ロシア語のオペラに新鮮な感動

2018年6月12日
オペラなどほとんど観る機会のない私が、自身の関わっているNPO法人のツテで、「2018ロシア年&ロシア文化フェスティバル」のオープニング公演にお招きいただきました。演目はチャイコフスキーの歌劇『イオランタ』(演奏会形式・日本語字幕付)。演奏はロシア・ナショナル管弦楽団で、指揮は同楽団の創設者であり音楽監督でもあるミハイル・プレトニョフ。1988年、当時のゴルバチョフ大統領に招かれ、ワシントンで開催されたサミットでも演奏したといいますから、期待大です。

舞台は15世紀の南フランス。道に迷ったロベルト公爵とヴォーデモン伯爵は、その一帯を治めるルネ王の城に迷い込んでしまいました。ルネ王には、生まれつき盲目で、そのことを知らされぬまま育った美しい王女イオランタがいます。ヴォーデモンはそこで偶然出会ったイオランタにひと目惚れ。別れ際にヴォーテモンが、「記念に赤いバラをください」と言うと、イオランタは白いバラを手折って差し出しました。「赤ってなんのこと?」と口にするイオランタ。彼女が盲目であると知ったヴォーデモンは、イオランタに明るい光の世界を見せてあげたいとの切なる願いを抱きます。果たしてイオランタは光を見ることができるでしょうか……。

そんなストーリーなのですが、普通のオペラと違い、演奏会スタイルなので、歌い手は皆、ほとんど動きません。しかも、なじみのないロシア語ですから、頼りになるのは、左右に設けられた日本語字幕を映し出す縦長の画面だけ。ところが、たかだか30字ほどの翻訳文が実に的確で、わかりやすいのです。訳したのは一柳富美子という方ですが、これには感心しました。これまで50作品以上の大曲を翻訳しているベテランだそうですから、それもむべなるかなでしょう。以前、ニュルンベルクの国立劇場で『椿姫』を見ましたが、このときは英語の字幕だったので、えらく難儀したのを思い出したりしました。

王女イオランタ、ルネ王、ヴォーデモン伯爵はロシア人の歌手でしたが、3人とも迫力満点。私が素晴らしいと思ったのは、ロベルト公爵を演じたバリトンの大西宇宙【たかおき】です。まだ32歳という若さですが、武蔵野音楽大学からジュリアード音楽大学院を修了。『エフゲニー・オネーギン』『フィガロの結婚』『マタイ受難曲』など多くの作品に出て好評を得ている歌い手のようです。脇を固めていた二期会のメンバーも美しい声を響かせてくれました。

通常、オペラというと3時間以上はかかります。しかしこの作品は1時間半ほどで、私のような初心者にはほどよい長さ。こうした演奏会形式でオペラを楽しむ機会はそうそうないでしょうが、本当にラッキーでした。