「幸せになるための道なんてない。道それ自体が幸せなんだ」

2018年3月16日
5パーセントの奇跡

この4日間で3本目の映画です。今日は『5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~』を観ました。

「幸せになるための道なんてない。道それ自体が幸せなんだ」。主人公サリヤ・カハヴァッテが「ブッダ(釈迦)の言葉」と紹介するこの台詞で映画は始まります。後味がいいというか、なんともさわやかな作品で、感動しました。ちょうど、ピョンチャンでパラリンピック冬季大会がおこなわれていることとも重なっていたのも影響しているかもしれません。そう、主人公は障碍者なのです。

 

 

映画は、ドイツで実際にあった話に基づいて作られたようです。サリヤはスリランカ人の父親とドイツ人の母親を持つハーフ。彼が自身の体験を、本に書いたのが10年ほど前で、釈迦の言葉を引き合いに出しているのは、敬虔な仏教徒だからです。

高校卒業の直前、網膜剥離で5%の視力しかなくなってしまったサリヤは、5つ星ホテルに勤めたいという夢を実現するため、視覚に障碍があることを隠し(=嘘をついて)、ミュンヘンの超一流ホテルの研修生に応募します。首尾よく採用されたところから、研修(インターン)期間を終え、その修了試験を受けるまでの顛末【てんまつ】を描いたもの。

同じ「嘘」が素材でも、3日前に観た『嘘八百』という日本映画とは比べものにならないくらい、脚本がよくできていました。私の好きな、”こうなってほしい映画”そのものといえます。撮影に使われていた超一流ホテルが、昨年秋ミュンヘンを訪れたとき、ガイドさんが教えてくれた「シュヴァイツァーホフ(Schweizerhof)」だったのも、作品に親しみを感じた理由の一つでしょう。

この映画の宣伝チラシにも「幸福とは、結果ではなく、夢を諦めずに苦しみながら進んだ人生そのもの」とありますが、それは冒頭の「ブッダの言葉」とみごとに重なりました。予告編がまだネットで見られるようですので、時間があったらチェックしてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=XA_bDKjOEVk

エンドロールのカットに、この実話の主であるサリヤ・カラヴァッテ本人が顔を見せているのに気づきました。彼はあるラジオ放送のインタビューで「人生のモットー」を問われ、これまた釈迦の言葉だとして “The only constant in the world is change.”と答えています。この映画のヒットによって、さらに大きな「変化」を経験することになるかもしれません。

 

IMG_3549それにしても、この作品を上映していた桜坂劇場は、那覇でも不思議なエリアの一角にあります。昭和40年代の匂いをまだ色濃く残しているこの界隈にも再開発の波が押し寄せており、つい2、3年前にはアメリカ系の高級ホテル「Hyatt Regency」が開業しましたし、こじゃれたフレンチレストランもちらほら。でも、桜坂劇場のすぐ近くにはその手がまだ及んでいません。

 

IMG_3550それがはっきり感じられるのが劇場の真ん前にある駐車場。いまどきの「100駐」ではありません。小屋のような建物があって、そこに「管理者不在の場合は 備付けの封筒に車両番号と駐車時間を記入し 封筒に500円を入れ(おりまげ)投入口に入れてください」と書かれた掲示があったりします。東京のような、殺伐とした都会では考えもつかないチョーのんびりした話で、このゆるさが沖縄の魅力なのですね。