ラグビーは球技である前に格闘技

2019年9月21日
今日はニュージーランド(オールブラックス)vs南アフリカ(スプリングボックス)。AからDまで4つある予選プールの対戦の中でも最高レベルで、なんだかもったいない感じすらします。6万数千人収容の横浜スタジアムにふさわしい試合と言えるでしょう。もう一度この両国の対戦があるとすれば、決勝か3位決定戦しかないので、絶対に見逃せません。

というわけで、私たちもキックオフの3時間以上前には新横浜駅に着いていました。駅構内はもう大変な人。おそらく全国、いな世界中から来ているのではないかという気がします。スタジアムの前でのんびり写真など撮っていては申し訳ないという思いすら抱きました。遠くからわざわざやってきている南アのサポーターならともかく、私たちなど、こんな試合が日本で観られるだけで大満足、どちらが勝ってもいいやくらいにしか思っていないのですから。

 

ニュージーランドのラグビーといえば、もう「ハカ」です。「ハカ」とはもともと、先住民であるマオリ族の男性が、戦いの前におこなう踊り、手や腕を叩き足を踏み鳴らすなどしながら、自分たちの力を誇示するとともに、相手を威嚇するためのものでした。ラグビーでは1905年、ニュージーランドチームがイギリスに遠征したとき、スコットランド戦とウエールズ戦の前に披露したのが始まりとされています。以来、オールブラックスがテストマッチ(国際試合)を戦うときはかならず、キックオフの前に相手チームにハカを披露する習慣になっています。

 

写真では限界があるので、Youtubeでどうぞ。
https://twitter.com/i/status/1175346576753143808

19時45分過ぎキックオフ。世界ランクがほぼ最高の両国ですから、一瞬たりとも気が抜けません。ちょっと(時間にして数秒)よそ見していると、その間に攻守も場所もすっかり入れ替わっているなどということもしばしば。それも、ボールを蹴り込んでとかではなく、持って運んで、敵のタックルをくぐり抜けたりかわしたりしての結果です。

ラグビーの面白さも、そうした部分にあります。球技であると同時に格闘技でもあるのです。見ていて体に力が入ってしまうのはそのせいでしょう。今日の試合でも、身長2メートル・体重100キロという男どうしが走りながらぶつかり合う場面がありました。私たちの席が前から5列目だったのでそれを目【ま】の当たりにしました。肉と骨とが同時に音を立てるとでもいうのでしょうか。

そうしたシーンが前後半合わせて80分続くのですから、やるほうはもちろん見るほうも疲れるのは致し方ありません。それでも、今日の試合は日本がからんでいなかったので、まだいいほう。とりあえず、これほどレベルの高いゲームを見せてもらえる喜びと感謝でいっぱいです。

その繰り返しの上に、相手から一つでも多くの「トライ」を奪い取るのがラグビーです。トライとは、ボールを相手のゴールライン(ポールが立つライン)を越えた先で、ほんの一瞬でもかまわないので、地面につける(グラウンディング)こと。ただし、地面とボールとの間に1センチでも隙間が空いていたら「トライ」になりません。相手ゴールラインの上で敵味方が壮烈にもみ合うのは、なんとかラインの向こうにグラウンディングするか、それを阻止するか、ぎりぎりの攻防が展開されるからです。球技といっても、私たちの目に見えるのは格闘技なのです。

最後にグラウンディングするのは1人ですが、そこに至るまでにどれほどの選手が関わっているか。緒戦のロシア戦で3本のトライを決めた松島幸太朗選手。試合終了後のインタビューでも、「皆でつないで取れたので、ワンチームでできた」とコメントしていましたが、そうしたことが背景にあります。団体競技はスター選手が一人だけいても勝てないと言われますが、ラグビーはその度合いが圧倒的に高いと言えるでしょう。

さて、試合はオールブラックスが力を発揮し、23対13で南アをくだしました。Player of the Match(いうならば最高殊勲選手)には、オールブラックスの、この日15番(フルバック)を務めたボーデン・バレットが選ばれました。上の写真で、ボールを持って走っている選手です。