月別アーカイブ: 2008年3月

「リゾート」の意味するもの

 福岡から東京に戻った翌7日、今度は札幌に飛びました。来年のいまごろ刊行予定の単行本の取材です。明日はまた沖縄に移動します。

 沖縄・那覇に会社の分室を設けて9カ月。この間、何度も足を運びましたが、来るたびにさまざまな新しい発見があります。「時間がスローに流れる」という言葉を最近よく見聞きしますが、それを実感するのもその一つです。

 クルマで走っていても、首都圏のように「急(せ)く」ドライバーのなんと少ないことか。信号が黄色だと、たいていのクルマが停車します。赤に変わっても強引に進むクルマが多い首都圏などとはまったく違います。優先権のない通りからメインの通りに出ようとするときなど、驚くほどの寛容さで道を譲ってくれます。クラクションの音もめったに耳にしません。

 東京に長く暮らしていると、あわてない、急がないという暮らし方を、すっかり忘れ去ってしまっているのですが、そのことの不健全さを改めて実感するのが沖縄といっていいでしょう。

 東京から来るときは、ふだんのクセというか習慣で、つい多くの仕事を持ってきます。高い送料を払って、段ボール箱にぎっしり資料を事前に送ったりもしました。ところが、那覇の空港に降り立ち、その空気に触れたとたん、仕事モードは消えてしまいリラックスモードに支配されます。そこがまた、リゾート地・沖縄の魅力なのかもしれません。
「リゾート」という言葉の語源はフランス語の“resortir”で、「再び出かける」という意味だそうです。一回こっきりで終わるのでなく、何回でもそこに行きたくなる場所──ということでしょうか。そして、その地でもう一度自分を取り戻す、もう一度自分を見つめ直す。それを実現するための空気というか土台というか、そんなパワーを秘めているのが「リゾート」なのではないかと思います。

 だとすると、そういう場所に「仕事場」を設けること自体、なんだか矛盾しているような気もします。ただ、私個人についていえば、オフィスだろうが取材で出向く出張先だろうがリゾート地だろうが、そこにはいつだって「仕事」があります。どう理屈をつけようが、それから逃げることはできません。逆に言うと、どこでも、いつでもできてしまう仕事なのです。
 ただし、仕事モードの中で仕事をするのと、リラックスモードの中で仕事をするのとでは、おのずと中身が違ってくるかもしれません。来るたびに「自分を取り戻し、自分を見つめ直す」ことができるのですから、心強いことこの上ないとも言えます。その強みをこれから先の仕事に生かしていきたい、そんな殊勝な(笑い)ことを思いました。

これぞ絶品! の「たい焼」を発見

L1020157_2  今日、福岡から東京に戻りました。 福岡は雑誌の取材で行っていたのですが、取材先のひとつで感動した店があります。それは「日本一たい焼」という、その名のとおり「たい焼」屋です。取材でお邪魔したのは太宰府市にある本店で、1年間でなんと四百数十万個も売り上げるというのですから、ハンパではありません。もちろん、ここだけでなく、九州と大阪にある14店舗の合計ですが、それにしても、各店で1日千個以上は売っているわけで、それには確たる理由があるのでしょう。

 どの店も駅の近くではなく、ロードサイドにあります。そのため客は皆、クルマで買いに来るのですが、駐車場が何十台分もあり、土日・祭日ともなると、そこがギッシリ埋まるほどです。それくらい人気があるということでしょう。

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  この店のキャッチフレーズは「たい焼にも天然モノと養殖モノがある」。魚のタイも、天然もののほうが養殖ものよりはるかにおいしいのですが、同じたい焼でも、この店のものは、他の店に比べそれくらい差があるということを主張しているのでしょう。あんこを小麦粉で包んで焼いただけの単純なお菓子ですが、この店のたい焼は、もう頭のてっぺんから尻尾の先まであんこがびっしり。粉の部分はほんのわずかで、その皮がまたカリカリしているのです。身を二つに割るとポワーと湯気がでてきますが、そのにおいを楽しみながら舌をホコホコいわせながらあんこを口にすると、もうたまりません。

私自身、根っからのあんこ系(それも粒あん!)には目がないものですから、たい焼も大好きアイテムのひとつなのです。望むらくは、「日本一たい焼」が、東京近辺に店を出されんことを!

毎日が「ハレ」の日だといいのに……

 名古屋から那覇へ飛び、3月2日から福岡で雑誌の取材に明け暮れています。福岡も、ちょっと来ない間に大きく変わっており、驚きました。もともと舌の肥えた人が多く暮らしているので、飲食店の盛衰はめまぐるしいのですが、それにしても、まあ、よくぞこれほどまでにと思うほど、新しい店が次々とできています。

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 しかし、そうした中で何十年も続いているというのはやはり胸を張っていいでしょう。中洲にあるバー「七島」もそのひとつです。ちょうど、今回滞在していた3月3日に、開店50周年を迎えたというのですから、たいしたものです。その日の西日本新聞(夕刊)にも大きく報じられていましたが、オーナーの七島啓さんはすでに76歳。本当はとっくの昔に引退するつもりだったようですが、いまなお矍鑠(かくしゃく)としており、2人の娘さん(最子さん、理子さん)とともにカウンターの向こう側に立ち、シェーカーを振っています。
この店で以前、バーテンをしていた方が独立し、すぐ近くで、バーを開いている(これがまた出色の店なのです!)のですが、その店では、師匠が50周年を迎えたその日を祝うとともに、敬意を込めて、「七島」のコースターを使っていました。それを見て、なんともほほえましいというか、こういうことがさりげなくできる弟子を持った師匠をうらやましく思いました。

 福岡というところは名古屋などよりはるかにスマートな都会です。名古屋的な田舎の部分もけっこう残っているのですが、その一方で、とにかく「遊び」を大切にするというか、遊びの価値をよくわかっている人が多いので、遊びにいった人も心地よく過ごせるところなのです。「ハレ」と「ケ」という立て分けがありますが、福岡は年がら年中「ハレ」といってもいいようなところがあります。名古屋の場合、そのあたりはきっちり峻別されており、「ケ」のほうに重みが置かれています。そのため、数少ない「ハレ」の場ではドカーンと一発とばかりに大騒ぎする傾向があるのです。
もちろん、どちらがよくてどちらが悪いということではありませんが、人間やはり「ハレ」の時間が多いほうが、何ごとにつけエネルギーも高まると私などは思うですが、いかがでしょうか。