10年間で2000点! ゴッホは生き急いだのかも

●いまから130年ほど前、上野の不忍池[しのばずのいけ]では競馬がおこなわれていたそうです。池のまわりを周回するコースで、馬券こそ売られてはいなかったものの、鹿鳴館とともに、洋装で着飾った華族やお雇い外国人たちの社交の場として大いに盛り上がったのだとか。明治天皇も訪れたことがあるといいますから、本格的なものだったにちがいありません。
●10月8日は、そのすぐ近くに建つ東京都美術館へ、「ゴッホ展」を観に。完全予約制のため密にはなっていないものの、そこそこの混み具合でした。今回の展示は、さほど名を成していない頃からゴッホに注目し、作品を収集していたという実業家夫人のコレクション(いまは彼女の名のついた美術館に保存されているそうです)の一部48点(ほかにルノワール、ミレー、モンドリアンらの20点も)。
●ゴッホの活動期間はわずか10年ほどですが、その間になんと2千点もの作品を残していると知りました。たった1日で描き上げた油絵も展示されていましたが、シロウトの私が観ても、本当に? と思うほど重厚なできばえでした。驚いたのは、これが同じ人の手になる作品なのかと思わせるほど、筆致が大きく変わっていくこと。想像をはるかに上回る濃密な時間をエネルギッシュに生きていたにちがいありません。
●会場をあとにし、御徒町方面に向けて上野公園の中を歩いて行くと、夕日がちょうど落ち始めたところ。上野動物園で6月23日に生まれた双子のパンダの名前も「暁々」と「蕾々」に決まったようです。日暮れのあとにやってくるのは暁。コロナ禍でなかなか花開けずにいる蕾[つぼみ]も、そろそろパーッと━━そんなことを思いながら帰路につきました。(2021/10/9)

Facebook Post: 2021-10-13T13:43:10