東京・椎名町で見つけた“お寺カフェ”

2018年5月16日
お寺や教会の副業といえば昔から幼稚園と相場は決まっていたような気がしますが、最近はそうでもないようです。私が住む私鉄駅の隣駅(椎名町)の真ん前にある「金剛院」というお寺は、門の脇にカフェを作りました。名前は「なゆた」。「なゆた(那由他)」とは、仏典に出てくる数字の単位(ゼロが72個)で、要はとんでもなく多い数のこと。

カフェなので、ドリンク類のほかに「お寺ごはん」というネーミングのランチも提供しています。内容は「精進料理」とまでは行かないものの、「薬膳料理」に近いもの。ライスも、普通の精白米と玄米ご飯の2種類から選べます。

 

このカフェの魅力はそのロケーション。お寺のほぼ入口横にあり、床から天井まで窓が大きく取られています。前には、こぎれいに整えられた庭園が広がっており、奥のほうに本堂が見えます。さほど広くはありませんが、食前食後に園内を歩いてみるのもいいですし、食べながら飲みながら四季の花々や木々を愛でるのもよし。テーブルや椅子も天然木の風合いで、すわっただけで落ち着いた気分になれます。私が行ったのは3日前の日曜日でしたが、ちょうど正午過ぎだったこともあり、ほぼ満席。今月開店したばかりだというのに、近頃の情報の早さはすごいですね。

そういえば、都心の神谷町には、僧侶がウエイターをし、ときには悩み相談にも応じてくれるお寺があることを思い出しました。いな、それよりもっと前から四谷3丁目には「坊主バー」というバーがありましたね。僧侶がバーテンをしているというだけで、メニューとかは普通のバーと一緒。違うのは、店の奥に仏像が安置してあり、お香が焚かれていることくらい。できた当時は話題になり、私も一度行った記憶があります。ただ、その後すっかりウワサを聞かなくなったので、とっくの昔につぶれたのかと思っていましたが、いまでも健在のようです。

バーはともかく、“お寺(または神社)カフェ”というのはけっこう全国あちこちにあるようで、
先月訪れた香川県・金刀比羅宮参道の脇にある「神椿」も、“神社カフェ”と言えなくもありません。私は階段を歩いて上るのを避けるために利用しただけですが、そうした不埒な理由でなく入っている人もいそうです。

ところが今朝、たまたま見たテレビ番組で紹介されていたロンドンの「教会カフェ」にはたまげました。シティ(金融街)にある「聖メアリー・オルダーメリー教会」がそれで、350年ほど前の創建だといいます。しかも、ここは建物の一部とか敷地の一角というレベルではなく、教会がそっくりそのままカフェになっているのです。聖堂(お寺でいうなら本堂)内には信者がすわるベンチのような椅子が何列も並んでおり、そのベンチの間に小さなテーブルが置かれています。また、聖堂の扉を開けてすぐのところにあるけっこう広いスペースにもいくつかテーブルが(ネットにアップされている写真を転載しておきます)。

 

 

メニューは食べ物がスープとパン、あとはコーヒーなどの飲み物だけのようですが、持ち込み自由なので、近くの金融機関に勤める人たちも自由に出入りしている様子。教会側としては、訪れることのない人にも教会に親しみを持ってもらいたいというのが狙いだそうです。カフェの売り上げは修繕費や地域のボランティア活動の一助に回されています。今度ロンドンを訪れたとき、ぜひ足を運んでみたいと思いました。

ちなみに、「金剛院」の場合、カフェの入っている建物の2階に集会所のようなスペースも併設されているらしく、そこではヨガ教室やがん患者の心のケア講座など、さまざまな催しがおこなわれているようです。社会における宗教施設の存在意義を考えさせられました。