作『旅の絵本10オランダ編』の原画に、旅情をかき立てられます。


●昼食後は萩へ移動。こちらは10年ぶりです。萩観光の定番・松陰神社は藤が満開でしたが、それをはるかにしのいでいたのが、宿泊先の庭園。広い敷地に色合い、大小、高低などを配慮した植え分けがなされ、いくら見ていても飽きません。秀逸はタバコの花。葉のほうにはかれこれ50年以上お世話になっていますが、花は初めて。葉っぱの”毒性”とは似つかわしくない可憐さに心を打たれました。

タバコの花──毒性があるとは信じられません
こちらも品種は違うものの、やはりタバコ
これが支那藤


●もう一つは、花びらの大きな藤。支那藤という品種なのだとか。花や草木の手入れをしている女性が、庭園の階段の手すりやイスまで丁寧に拭き清めているところをたまたま目にしました。花だけでなくそれを囲む環境をもないがしろにしない心が、美しさをいっそう引き立てているにちがいありません。(2022/4/22)

昼は世界遺産の銀山、夜は日本遺産の神楽で石見[いわみ]を満喫

●「一畑[いちばた]電鉄」。日本一人口の少ない島根県内を走っている私鉄ですが、初めて乗りました。目的はコンビニに行くため(泊まったホテルが不便な場所だったもので)。JR西日本でさえローカル線の多くが赤字に苦しむ中、大丈夫なのかと心配になりますが、これがけっこう健闘しているようなのです。2両編成の車輌はかつて東急東横線を走っていた中古のよう。朝7時半頃とあって、乗客の9割は高校生でした。


●ツアー2日目のメインは世界遺産の石見銀山。戦国期から江戸中期まで、ここで掘られた銀は世界の主要国で貨幣の原材料になっていたそうです。佐渡の金と同じく鉱山一帯は幕府の天領で、代官所が置かれ、その周囲の町並みがみごとに保存されています。


●ここで採れた銀の積出港が、ツアー2日目の宿泊地・温泉津[ゆのつ]。その当時は北前船の寄港地としても大いに栄えた町ですが、いまは昭和30年代で時計がパタッと止まってしまったような雰囲気で、いまその面影が残っているのはおだやかそうな入江の奥にある港と温泉旅館の並ぶ細い通りだけです。ちなみに、耐火性に富む石見粘土で高温焼成され、硬く割れにくい大きな水甕[がめ]も北前船で全国各地に。それを焼く上がり窯[かま]もみごとでした。


●よくよく考えてみると、この県は「古事記」「日本書紀」に描かれている国生み神話の舞台。それもあってか、文化面での蓄積は並はずれたものがあります。その一つが日本遺産の石見神楽で、今回それをナマで観ることができました。会場は旅館近くにある小さな神社の拝殿とあって、舞いもお囃子[はやし]も目の前で迫力満点でした。小さな私鉄を支えているのも、数百年も続くこうした文化が生活の基底に息づいているからかもしれません。(2022/4/21)

まばゆいばかりの白い灯台に興奮

●日曜日から山陰の旅です。島根県は3年ぶり。朝10時の便なので、9時には羽田がマスト。となると東久留米からではちょいキツく、前泊しました。ピンクムーンの満月を見ながら部屋でゆっくりし、出発当日はいつもどおり5時起き。北アルプスを見ながらひとっ飛びで、昼前には出雲縁結び空港に到着。名物の出雲そばを食べ、大社[おおやしろ]へ。参道にウクライナを思わせる幟[のぼり]が立っていたのには驚きました。


●次に向かったのは鷺浦[さぎうら]地区。出雲大社から車で20分ほどの、日本海に面した小さな小さな漁村で、観光で訪れることはまずありません。しかし今回参加したツアーはなぜかここと温泉津[ゆのつ]が組み込まれており、それが参加した大きな動機。いずれも江戸から明治にかけて、北前船の寄港地としてたいそう栄えた港町なのです。


●鷺浦の集落を歩くと、「塩飽[しわく]屋」という看板を掲げたかつての回船問屋が。「江戸時代後期より明治にかけての船主で塩飽本島(香川県丸亀市)の塩を取り扱い財を成した」と説明されていました。北前船の果たした役割の大きさにいまさらながら感心しました。


●ただ、観光という見地からすると、この日の焦眉は日御碕[ひのみさき]。日本海に突き出た島根半島の先端に立つ白亜の灯台は海面から63.3m、地上から43.65mと、石造の灯台としては日本一の高さで、国の重要文化財にもなっています。この日は素晴らしい青空+おだやかな日本海に見るも鮮やかに映えていました。ツアーでなければ、日の入りの時刻までいたかったのですが、それはかなわず。後ろ髪を引かれる思いで出雲市に戻りました。(2022/4/17)

オランダ大使館のチューリップはまた格別

●日本国内にある外国大使館など、よほどのことでもなければ足を運ぶことはありませんが、昨日、オランダ王国大使館(公邸)に行きました。私にとってはキューバ、インド、ロシアに次いで4カ国目。キューバはビザの申請、インドは舞踊の発表会、ロシアはクリスマス演奏会でしたが、今回のオランダは公邸と庭園の見学です。


●休校日だった小4の孫も連れて行ったのですが、東久留米の駅で電車に乗った瞬間から、持参したメモ帳に鉛筆でしきりと何やら書き込んでいます。何時何分どこどこ行きの電車に乗る、〇〇駅で地下鉄△△線に乗り換える、◇◇駅で降りるとホームの案内板と首っ引き。駅の近くには□□病院、▽▽ホテルがある……。「4月8日 オランダ大使館への旅」と、タイトルまで書いてありました。うーむ、誰に似たのやら(笑)。


