初めての能登──道路の素晴らしさは秀逸

2018年7月9日
能登は正直、初めてです。これほど有名な観光地であるにもかかわらず、不思議といえば不思議なのですが、これまで金沢・富山までは行っても、なぜか足を延ばす機会がありませんでした。しかし今回は、週末に福井県坂井市で開催される「北前船寄港地フォーラム in 三國湊」に参加するので、そのついでにということでスケジュールを組み、行ってみることにしました。

金沢までは北陸新幹線「かがやき」。大宮から乗ると、ひと眠りする間もなく到着です。駅から5、6分歩いたところにある営業所でレンタカーを借り、五木寛之の小説のタイトルで有名な「内灘【うちなだ】海岸」を左に見ながら北上します。この道が予想以上に素晴らしく、しかも高速なのに無料!おかげで、ランチを予定していた回転寿司店(羽咋【はくい】郡志賀【しか】町・西海漁港)には、あっという間に到着。平日で空いてはいたのですが、さすが海産物の本場とあってことのほかおいしく、値段もリーズナブルでした。

寿司のあとはまた海岸に戻り、福浦【ふくら】へ。けっこうきつい坂を下りていった海っぷちの桟橋から能登金剛遊覧船に乗り、切り立った絶壁が広がる景色を楽しみます。小高い丘の上に、1608年、この地の船持ち・日野長兵衛が築いたという「旧福浦灯台」が小さく見えました。北前船もその明かりを頼りにしながら走ったのでしょう。

 

福浦をあとにし、そこから30分ほど走ると七尾市に入ります。すると、「花嫁のれん館」という看板があり、当初の予定にはなかったのですが、ちょっと立ち寄ることにしました。「花嫁のれん」といってもピンと来ませんが、幕末から明治時代にかけてのころ、能登・加賀・越中で始まった婚礼の風習の一つだそうで、婚礼の日、花嫁が嫁ぎ先の仏間に掛けられたのれんをくぐることをいいます。どの家もここぞとばかりにお金をかけたようで、多くは絹で加賀友禅の手法が用いられているのだとか。しかし、人の目に触れるのはそのときだけで、あとは出番がないため、そのままタンスの肥やしになってしまっていたとのこと。

それに目を着けた、七尾の一本杉通りのおかみさんたちが、2004年のゴールデンウィーク期間中に「花嫁のれん展」を開催したところ、これが大ウケ。以来毎年開催していましたが、一般の人も常時見られるようにと、「花嫁のれん館」が2016年春に開館、常設展示室には明治から平成までの花嫁のれんが展示されています。高価で、しかも大ぶり、芸術性にも優れたのれんを間近に見ることができるユニークな博物館と言えるでしょう。

一本杉通りは七尾でいちばんの観光スポット。といっても、平日なので人通りはほとんどありません。ひと休みしようと入ったカフェのママから、この地で毎年ゴールデンウイークにおこなわれる「青柏【せいはく】祭」の話を聞き、一度見てみたいなと思いました。とりあえず写真を見せてくださったのですが、「でか山」と呼ばれる、人の3倍ほどはありそうな巨大な山車(全部で3台)を曳くスタイルのお祭りのようです。狭い路地を、京都の祇園祭と同じように「辻回し」という技を駆使して回っていく様はたいそうな迫力でしょう。山車の形もすこし変わっており、末広形とでもいうのでしょうか、北前船を模したものといわれているのだとか。総重量はなんと20トンもあり、山車としては日本最大級、体積・重量では日本一だそうです。ユネスコ世界遺産の指定も受けたといいますから、これから先、多くの人が見に来るのではないでしょうか。

城下町の面影が残っているのはこの一本杉通りとその周囲の狭いエリアだけですが、どこかおっとりした雰囲気を残しています。そのお城を見ようと山に登ると、工事中で通行が制限されていたこともあり、予想外に時間がかかってしまいました。さっと見てから、輪島へと急ぎます。

最大の観光スポット「朝市」が開かれるエリアのホテルは取れなかったので、そこから歩いて10分ほどのところにあるホテルです。まわりには何もないので、夕食は海のほうに向かって散策がてら歩いていきました。ちょうど日没直後の暮れなずむころあいだったせいか、昔ながらの家が立ち並ぶ通りはなんとも趣きがあり、けっこう楽しめます。目星をつけていたシーフード料理の店が満席だったので、仕方なく地元の人しか訪れていなさそうな鉄板焼きの店へ。まあ、可もなく不可もなしでしたね。