外はチョー寒くても、人々の心は温かい

2019年3月29日
最後の寄港地キルケネスに到着したのは朝9時。ここまで走った距離は2465km。青森から石垣島までの距離とほぼ同じです。今日は昨日以上の天気で、空は真っ青、雲ひとつない快晴です。ロシアと国境を接するこの町は、一定の範囲内なら両国民がビザなしで行き来できるそうで、お互い、安いものを求めてキルケネスに行ったり、隣のムルマンスクからロシア人がやってきたりするとのこと。シンガポールとマレーシアの国民が行き来するジョホールバルのような感じでしょうか。

空港から国内線で首都オスロまでは1時間30分。最初は真っ白だった地上の景色が、南へ降りるにつれどんどん緑色と茶色とグレーのまだらに変わっていきます。オスロの空港からは途中、車窓観光をしながらホテルまで。最初は「おやっ」と思った程度でしたが、部屋に入り、窓から町を見下ろすと、5年間に来たときに泊まったホテルかも……と。

荷ほどきを済ませホテルの近くを歩くと、家人は記憶がどんどん蘇ってきたようで、「あのATMでお金を引き出そうとしたらできなかったのよ」とか「その店で買ったミネラルウォーターが1本500円もしてびっくりしたでしょ」などと言います。それでようやく、私も思い出すという始末で、記憶力が落っこちているのにガックリしました。

夕食は素晴らしい店でいただきました。最後なので旅行会社もいいところを用意したくれたようです。市庁舎前広場の最南部、湾に面したエリアに、小さな船が行き来する桟橋が。「Aker Brygge」という、えらくおしゃれなショッピングモールの周りに、ガラスをいっぱいに使った建物がいくつも並んでいます。その一角にある「Lofoten」というレストランでしたが、シーフードもおいしく、ワインもGOOD! 全員お腹いっぱい大満足で食べ終えました。

店の名前にもなっているロフォーテン(諸島)は、明るい時間帯に航行しなかったので、いちばん美しい景色は見れずじまいでしたが、ツアーに参加していた方で、それをとても悔しがっている方もいたほどですから、よほどのものなのでしょう。しかし、それを差し引いたとしても、今回経験した6泊7日のクルーズは、私自身のクルーズに対するイメージを大きく変えたと言えます。

それは、大きな海を走っていても、船の左右どちらか一方にでも陸地が見えると、私たちを飽きさせないということです。当たり前といえば当たり前ですが、フィヨルドの場合はその変化が大きく、少しも油断できないところがあります。ボーッとしているとまったく景色が変わっており、新しい楽しみを発見できるのです。夏も冬も、これほど変化に富んだフィヨルドという大自然を満喫できるノルウェーをうらやましく思いました。外はチョー寒いですが、温厚な笑顔を見せてくれるかの国の人たちの心根には、そうしたことに由来するやさしさが強く息づいているような気がします。