ユニークな秋田美術館と藤田嗣治の巨大壁画

2017年9月29日
明日開催の「豪風と語る会」というイベントに出席するため、秋田にやってきました。会場は、秋田駅に隣接するホテル。私たちもそこに宿泊するのですが、すぐ近くに秋田県立美術館があります。そこでちょうど「特別展 レオナール・フジタとモデルたち」が開催されているのを家人から聞き、せっかくだからというので、観に行くことに。私自身、美術にさほど興味があるわけではありませんが、数日前NHKテレビで、その展覧会のことが紹介されていたのも引き金になりました。

藤田嗣治については、フランスで最も有名な日本人画家ということぐらいしか知りません。その藤田が、秋田の資産家・平野政吉の依頼で描いた「秋田の行事」という壁画が、この美術館に展示されているのです。1937年、平野家の米蔵で15日間、174時間で描き上げたこの壁画、制作当時は“世界最大”(高さ3・65m、幅20・5m)だったとのこと。吉永小百合がその前に立ち、「たった一枚の絵を見に行く。旅に出る理由は簡単でいいと思います」と語る、JR東日本のテレビCMを記憶している方もいるかもしれません。

秋田の行事

たしかに、わざわざ観に行くだけの価値はありました。私も家人も藤田のファンというわけではありませんが、その素晴らしさには息を呑みました。全体が5つに区切られており、その一つひとつに秋田の伝統行事が描かれています。藤田は秋田の出身でもなんでもありませんが、依頼した平野の郷土愛が乗り移ったかのような、藤田の温かな気持ちが込められているのがひしひしと感じられます。

美術館自体も素晴らしいものでした。平成25年9月にオープンしたばかりで、場所は、秋田駅のすぐ近くにある千秋公園(かつて秋田城があったところ)と広い道路をはさんだ向かい側。斬新なコンセプトで設計された建物は、世界的な建築家・安藤忠雄の設計です。

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IMG_19852階にカフェとミュージアムショップが併設されているのですが、カフェのイスに腰をおろすと、目の前に広がる千秋公園の木々や旧県立美術館の建物(これがまた味わい深い外観をしています!)が、1階の屋上に作られた池というか水槽というか、その水面にそっくり映っているのです。

 

 

天気の具合にもよるでしょうが、水と景色の絶妙なバランスに感動しました。立つと、視線の高さにもよりますが、イスにすわったときとは別の角度でそれを楽しむことができ、それはそれでまた興趣をそそります。極端な話、この光景を観に行くためにだけ美術館に入ってもいいといった感じです。今回は「豪風と語る会」の“ついで”にやってきたのですが、ここまで行くと、“ついでの極致”ではないかと思いました。

藤田は1968年に亡くなる数年前、フランス北東部の町ランスの地にある「ノートルダム大聖堂」(フランス3大聖堂の一つで世界遺産にも指定されている)で洗礼を受けたそうですが、こんどパリに行く機会があれば、その“ついで”にぜひ訪れてみたいと思いました。ルイ13世、14世、16世など歴代のフランス国王の戴冠式がおこなわれた由緒深いところです。また、藤田が、スポンサーの依頼で設計した「ノートルダム・ラ・ペ教会」というこじんまりした教会もあるといい、それもぜひ観てみたいと思います。