高校時代からのあこがれ「6ネーションズ」を観戦

2018年2月4日
「6(シックス)ネーションズ」──。ラグビーファンなら知らない人はいない6カ国対抗戦で、毎年2・3月に、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリアが総当たりで対戦し、順位を競います。北半球の強豪国がほぼ毎週テストマッチを戦うのですから、日本のファンにしてみれば、ある意味垂涎の的と言っていいでしょう。私もラグビー部にいた高校時代から(当時はまだ、イタリアを除いた「5ネーションズ」でした)知ってはいました。でも、何せ50年近く前のことですから、観てみようなどとは考えもつきませんでした。それがなんと、今日、現実になったのです!

2007年の「ラグビーW杯(フランスとイングランドで開催)」を観にいったとき、久しぶりに「そうだ、いつかは『6ネーションズ』にも行ってみよう」という思いを抱き始めました。といっても、遠い日本からそれだけを観に行くのは、非効率というか、経済的負担が重すぎます。そもそも、試合のチケットを手に入れるのも大変なようで、「W杯」並みのプレミアがつくことも珍しくないとのこと。

そんなことで半ばあきらめていたのですが、これもまた以前から観たいと思っていたサンモリッツの「氷上競馬」と「6ネーションズ」の試合が、すぐ隣の国で1週間のうちに観られることに気がつきました。それが去年の8月。さっそくスケジュールをチェックしてみると、2月4日に「6ネーションズ」あの「イングランドvsイタリア戦」がローマで、「氷上競馬」が2月11日におこなわれることがわかりました。これなら、うまくくっつけられそうです。その間を利用して、これも長い間行きたくて行けずにいたヴェネツィアを訪れてみようと。ちょうどカーニバルの時期ですし、そちらの盛り上がりも期待でき、一石二鳥、いな三鳥なのではないかと。

かくして、去年の9月、まずは「氷上競馬」のスタンド席のチケットを予約しました。冬になると凍る湖の端に特設するのだから、そうそう枚数もなかろうという読みでした。続いて「イタリアvsイングランド戦」のチケットも押さえました。ただ、ラグビーのほうは、悪くはないものの、値段と比べると、正直「うーん」と言わざるを得ないレベルの席です。

IMG_3201午前中は、ローマでまだ行ったことのない「カブール広場」から「ポポロ広場」のあたりを歩いてみました。人気の観光スポットだけに、大変な数の人でにぎわっています。そのほとんどが、いかにもすぐ近くからやってきたといった雰囲気。「6ネーションズ」が開催されるからでしょう、イギリス人の姿が目立ちました。今週はイタリア、翌々週はアイルランド……といった感じでファンは観て回るのでしょうか。

 

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IMG_3212近くのナポリ風ピザの店で昼食を摂り、スタジアムに向かいました。ポポロ広場のすぐ北にあるフラミニオという停留所からトラムで終点まで行き、試合がおこなわれる「スタディオ・オリンピコ」までは20分ほど歩きます。場所はローマ市街でも北のほう、テヴェレ川沿いにあるモンテ・リオの丘のふもと。サッカーのASローマとSSラツィオのホームグラウンドでもあります。この一帯は「フォロ・イタリコ(Foro Italico)」と呼ばれるスポーツ・コンプレックス=スポーツ施設が集中するエリアで、イタリア・オリンピック委員会(CONI)の本部も見えました。

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不思議に思ったのは、正面広場に「MVSSOLINI」という文字が彫られたオベリスクがあったり、「DVCE(=ドゥーチェ、ムッソリーニの愛称)」の文字が埋め込まれたモザイクが残っていること。もともとここはムッソリーニが作らせた複合スポーツ施設で、当時は「フォロ・ムッソリーニ(Foro Mussolini)」と呼ばれていたそうです。

いまさら言うまでもなく、ムッソリーニは第2次世界大戦を引き起こしたドイツのヒトラーと手を組んでいた独裁政治家。ドイツのナチス、イタリアのファシストといえば、世界を破壊に導いた張本人として、ドイツでは徹底的に排斥されています。「ヒトラー」の名前を口にするのももちろんが、右手を上に掲げる姿勢すら問題視されるほど、それは徹底しているとも。しかし、ここイタリアではそれほどでもないのでしょうか。たしかに、ユダヤ人虐殺を命じたヒトラーに比べれば、ムッソリーニのほうが“悪のレベル”は数段低いかもしれませんが……。

「スタディオ・オリンピコ」のすぐ隣にサブグラウンドがあり、その外周にはスポーツ選手の大理石像が80体ほどでしょうか、均等な間隔で立っています。どれをとっても古代ローマ時代を思わせる感じの姿格好をしており、それだけで圧倒されてしまいました。

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メインスタジアムにはキックオフの1時間以上前に入りましたが、客の姿はほとんど見当たりません。しかし、時間が経つとともにどんどん増えてきて、最後は7万数千人収容のスタンドの8割以上が埋まっていました。半分以上はイングランドからやってきたファンのように見えました。試合中、歓声が沸くのは、イングランドが攻め入ったとき、トライを決めたときがほとんどで、イタリアのファンはあまり目立たないのです。

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キックオフが4時と早い時間だったので試合が終わっても、帰りを急ぐ必要はありません。それでも、トラムの停留所まで歩いて30分以上はかかりましたし、そこで到着を待つこと30分以上。本当なら運賃を払わなければならないはずなのに、なぜかタダ。そもそも運賃を払う人など一人もいません。当局も最初からあきらめているのか、それともこの日のこの時間帯に限っては無料にしているのか、よくわからないのですが、私たちもそれにならいました。

以前、オーストラリアのシドニーでスーパーラグビーの試合を観戦したときも、スタジアムから市内中心部に戻るバスはタダでした。そういえば、昨年8月、ロンドンでの世界陸上も、行きはお金を支払いましたが、帰りは無料。こうした大きなスポーツイベントについては、最初から帰りの運賃は取らないという取り決めでもあるのかもしれません。日本も見習ってほしいなぁと思うのですが、どうなのでしょう。

ポポロ広場まで戻った頃には7時半をまわっており、夕食を済ませてからホテルに戻ることにしました。といって、どこかアテがあるわけでもありません。前日の夜行こうかなと思っていた日本料理店のことを思い出し、行ってみることに。ローマでは老舗だとかで、オーナーも厨房も日本人という触れ込みです。しかし、実際に食べてみると「ホント?」と思いたくなるような味で、残念至極。

ローマは今日でおしまい。明日はヴェネツィア近くの町パドヴァまで移動です。