不親切もここまで来ると……

2018年2月9日
DSC_02354泊したパドヴァも今日で最後。ミラノ行きの列車が出発する午後1時半ごろまで数時間フリーだったので、駅からトラムで10分ほど行ったところにある公園「プラート・デッラ・ヴァッレ」に行ってみました。この公園がなんともユニークで、ローマで観た「スタディオ・オリンピコ」のように、楕円形の敷地の外周を80体ほどの大理石像が囲んでいるのです。公園全体は人口の川(水路)に囲まれ、中央には小さな噴水が。それを中心に、上下左右対称に4つの部分に仕切られています。公園の外側を取り囲む広場のようなところには野菜や果物を売るテント張りの店が並んでいました。すぐ近くに、世界遺産にも指定されている世界最古(1545年)の植物園「オルト・ボタニコ」もあるので観たかったのですが、冬場の植物園はキホン冴えないのでパス。

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DSC_0249公園からトラムに乗り、「市庁舎」などが建つ町の中心街に。ここもまた二つの大きな広場(「エルベ広場」と「シニョーリ広場」)があり、テントがびっしり並んでいます。屋外市場ですね。「エルベ広場」に面する「ラジョーネ宮(サローネ)」という建物の1階部分には肉屋や魚屋やカフェが店を構えており、市場の延長といった感じです。

 

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さらに、広場から続く商店街には衣料品やスポーツ用品、電気屋などが。その一角にあった洋服屋のショーウインドウに、家人が欲しがっていたブラウスが陳列されているのを発見し、バースデープレゼント第1弾として購入しました。何せ、日本の値段のほぼ半額ですから! 思いがけないプレゼントに家人が喜んだのは言うまでもありません。

トラムに乗って引き返し、ホテルで預けておいたスーツケースを受け取って駅に向かいました。案の定、出発時間が遅れていましたが、ホームで待つことに。長距離列車とは思えないようなボロボロの列車です。時間がトリノ行きの特急とほぼ同じだったので、あわや乗り込んでしまうところでしたが、1本前の各駅列車が遅れていたよう。乗る直前に気がついて事なきを得ましたが、もし間違えて乗り込んでいたら大変です。夕方、ミラノでアポイントメントがあったからです。

長い編成の列車ですし、指定席なので、ホームのどのあたりで待っていればいいのか駅員に聞いても、「知らない」。というか、そうしたことをあまり気にもしていない様子です。日本なら考えられないことですが、ここはイタリア。そのあたりは鷹揚に構えているのでしょうね。

それでもカンを働かせて、ミラノ寄りの位置で待っていたらほぼ正解。今度は難なく乗車できました。しかも時刻どおりの到着ですから、胸をなでおろしました。ところがボローニャ、ヴェローナと停まるたびに少しずつ遅れ始め、ミラノに近づいた頃には10分遅れ。そして、市内に入ってからはノロノロ運転が続き、結局30分遅れで到着。

スーツケースはなんとかホテルに突っ込んだものの、このままでは約束の時間に間に合いそうにありません。タクシーの中から電話を入れ、遅れたことを謝罪しているうちに、「ドゥオーモ」の近くにある「アンブロジアーナ図書館&絵画館」に着きました。お会いする相手はその館長アルベルト・ロッカさん。その方をご存じの方から出発前に、「ぜひ会ってきてほしい」とお願いされていたのです。

「絵画館」のほうは、2年前にミラノを訪れたとき、建物のユニークさに魅かれて中に入り、見学したことがあります。ただ、それは「絵画館」のほうで、「図書館」はもちろん初めて。館長が笑顔で入口にあらわれ、私たちを「図書館」に案内してくださいました。

その前に館長が執務している部屋に通してくださり、コートやバッグを置かせていただいたのですが、館長の机の上に、漢字の練習に使っているノートが置かれていました。練習していたのは「劇」という文字のようです。「難しい字ですね」と私が言うと、「難しい漢字が好きなんです」と。「たしかに、漢字は造形としてとらえると面白いですからね」という私の言葉に同意しておられました。

さて、ここは普通の図書館とはまったく違い、収蔵されているのは古書、それもほとんどが「手稿(手書きの文章)」です。一番有名なのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティコ手稿」なるもので、これはダ・ヴィンチ直筆のデッサンやメモを集めて綴じたものだそうです。それがここには1119枚も収められているとのこと。残念ながらそちらは見ることができませんでしたが、次回訪れたときのお楽しみとしましょう。

手稿はどちらかというとメモ書きのようなものですが、なかには書籍もあります。それも、数百年前のものは当たり前というお話でした。それだけでも驚いている私たちに、館長は1000年前、1200年前、1400年前と、チョー貴重な書籍(それも現物!)を取り出してきては次々と見せてくださいます。手で直接触っていいものなのか不安でしたが、OKとのことで、ページを繰らせていただきました。

IMG_1706圧巻は1500年前に書かれたヘブライ語の聖書。中に挿絵も描かれているのですが、それがまた「挿絵」というには恐れ多いものばかり。金箔が貼られていたりラピスラズリから作ったインクというか顔料が塗られていたりで、この世のものとは思えない美しい色彩です。また、「手書き」だというのに、どの文字もまるで印刷されたかのように、同じ大きさ、同じ書体で、これには驚きました。

図書のほかにも、イギリスの詩人バイロンが400年前にここで学んでいたときに使ったデスクとか、とんでもなく貴重な品がさりげなく置かれています。その前に座らせていただき、「デスクについている垢でも煎じて飲みたい」とまじめに思ったりしました。閉館時間の6時ぎりぎりまで私たちに貴重な所蔵品の数々を見せていただいただけでなく、帰りがけには記念撮影にも応じてくださった館長さん、本当にありがとうございました!

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