最後の最後に大ドラマが!

 

2019年10月6日
名古屋駅から電車で小1時間。豊田市駅前は豊田スタジアムをめざす人、人、人で身動きもままなりません。日本のファンにとっては大注目のサモア戦。かれこれ50年以上ラグビーを見てきた私ですが、今日は最後の最後まで手に汗を握りました。ノーサイドまで10分を切ったところでスコアは25対19と、JAPANのリード。サモアが1トライ1ゴールを決めれば、逆転できます。逆に、JAPANはこれで勝ったとしても、簡単には喜べません。予選プールを突破するには、勝つのはもちろん、ボーナスポイント1を加えておきたいからです。ボーナスポイントで上回っておけば、スコットランドと引き分けても、最悪負けたとしても、決勝トーナメントに進めます。

 

 

  

でも、わがJAPANはそれをやってのけました。それも、ほとんど“神った”という感じで! 開始早々からサモアを常にリードしてきたものの、ボーナスポイント獲得のためには何がなんでも4トライを取る必要があります。残り10分弱で2トライはかなりきつかったのですが。3本目は福岡堅樹、そして最後は松島幸太朗が決めてくれました。

とくに4本目のトライは圧巻。80分を過ぎる直前、サモア陣ゴールポスト前のスクラムからNO8の姫野和樹がボールを持ち出しハーフの田中史朗に。田中から絶妙のタイミングで左にいた松島にパス、そのままトライ! 松島の笑顔が印象的でした。もちろん、3万8千の観衆は大騒ぎ。私たちも前、後ろ、横にすわっていた人とハイタッチしていました。

今日の私たちの座席が、これまでで最高のポジション。グランドから10数メートルで、しかも前から5列目。選手たちの表情がよくわかります。試合前のウォーミングアップを見つめるジェイミー・ジョセフの凛々しい姿もばっちり見えました。

面白かったのは、試合後の両チームの“交歓”風景。サッカーでは、よくユニホームを交換し合うのが普通ですが、ラグビーではそうした習慣はありません。今日も、肩をたたき合いながらお互いの健闘を称えるまではいつもどおり。ところが、そのあとサモアの一選手がジャージを脱ぎ、日本の田村優(だったように見えました)に差し出したのです。それを機に、10人近くの選手がジャージを交換。なかにはパンツまで脱いで渡しているサモアの選手も。

これはホント異例の光景で、初めて目にしました。文字どおり「ノーサイド」です。サモアの選手も、この日の試合内容は100%とは言わないまでも、そうとうズシリと来たはずで、感極まってのことではないでしょうか。JAPAN代表の中にサモア出身のラファエレ(バックス・13番)選手がいたことも関係しているかもしれません。しかも、この日最初のトライをあげましたから。

気になったのは、JAPANに反則が多かったこと。今日のレフェリーはJAPANに厳しいことで知られているようですが、それにしても……という感じは否めません。ラグビーのレフェリーはほかのスポーツと違い、ゲーム中に「指導」をします。両チームの「協力」がないとゲームがスムーズに進行しない面があるので、レフェリーはその方向に持っていこうと、あれこれ口をはさむのです。スクラムを組むときがいちばん顕著ですが、ほかの局面でもレフェリーの声、ジェスチャー、あるいは選手と話しているシーンをしょっちゅう見聞きするはず。レフェリーがどのような考え方でゲームを進めようとしているのか、それを早くにキャッチしたチームのほうが優位に立てるというわけです。レフェリーの「指導」を素直そうに聞く選手もいれば、「この野郎!」といった表情を見せる選手もいます。ただ、そした態度がまたあとで響いてこないとも限りません。逆に、そうしたことにこだわらないレフェリーもいます。そうしたことも含め、レフェリーと付き合うことが大事なのです。

さて、この勝利で、これかで以上に“にわかラグビーファン”が増えるのは間違いありません。ラグビーが日常の話題になるような世の中になればしめたものです。スタジアムから豊田市駅まで30分近い道のりは日本人の観客でビッシリ。夜空に浮かぶ半月のもと、誰もが大きな声を出して話し、騒ぎながら興奮していました。私ももちろんその一人。ただ、帰りの電車の中では次戦以降のことを考えていました。

スコットランドに勝てば予選プールA組1位で突破するので、決勝トーナメントの初戦はニュージーランドでしょう。しかし、これではベスト8止まりでジエンド。できれば2位で突破し南アフリカと当たるほうが、希望的観測ですが、わずかながら期待の目もあります。そして、前回大会に続き南アを負かすようなことになれば、間違いなく世界的なニュースになるでしょう。そんなことを夢見ながら、13日のスコットランド戦を迎えましょう。