コロナ禍で海外の観光客が来なくなったらお手上げ、では情けない

● ツアー6日目は、大館宿からバスで30分、青森県との境にある矢立[やたて]峠から。標高258mとさほど高くはありませんが、天然の秋田杉の間を縫うように作られた遊歩道はまさに昼なお暗き態(てい)。吉田松陰、前田利家、伊能忠敬、高山彦九郎、明治天皇、大久保利通、イザベラ・バードなど、歴史にその名を残す人たちもこの地を訪れています。


●峠を下ったところにある碇ヶ関[いかりがせき]は江戸時代、箱根より厳しい取り調べがおこなわれた関所といいます。ここを抜けると温泉とスキーで有名な大鰐[おおわに]宿。一時は熱海と競うほどのにぎわいを見せていたようですが、いまその面影はまったくなし。


●コロナ禍の前は、全国の観光地の多くがインバウンド(といっても、そのほとんどは中国から)需要の恩恵に浴していました。さほど努力をしなくても次々やってくるツアー客に浮かれていた業者も少なくなかったはず。それがもう2年以上もストップしているのですから、沈没していくところがあっても不思議ではありません。


●インバウンドの中でもお金持ちに狙いを絞っていたところもあります。いまは国内の富裕層が相手なのでしょうが、1泊2食付きで1人5〜10万円もする旅館やホテルを利用する人がそれほどいるのかとなると。まして観光地としては地味な北東北ですし。「旅」に求めるものがますます多様化しているいま、どこまで創意と工夫を凝らせるかが、これからの浮沈を左右しそうです。(2022/7/23)