●大使館の場所は東京タワーのすぐ近く。門を入ると大使館公邸と広い和風庭園があります。その奥が事務棟(こちらは非公開)なのですが、さすがオランダ、庭園はもちろん、そこかしこにチューリップが。濃紺、紫、オレンジなど色も多彩多様で、見たことのない品種がほとんどです。


●大使館の公開は7年ぶりとのことで、たいそうな数の人が訪れていました。コロナ禍で海外旅行か長らくNGになっているせいもあるのでしょう。かといって、流行りのバーチャルツアーでは物足りないのも事実。私も気持ちを多少なりとも盛り上げようと、オランダ国旗に合わせ青・白・赤を組み合わせた服装で行ったのですが、考えてみるとこれはロシアと同じ! でした。思慮不足の自身を反省、呪詛[じゅそ]することしきり。(2022/4/9)

エジソンが、ゴッホが……。五感への刺激を堪能した一日

●東日本大震災の被災者100余人によるミュージカル上演の本を書くとき取材させていただいた方のお一人と、神田淡路町のイタリアンでランチ会食。7年ぶりの再会で話がはずみ、名物のパスタの写真を撮るのも忘れてしまうほど盛り上がりました。


●でも、この日最大の衝撃は、オーナーのSP盤レコードと蓄音機のコレクションです。店内にさりげなく置かれているのですが、これがなんと、かのエジソンが発明した蓄音機の現物。当時の音源は蠟管[ろうかん]といい、Campbellスープの缶に似た容器に収まっています。1枚ウン十万円はするというSP盤を130年以上前の蓄音機に載せ、かけてくださったのですが、その音の心地よいことといったら。ヴァイオリンソナタも歌謡曲もリアルそのもの、あまりの臨場感に圧倒されました。


●そのあと、すぐ近くにある神保町のギャラリーで開催されている刺繍の作品展へ。ひいきにしている目白の洋服屋さん━━いま風に言うとセレクトショップ━━のオーナーがFBで勧めておられたのですが、その”推し”がなければ足を運ぶこともなかったでしょう。”不要不急”と言われればそれまでですし。


●でも行ってみると、ゴッホの「星月夜」、北斎の「富嶽三十六景」を始めどれも皆、「ここまで……!?」と絶句してしまいそうな精緻さ。離れて見るとワクワク、近づいて見るとドキドキ、とでもいいますか。聴覚と視覚に、強烈な、それでいてすこぶる心地よい刺激を受けた一日となりました。(2022/4/8)

桜は散っても😢、春の本番はこれから

●新年度は、雨と風でスタート。東京は3・4日もずっと降りどおし、しかも真冬並の寒さとあって、拙宅ベランダからの夜桜もジ・エンドとなりそうです。といって、詩ごころとはほとんど無縁の私なんぞは、「あ〜あ、これでおしまいか」でしかありません。でも、そうした情景を目にしたときの心情を三十一文字に託される方もいるのですね。


●夜半さめて  見れば夜半さえ
  しらじらと  桜散りおり
   とどまらざらん
うーん、まさしくそのとおり! 作者の馬場あき子さんは数々の賞に輝いている93歳の歌人。先日のFBで、私が心底尊敬している福岡の出版社主がシェアした「完全保存版 絶対覚えておきたい! 究極の短歌・俳句100選」(3/27NHK-BSプレミアム)の中に紹介されていました。


●こちらは夜桜ではありませんが、散ってしまった桜を惜しむ歌(紀貫之)も。
 桜花 ちりぬる風の なごりには
  水なき空に 浪ぞたちける
なるほど、ですね〜! まるで私の前にそうした場面がリアルタイムで展開しているかのよう。どちらも、「究極」と讃えられるだけのことはあります。


●もちろん、桜が散ってしまったからといって、春が終わるわけではありません。拙宅の近くをさらさらと流れる小川のほとりを歩いてみると━━。小学生が水遊びに興じていましたし、レンゲやスミレはもちろんのこと、これまでその存在すら知らなかった花々も一挙に咲き始めています(それにしても、童謡「春の小川」はやはり名歌!)足湯やSIX PADも体には効きますが、自然の中を歩くのがやっぱり一番ですね。(2022/4/6)

「定番」にもいろいろありますが……

●先週の土曜日、久しぶりに車を走らせました。以前住んでいた豊島区まで行ったついでに、ひいきにしている蕎麦屋さんでランチを。相変わらずの素晴らしい味に舌鼓。以前は、そのあとケーキ屋に寄り、JA(農協)のショップで花や土・肥料などを買って帰るというのが”定番”のコースでした。でも、この日はお花見目的の車で道がけっこう混んでおり、まっすぐ帰ることに。それでも、両サイドから満開の桜の枝が伸びている道を2キロほど走ることができ大満足です。


●「定番」は「おきまり」「ルーティン」ともいいますが、メンタルの安定に欠かせない要素ではないでしょうか。ぐっすり眠るための「就眠儀式」とか、食後の一服とか、人それぞれ違いますが、私の場合、目覚めのコーヒーは欠かせません。


●コロナ禍になってからは、朝食後の足湯(足先の収縮した血管を広げ、血のめぐりをよくする)、夜のSIX PAD(足裏とふくらはぎを鍛える機器)の2つが新たに加わりました。この種の健康器具、以前はハナから無視していたのですが、ここ2年は時間にも余裕があり、家人にすすめられるまま、とりあえずトライしてみました。すると、意外や意外、どれも皆心地よいのです。


●面白いのは、勧めた当人がいまイチ持続しないということ。私のほうが「定番」化し、朝晩きちんと実践しているかたわらで、次の「体にいいこと」探しに打ち込んでいるようです。そっかー。彼女にとってはそれこそが「定番」なのかも。(2022/4/5)