月別アーカイブ: 2009年8月

広島人にとって「その日」とは?

 8月3日から、取材で広島に来ています。今回のテーマは、「その日」を迎える広島(人)の表情を追うこと。「その日」とはもちろん、8月6日、人類史上初めて、原爆が人間に向かって使われた日(1945年)のことです。

 すでに前々日あたりから、広島市には国内各地はもちろん、世界中から多くの人たちが次々と訪れてきています。ホテルはどこもみな満杯、私も2カ月以上前に予約を入れたのですが、それでも望んでいたところは取れませんでした。「その日」の前日、夕方に平和記念公園を歩きましたが、多くの人たちが精霊流しに加わり、被爆して亡くなった15万人もの人々の霊を慰めていました。

それにしても、「その日」に対する広島人の思い入れは、部外者の思いをはるかに上まわる強さがあるように感じました。前夜、市内随一の盛り場・流川の一角で食事し、そのあと立ち寄った近くのバーのオーナーが、「うちも、おばあちゃんが被爆して亡くなりましたから。店を閉めたら、その足で慰霊祭に行きます」と、しみじみした表情で語るのを聞き、そう思ったのです。

ここでは、いま、どんな状況にあれ、身内に被爆者がいる人はだれでも、「その日」をことのほか敬虔な思いで迎えるようです。それくらい、原爆は重く、また長く人々にのしかかっているのでしょう。人々のそうした素朴な思いに「反戦思想」や「平和主義」といった言葉をかぶせるのは簡単ではあるのですが、それだけではいい尽くせない気がしました。

 今朝、朝食もそこそこに、爆心地である平和記念公園の慰霊祭会場に行ったのですが、早朝からそこを訪れている人のだれもが、いつになく真剣な表情をしていました。かの田母神俊雄・前航空幕僚長は、「あの慰霊祭は実は日本弱体化の左翼運動だ。あそこに広島県民、市民はほとんどいない。原爆被害者も被爆2世もいない。並んでいるのは全国からバスで集まった左翼ばかりだ」と述べているそうですが、少なくとも私の見たかぎり、これはひどい事実誤認のように思えます。

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色あせたイデオロギー的な言辞ほど、広島の「その日」に似つかわしくないものはありません。そして、この一点だけ取り上げても、氏の〝インテリジェンス〟の欠如がはっきり示されているのではないでしょうか。

「衛星都市」になっても埋没しない街

 7月30日に神奈川県海老名市、31日は茨城県の小見玉市に、朝日新聞「街魅しゅらん」の取材で行ってきました。どちらも予備知識がほとんどなく、こんなことでもないかぎりまず行きそうにないところですが、それぞれ大きな発見がありました。

 海老名というところは日本で初のシネマコンプレックスがつくられた街だそうです。小田急沿線とはいえ、東京からはかなり遠く、どちらかというと横浜のベッドタウンでしょう。しかし駅前は、ディズニーランドにでも来たのかと一瞬錯覚しそうになるくらい、えらくお洒落な感じがします。建物やその周囲の施設のユニークなデザインや色使いが、その要因なのでしょうか。

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 そんなことを思いつつ、駅から市役所に向かって歩き始めました。すると、この地域で古くから盛んだった農業に、市や地元の人たちがいまでも力を入れていることがひしひしと伝わってきます。駅から数分も歩くと、あたりはもう畑と田んぼにビニールハウス。しかし、駅前のマンションや商業施設とミスマッチの印象はありません。農業ががっちり根をおろしているという感じがするのです。

大都市近郊にある多くの街が、ベッドタウンであることにひきずられアイデンティティーを失ってしまう中、それを保っていられるのは、できそうでできないことです。それが、駅前の見かけだけでない、この街の魅力を高めているような気がしました。

 翌日出向いた小見玉市は、旧小川町・美野里町・玉里村の2町1村が平成の大合併で一緒になって生まれた街。地元関係者以外でその存在を知っている人がいたらめっけものでしょう。というか、地元出身者でもすでにそこを離れている人は、そのことを知らずにいるようです。

 それというのも、ラジオで、「私は美野里町の出身なのですが、いつの間にか小見玉市になってたんですね。知らない名前なので、びっくりしました」などという声が寄せられていたからです。来年3月には、市内に茨城空港が誕生するので、「小見玉」の名前がマスコミをにぎわすことでしょうが、それまではいまのまま、無名の状態が続きそうです。でも、これは考えてみると不幸な話です。

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 それにしても、こんなところに空港をつくって、利用者がいるのだろうかと心配になってしまいます。市内にもその周辺にもこれといった観光資源はありません。現在定期便の就航が決まっているのはアシアナ航空だけだそうですから、せいぜい、韓国からゴルフを楽しみにくる(需給がアンバランスで料金がえらく高い韓国に比べると、茨城・栃木は格段に安い!)人がいるくらいではないでしょうか。