台湾に行きたくなってしまいます

2013年7月15日
久しぶりに東中野ポレポレに行きました。知る人ぞ知るミニシアターです。収容人員100人余、スクリーンまで、いちばん後ろの席からでも10mほどでしょう。

今日は『台湾アイデンティティー』という、妙に固いタイトルのドキュメンタリー映画。3、4年前だったか、同じ酒井充子【あつこ】監督(1969年・山口県生まれ)の『台湾人生』を観たことがあり、その続編です。台湾という、実はとても複雑な国で生まれ育ち、その上に日本軍兵士として出征したり、日本統治時代に現地の師範学校で学んだり、奥さんが日本人だったり、父親が台湾人で母親が日本人だったりなど、さらに輪をかけて複雑な環境で育った人たちが、太平洋戦争終了後どんな人生を追いかけたもの。

スクリーンに登場してくるのは82歳から91歳までの台湾人(厳密には違うのですが)のお年寄りばかり、でも全員日本語ペラペラです。全員元気で、各人が自身の人生を語る口調には、それぞれの感慨があります「生まれた時代が悪かった」というのが共通した思いのようですが、といって、それをことさら悲しんでいるわけでも悔いているわけでもありません。「幸せだった」と確言するのです。

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台湾の持つ独特の雰囲気は、やはり大陸中国とは異なる歴史を刻んできたからでしょう。先住民族の顔つきを見ると、南太平洋系が混じっていることもありありと感じられ、そういう人たちの集落に漢字だけの垂れ幕やポスターしかない冒頭の場面など、なんともおかしな感じがします。観念の上ではわかっていても、実際それを目にすると、不思議な感覚にとらわれてしまうのですね。

父親が蒋介石・国民党政府の弾圧を受け銃殺された女性に、生前の父親が送っていた手紙の文章(日本語)の達筆で、しかも読みやすいこと、それと、小学校の教師をしていた男性が話している画面の後ろに見える机の上に「広辞苑」がさりげなく置かれていたのが印象的。台湾の摩訶不思議な部分がスクリーン全体から伝わってきて、また行きたくなりました。

登場人物の一人に、台北市内で旅行会社を経営する男性がいたのですが、その会社が画面に映ったとき、見覚えのある街が。家に帰って調べてみると農安街とわかりました。いつも止まるホテルから歩いて数分のところですから納得です。その会社が入っているビルの1階に「三井日式餐庁」とかいう文字が出ていたので、そこにも一度行ってみたいと、ひらめいた次第。いけたらまた、お知らせします。