山口から津和野へ

2018年4月11日
午前中は山口市内の歴史スポットを何カ所か訪れました。スタートは「香山【こうざん】公園」。その一角にある「瑠璃光【るりこう】寺五重塔」は国宝で❝日本三大五重塔❞の一つだそうで、1422年の創建といいますから、築600年! とても味わいのある建物です。本堂のほうはさほどでもありませんでしたが、隣接する毛利家の菩提寺「洞春寺〔とうしゅんじ〕観音堂」に向かう途中にある「沈流亭」は薩長連合の密議がおこなわれた建物とかで、2階は当時のままだそうです。山口県は明治維新と深く関わる地だけに、このテのスポットには事欠きません。

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DSC05216次に訪れたのが、山口県庁に隣接してある「旧山口藩庁門」、大正建築の粋を集めたという「山口県旧県会議事堂(国指定の重要文化財)」とそのすぐ隣にある「旧県庁舎」。議事堂の議場に入り、議長席に座ったり演壇に立ったりして遊びました。その時代の県会議員はさぞかし偉かったのでしょうね。旧県庁舎の中にそのまま残されている知事室を見ると、それよりさらに偉かったのが県知事だというのがよくわかります。いまもその名残は多くの県で残っているようですが。

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そのあと「龍福寺本堂」「八坂神社本殿」(どちらも重要文化財)を訪れ、最後は「山口ザビエル記念聖堂」。もともとの建物は火事で焼失してしまったため、新しく建て替えられたのですが、これがめっぽうユニークな建物で、中もいま風というか、シンプルがコンセプトの斬新な設計です。新しい時代のキリスト教会の代表作というか、昔観たフランス北部の町ルーアンで観た「聖ジャンヌ・ダルク教会」を思い出しました。あっさりした中にも威厳を感じさせるステンドグラスが印象的です。

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ただ、もっと印象に残ったのは、そのすぐ近くにあるベーカリー&カフェ「ザビエル・カンパーナ」。ベーカリーのほうはたいそうな人気で、お客であふれていましたし、カフェのほうもランチタイムはバイキングスタイルで営業しており、充実した内容。なんといっても「シニア料金(=2割引き)」があるのが気に入りましたね(笑)。

山口から次の目的地・津和野(島根県)に向かいます。車で1時間ですからあっという間でしたが、ここもまた閑散としていました。1970年代だったか、津和野が“アンノン族の聖地”としてもてはやされた時代は、人であふれていたのでしょうが、いまその面影はありません。ちなみに、「アンノン族」という言葉はいまでは死語のようで、「ファッション雑誌やガイドブックを片手に一人旅や少人数で旅行する若い女性」(wikipedia)を意味します。

もちろん、津和野の町自体は「小京都」と言われるだけあって、すばらしく魅力的です。江戸時代の最初から最後まで同じ殿様家が治めていたこともあり、なんとも言えない落ち着きがあります。「安野光雅美術館」など、さほど広くない中心エリアを4時間近く歩き通しで、足も疲れ、のども渇いたのでお茶でも飲もうかと、喫茶店とお土産屋を兼ねた店に入りました。

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兼業店といっても、どちらも本格的な造りです。時刻は4時半。ところが、テーブルに座ってメニューを見ていると、店員から「喫茶のほうはもう終わりです」と言われました。これには唖然茫然。私たちのすぐ後から入ってきた外国人のカップルも、愕然とした様子。それはそうでしょう。だって、まだ4時半! ですからね。「おもてなし」とか「ホスピタリティー」という言葉をあちこちで耳にするこの頃ですが、その片鱗すら感じさせない冷たい仕打ちとしか言いようがありません。

仕方なく予約していた旅館にチェックインすることにしましたが、ここもまた、「昔はよかったんだろうけど……」といった印象です。向かいにある老舗っぽい旅館もかなり前に廃業したのか荒れ果てていました。

今回の旅をプランニングしているとき、津和野の街中には「ホテル」が一つもないことを知りました。あるのは「旅館」と「ユースホステル」的な宿泊施設だけ。かの「アパホテル」もありません。うーんとも思ったのですが、翌日「石見【いわみ】銀山」に行くことを考えると、山口に戻るのも非効率です。ほかに選択肢がないので旅館を予約したのですが、いかにも欧米の人たちが好みそうな観光資源を抱えているのに、とてももったいない感じがします。ただ、この旅館、食事だけはハイレベルでした。